12 一つの再会
「……っ!」
目を開けると、つい最近も見たことがある景色。
学校に向かう電車の中。
ただ一つ、周りが止まってしまっていることを除けば。
「おいおいおい!!どうなってんだよ!?これは」
「え……?つづ、り?」
前言撤回。
周りが止まってしまっていることと。
すぐそばにいた綴が、僕やりょーこさんと同じく動けていることを除けば。
◇◆◇◆◇◆
「よし、まだ大丈夫みたいだ」
ドーム状に広がった青白い光。
その内側にある二つの光が、まだ離れていることを確認してから顔をあげる。
すると、その動きに合わせるように光はGHOSTに吸い込まれるようにして消えて行った。
「で、これは一体どうなってんだよ?」
それをすぐ隣で一緒に覗き込んでいた綴。
心なしか、目が輝いているようにも見える。
ああ、そういえば……。
「ちゃんと説明するよ。と言っても、僕も全部知ってるわけじゃないんだけど」
「ああ、頼む」
「まずは、このゴースト。これが理由なんだ」
「ゴーストって、このAI、かりんちゃんがか?」
きょとんとする綴とかりんさん。
うん、その気持ちは僕もすごくよくわかる。
「ゴーストは表向き、人の生活を手助けするために開発されたのは知ってるよね?」
「ああ。って表向き?」
表向き。
渡会さんはそう言っていたけれど、どっちが目的だったのかはもうわかりようがない、とはりょーこさん談。
まぁ、ともかく。
「すっげぇ!まるで漫画やアニメの世界じゃねーの!!」
「あーうん。そう言うとは思ってた」
綴が初めに目を輝かせていた理由がこれだ。
確かに戦って最後に残った人の願いが叶う、なんてなんともありがちな設定だ。
「で!で!?ルールはどうなってんだ?」
「えっと、確か……」
ルールとしては簡単にしかわかっていない。
そもそもそれ用のチュートリアルすらなかったらしい。
ある日突然始まったと言うわけだ。
それでも、少しずつ分かり始めている事がある。
まず初めにフィールドの指定。
これは閃光弾(渡会さん命名)を投げる事で指定できる。
着弾した場所を起点として、二人のゲーム参加者を巻き込むようにドーム状に光が広がる。
その内側が舞台となって、時間が止まったり、ゲーム終了まで僕らは出られなくなってしまう。
「で、前回はそのドームの隅にぶつかってしまったわけじゃの」
それはできれば忘れてほしい。
なによりあの時は、相手の場所を知る術もルールも、何一つわかっていなかったんだから。
と、そうだ。
「で、さっき見てたこれなんだけど……」
「おう。つっても大体想像はつくけどな」
「……やっぱり?」
すい、と手を動かしてさっき見ていた青白いドームをもう一度出現させる。
その中には、二つの赤い点がさっきとは少し違う場所にあった。
これこそが、このフィールド内だけで使用できる、いわば地図みたいなものだ。
ドームをフィールド全体とし、赤い点は僕ともう一人の場所を示している。
「はぁー、ゴーストにはホログラムが使われてるんだもんな。そりゃこれぐらいのことやってのけれるわな」
もちろん、これは補助的な道具らしく一歩でも足を動かしたり、顔の向きを変えたりするだけで消えてしまう。
あくまで、相手がどの辺にいるかを一瞬確認するためだけの道具みたいだ。
「で、これを使ったりしながら相手の場所を掴んで……」
「互いの技をぶつけ合ったりするわけだな?くぅー!ワクワクするなぁ!!」
グッと、握りこぶしを作る綴。
楽しそうな顔が、次の瞬間には消えて無くなった。
「あれ?じゃあ疑問なんだが……俺ってなんでここにいるんだ?」
と、ここでようやく僕が驚いた理由まで話が戻って来た。
けれどそれを口にするよりも早く。
「ったりー。ようやく見つけたわ」
またも聞いたことのある、そんな声が聞こえて来た。