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44話


まだ登校時間には早い時間帯にも関わらず教室には全員が揃っていた。そんな風景を見渡したレグルスは驚きと共にそのまま教室に足を踏み入れた。


だが、そもそもこの時間にレグルスが起きている事すら驚きの事実である。


「おはよーす!」

「早いな、ケイン」

「何たって今日だからな、特訓の成果を見せてやるぜ」


ケインのその言葉に周りの生徒たちも自信に満ちた表情で頷いていた。だが、そんな様子を見たレグルスは訝しげに呟いた。


「特訓……?」


どうやら彼はケイン達がローズ達から推薦された上級生達に特訓をつけてもらっていた事を忘れているみたいだ。


「ん?」


幸いにもその言葉はケインには聴こえていなかった。レグルスとしても死神との戦いもあった為か無理もないのだが


バンッ


「いてっ!」

「まったく相変わらず人の話を聞かないんだから」


レグルスの後ろからフルスイングした後の状態のアリスが呆れた声を出していた。叩かれたレグルスは何か恨み言の一つでも言ってやろうと頭をさすりながら振り返る。


「だからって叩くことないだろ?」

「ふん。叩けば治るはずよ」


そう言って腕を組むアリスだった。ラフィリアとの契約があったが、いつも通りのやりとりを繰り広げていた。


「だからってなー……」


不満そうな顔をしていたレグルスだった。だが、そんな中、アリスとレグルスのやり取りをニヤニヤ見ていたケインが話しかけた。


「それで、そっちの準備はいいのか?」


どうやら今回の戦いのキーになってくるアリス達の進捗が気になるようだ。


「ん? ああ、問題ないぞ」

「そうね、バッチリよ!」


レグルスはともかく、アリス達もしっかりとローズ達によって鍛えられている。自信満々に答えたアリスにケインも安堵した様子だ。


その様子を皮切りに他の生徒達も次々とアリスとレグルスの周りに集まってくる。それぞれがどんな特訓をしたのかなどである。


「遅れちゃった」

「みんな揃っていますね」


すると、舌をペロリと出したサーシャと笑みを浮かべるラフィリアも教室に入って来た。これで一年生クラスの全員が揃った形だ。


「遅いぞー」

「ごめんごめん。でもでも、お兄ちゃんが早いんだもーん」

「ああ、朝早くにアリスに叩き起こされてな」

「ふーん。出遅れちゃったなー」


レグルスの答えに口を尖らせるサーシャは横で澄ました表情のアリスをじとりと見つめた。既にラフィリアが先に抜けた為か二人の熾烈な争いさ始まっているのだ。


「な、なによ?」

「なーんにもないよー」

「ふふ」


当然ながら余裕綽々のラフィリアはそんな二人を見つめていた。その中心にいるレグルスに向けてクラスの生徒達は羨ましい表情をしている。


特にケインなどは尊敬の眼差しで『流石は師匠』と呟いていた。


パンパンッ


そんなやり取りをしていると、教室の入り口から手拍子が聞こえて来た。


「はーい、いよいよ今日ね」

「あっ、ローズさん!」


やって来たのはローズとミーシャ、そしてケイン達の特訓に付き合ってくれた上級生達である。ローズを先頭にミーシャ含めて4人ほどが続いて入ってきた。


ローズがちらりとレグルスに目をやるが、そのままアリス達の方へと向かっていった。すると、そのすぐ後ろから長身の青年が歩み寄ってきた。


「君がレグルス君かい?」

「そうです」


眼鏡をかけた優男風の青年はその答えに満足したのか右手を差し出した。それに答えるようにレグルスもまた握り返す。


「僕はシアンだ。生徒会の副会長をしているんだ。これからよろしく」

「よろしくお願いします」


軽く答えたレグルスだったが


「おい、レグルス。シアン先輩だぞ」


後ろから囁くようにケインが話しかけた。どうやらシアンは有名なようだが、レグルスは相変わらず知らない。


「何が?」

「はぁ、生徒会の副会長ってだけで察しろよな」

「そうですよ、学園でもトップクラスって事だよ」


呆れた様子のケインに続くようにコリンもまた会話に加わった。そもそも、生徒会長が実力トップが就く役職ということはシアンがこの学園で二位の位置にいるという事もわかりそうなものだが。


すると、突如としてシアンから鋭い気が漏れ出した。ケインとコリンは突如として現れた敵意に目を剥いた。


「なるほど、会長が気にいるのも納得できる」


そんな様子を興味深そうに見ていたシアンはそう呟いた。レグルスは何事も無かったように半目で立っていたのだ。


「すまない気を悪くしないでくれると嬉しい。それにしても会長に気に入られて大変だろう」

「はあ、まあ大変ですよ」

「そうなんだよ。あの人は急に変な事をするからね」

「まさしく」


シアンとレグルスは何故かローズの事で意気投合したのかお互いが目線を合わせて疲れた表情を作った。


立場ゆえに接せる機会が多いだろうシアンにレグルスは少しだけ同情する。


「なにかしら? 私がどうかしました?」


アリス達と談笑していたはずのローズが笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。その笑顔を見た二人は今の会話を聞かれていたとすぐに勘付き面倒そうな表情を作った。


しばらくじっと見ていたローズだったが、すぐに気を取り直して話し始める。


「シアンとレグルスは気が合いそうね。いよいよね」

「まぁ、やれるだけやりますよ」

「ふーん。やれるだけね……アリスさん達に聞いたけど今回は支援役かしら?」


そう尋ねたローズは以前に聞いていたアリス達の言葉を思い出していた。それは、レグルスの力を借りずに勝つという事である。


「ま、そんな所ですね」

「期待しているのよ。今年の一年生は才能に溢れているからカインツ達を倒して更正させてくれたら嬉しいわ」


そんな言葉を話しながら何故かレグルスの元へとどんどん近づいて行くローズ。その動きに警戒感を露わにレグルスは後ろへと下がっていく。


だが、突如としてローズはレグルスの腕を掴むと抱きかかえるように動かした。当然ながら柔らかな胸に包まれる腕にレグルスは僅かに動揺する。


「ちょっとレグルス。こんな時に何してるの?」

「お兄ちゃん?」


残念ながら乙女達の勘は鋭かった。バッチリと見られていたレグルスに向けられた冷たい声。


だが、何を思ったのか面白そうに笑うローズはさらに掴む力を強める。レグルスの腕に潰されて形を変える胸を見てアリスとサーシャは更に冷たさを増していく。


だが、ラフィリアだけはその光景を笑みを浮かべて見つめていた。


「ねぇ、レグルス?」

「お兄ちゃん?」


いつもよりも激しさを増す二人の怒り。そして、アリスの眉尻が釣り上がり爆発寸前のところでローズは手を離した。


ローズは歩み寄ると4人だけに聞こえるように囁いた。


「もしかして、ラフィリアさんとレグルス君に何かあったのかしら?」

「はい?」


突然の問いに疑問の声を上げるレグルス。アリスとサーシャも同様である。


「ふふ、どうでしょう」


何故かレグルスの横にピッタリと寄り添うように立ったラフィリアは自然な笑みを浮かべてそう答えた。


「やっぱりね。それで、何があったのかしら?」

「何もないですよ」

「ふーん……例えば契約した、とか?」

「「えっ!?」」


アリスとサーシャが思わず声をあげた事で確信したローズは面白そうに笑う。


「イテッ」


だが、表情とは裏腹にレグルスの腕を抓っていた。レグルスの上げた声に思わず自分の行動を見直したローズは慌てて手を離す。


「ま、まあいいわ。それよりも早く会場に行きましょう」


どこか慌てた様子のローズはそう言うとシアン達を引き連れて外へと出ていった。その際に顔を赤らめたローズの横顔があった。


自分でも分からない行動に戸惑いを覚えていたのだった。


「また強敵が現れたわ」

「はぁ〜。お兄ちゃんのばか」

「ふふ、楽しくなりそうですね」

「ラフィリア! その余裕そうな態度なんてすぐに出来なくするんだから!」

「そうだよ、すぐにだよ。もう何だったら今からだよ!」


あの契約があってから今まで以上に余裕そうなラフィリアの態度にアリスとサーシャがビシッと指を突きつけて宣言したのだった。


軽く受け流すラフィリアに二人は更にやいやいとはしゃいでいく。決闘が控えているのにいつも通りなこの四人を見守るクラスメイト達の視線は暖かいものであった。


「いつになりますか?」

「くっ、覚えてなさい!」

「そーだそーだ。私なんて義妹なんだよ!」


だんだんと幼稚な言い合いに変わっていく。


こうして一通りのやりとりが終わった事を見計らったレグルスはアリス達を見回した後に、暖かい視線を送ってきていたケインの方へと顔を向けた。


「ま、行くか」

「おう!」


二年生の貴族クラスと一年生の平民クラスの決闘がようやく始まろうとしていた。

かなり期間が空いてしまい申し訳ありません。。

決闘がようやく始まりますが、此方は長くならない予定です。

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