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魔導装甲アレン  作者: 秋月瑛
第1幕 黄砂に舞う羽根
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黄砂に舞う羽根「帝國の影(10)」

 瞼の上に光を感じ、頬に落ちる熱い雫を感じたアレンは、ゆっくりと目を開けた。

「わたし見ました……」

 そう言いながらセレンは大粒の涙を流して泣いていた。

「あっそ」

 相手が驚くほど素っ気ない返事をアレンはした。

 果たしてアレンは自分が〈蜃の夢〉に囚われたことを知っているのだろうか?

 きっと、知っている。だから、そんな返事をした。

 運転席にはトッシュがいた。その背中はなぜか暗く重い。顔は見なくて、どんな表情をしているか察しはつく。

 セレンが観たということは、残りの二人も観ていたに違いない。それでもアレンの態度は素っ気なかった。

「胸糞悪ぃ夢見ちまった……オエェ」

 わざとらしく嗚咽したアレンは状態を起し、ふと助手席にいたリリスに目をやった。

「あんたが俺のこと助けたんだろ?」

「そうじゃ。地中で眠っておった蜃を一瞬だけ叩き起こしてやった」

「ところで俺とあんた今日が初対面だよな?」

「はて、最近歳のせいか物忘れが激しくてのお」

「俺も昔のことはよく覚えてない」

 そこでアレンは口をつぐんだ。

 セレンはまだ泣いていた。でも、なにも言わなかった。なにも言えなかった。ただ、アレンのことを見ているだけだった。

 見られている方のアレンは、わざとらしくはにかんで見せて、

「俺のこと潤んだ目で見つめんなよ。抱きしめて押し倒したくなるだろぉ」

 なんて冗談で言ったのだが、セレンが急に抱きついてきて、さすがのアレンも眼を剥いて驚いた。

 セレンの手がアレンの背中に廻され、服をギュッと掴む。

 自分の胸で泣きじゃくる女に、アレンは途方に暮れた顔つきをしていた。その表情もわざとらしい。

 なにも言わずジープが走り出す。

 タイヤが巻き上げた砂埃の中で、セレンはずっと肩を上下に揺らし、鼻を啜っていた。

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