13
カオルとはそれきりだった。卒業するまで一言も口を利かなかった。アイツがN大の、なかでも一番偏差値の高い国際教養学科に合格したとは噂で聞いた。
俺は県内の別の私大に進学した。ユウヤも同じ大学だった。俺たちは二人揃ってまた野球部に入部した。そのうちに同じ学年の女子マネージャーに告られて付き合ったけれど、ソイツとは一年も続かずに別れた。それから三年の初めに同じ学科のマリと付き合うことになって、今まで続いている。
そうしてその知らせは唐突に俺の元に届いた。三月の真夜中のことだった。マリと飲んでいるところにユウヤから着信があった。一度は無視したけれど、何度も繰り返し着信があって俺よりマリが気にして電話に出るべきだと言った。俺は気が向かないまま、スマホの画面をスライドさせた。
電話越しのユウヤの声は珍しく慌てていた。息を切らして、動転している様子だった。そのただならぬ雰囲気に酔いが一気に冷めていった。
「カオルが死んだ」
一瞬にして世界から音が消えた。酔いが醒めたはずなのに反対に心臓は煩く騒ぐ。冷たい汗が額から噴き出した。背中を震えが走っていく。
「何言ってんだよ……」
「自殺したらしい」
頭がぐるぐると回って、足の下に地面があることが信じられなくなった。
何も聞こえいなかで、ユウヤのことばが何度も何度も反響した。脳みそが揺すられる。チカチカと点滅する視界の奥で、セーラー服姿の黒髪の少女が優しく笑っている。
リョウスケ。俺の名前を呼ぶアイツの声が聞こえる。
誰と付き合ってもカオルのことは忘れられないと思う。それどころか俺はいつかもっと大人になって、アイツの触れられない部分も受け止められるようになったら、そのときはもう一度、と密かに願っていた。
それももう永遠にない。
記憶の中のカオルが、髪を掻き上げる。




