第五話*
「すまんアレク!!許してくれ!!」
そういいながらアレキサンダーに向かって頭を下げるのは先程アレキサンダーにイタズラを仕掛けて、死にかけそうになった男である。
名前はジョシュア・コルネティア。
彼はこの国、コルネティア王国の"現王陛下"である。
ちなみに茉莉香が育った国はコルネティア王国からずっと東に進むと存在する、独特の文化を持ち、閉鎖的な国"蔡華国"である。
「次やったら・ ・ ・本気で殺す・ ・ ・ 。で、なんですか?わざわざここまでお偉い国王陛下様が来たんです。それなりのことがあるんでしょう?」
アレキサンダーがそう言うと今までずっと頭を下げ続けていたジョシュアが真剣な顔つきで頭を上げた。
その顔つきは全国民何千何万と言う人々の生活、命を預かる一人の国王のものであった。
「あぁ。一つめは馬鹿どもが動き出した。お前もよくわかっているだろうがマドレストとオルスレットを潰したい奴等が性懲りもなくまた動き出したことが報告された。今までは、お前と周りの奴等が狙われてきたが、お前ら鬼のように強いし容赦ないからな。心配はしてなかったんだが、今は茉莉香嬢がいる。魔力はお前と同等で、立派な魔術師にもなるだろう。だが、如何せん知識も経験も時間もない。敵に捕まったら即アウトだ。」
「 ・ ・ ・ えぇ。わかっています。俺がずっと守れれば良いと思うんですが、家の外に出ないからずっと拘束してしまうことになってしまいます。ですが、今まで部屋に閉じ込められて生きてきたんです。もっと自由にさせてあげたい。逃がすことは出来ないけれど、せめて今だけでも。」
今は寝ている将来自分の妻になるであろう少女を思っての言葉を紡ぐ。
「そうか。だったらコルネティア魔術学院に通え。勿論二人一緒にな。寮も部屋を隣にしてもらうよう手配する。お前の仕事は・・・・そうだなケインとアイリス辺りにでも任せておけ。」
ジョシュアはニヤリと笑いながら言う。
真剣な顔が台無しである。
しかしそんなジョシュアの台無し顔など目もくれずアレキサンダーはずっと思考の海に沈んでいた。
何を考えていたのか。
それは、ケインとアイリスは自分の従兄弟の夫婦であり、信頼もでき、とても優秀であるが、性格に難あり。
それにプラスしてまだ甘えたい盛りの3歳の可愛い子供がいる。
大量の次期総帥の仕事をすべて任せるには少々酷だろう。
「あいつらにも仕事がありますし、半分だけ任せましょう。どうせ授業を全課程終わらせている俺は暇でしょうから。」
「そうかわかった。じゃ俺からも学院長に言っておく。」
とここでジョシュアは口をつぐんだ。
そして暫くして重たい口を開いた。
「二つ目何だが・・・・"魔物"が出没するようになったらしい。」