第四話*
アレキサンダーが部屋から出ると、待っていましたと言わんばかりに、ニコニコと微笑んで立っている執事のじいやがいた。
ちなみにアレキサンダーとじいやは、アレキサンダーが生まれた時からずっとそばにいて、人間嫌いで定評のあるアレキサンダーもじいやのことは信頼している。
「じいや・・・・なんだ?」
「ふふふ・・・・姫様が起きられて安心なさったのですね?お顔がゆるんでいらっしゃいますよ。」
じいやがそう言うとアレキサンダーの顔がピキッと固まった。
(あぁ・・・・図星でしたか。)
アレキサンダーの顔を見てそう悟ったじいやは尚笑みを深めてアレキサンダーの怒りを誘っていた。
じいやはアレキサンダーの怒りが高まっていることは察していたが、長い付き合いの中でアレキサンダーが図星であることを突っ込まれて怒らないことは知っている。
怒りのオーラを出すことはあっても、手を出すことはない。
それに人間嫌いである主人が、ほぼ初対面である茉莉香に、多少なりとも気を許していることに安堵しているのだ。
「それはさておき・・・・旦那様、お客さまがお越しになっております。応接間へとお通ししておりますゆえおもてなしをなさりませ。侍女に姫様を見守らせて起きますのでご安心を。」
「はぁ・・・・わかった。じゃあアマリリスに見張らせておけ。彼女を専属の侍女にするつもりだから。」
心底面倒くさそうに言うとじいやの「かしこまりました」との返事を聞くと同時に客の待つ応接間へと歩き出した。
その後ろ姿はまるで魔王のように優雅で威厳があり、それはそれは恐ろしかったと言う。
アレキサンダーは応接間の前まで来ると、嫌な予感がして、扉にトラップや呪いなどの解除魔法をかけた。
そして品の良い落ち着いた扉をあけた。
ビショッベチャッ
場違いな音がなる。
説明すると、アレキサンダーの顔に汚れた濡れ雑巾が飛んできたのだ。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「おぉひっかかったな?アレク。魔法は解除したようだが・・・・物理的なものは・・・・って何でそんなに怒ってんだ!?!?やめろ!!」
アレキサンダーは顔についた汚れた濡れ雑巾をひっぺがしてすべての元凶である男に全力で投げた。
そしてそれでは飽きたらず、最も得意とする氷の魔法を駆使して固い氷を男めがけてビュンビュン飛ばし始めた。
氷の飛んでいくスピードは素晴らしく速い。
壁に当たったら穴が開くだろう。
だがしかしそこだけは抜かりなく、防御魔法、【結界】を張っているため、被害は"ゼロ"である。
こうして今日この日、ある一人の男の命が危機にさらされたのであった。