第三話*
「ここ・・・・・どこ・・・・?」
茉莉香が目を開けて初めて発した言葉はこの言葉だった。
まぁ、妥当な言葉だろう。
だって前まで見ていた汚い天井が真っ白な綺麗な天井に変わっているのだから。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
急に目覚めた茉莉香に今日も手を握って自身の魔力を送りながら声をかけていたアレキサンダーはなにも言えず動きが止まった。
そんなアレキサンダーだが、茉莉香が誰かに手を握られていることを認識しアレキサンダーのほうに顔を向けた瞬間、
「起きたのか。痛いところはあるか?気分はどうだ?」
と言った。
「や、別に・・・・痛いところもないし、気分も悪くはないですけど・・・貴方だれ?」
未だ握られた手をやんわりとほどきながら不審げな顔をして聞く茉莉香。
そんな茉莉香の問いにまずすべきことを思い出したアレキサンダーは茉莉香のそばから少し離れて近くにぽんっと置いてあった物"魔術具"を手に取った。
「俺はアレキサンダー・マドレスト。詳しいことは後で説明してやろう。・・・・小娘。少し起き上がれるか?」
「小娘ですけど・・・・はぁ・・・起き上がれますよ。」
茉莉香は小娘と呼ばれたことを複雑に思いながら先程までは寝ていたため傷まなかった体を少し傷みを我慢して上半身を起こした。
するとアレキサンダーが茉莉香の首にネックレスのような物をかけた。
「?なにこれ?」
茉莉香が首にかけられたものを不思議そうに眺めながら呟くとアレキサンダーからぶっきらぼうな答えが返ってきた。
「ネックレスの形を模した魔術具だ。今から小娘、お前のその傷をすべて直す。そのための治癒魔法を補助するものだ。まぁ、俺には必要ないものだが、失敗して、小娘に死なれても後味が悪いからな。ちゃんとつけとけよ。」
それを聞いた茉莉香は小娘小娘うるさいなーと思いながらも興味深げにさわっていた魔術具を触るのをやめた。
変なところを触って壊したら事だと思ったのだろう。
「じゃあ始めるぞ。小娘はそのままの体勢でいろ。少しも動くなとは言わないから大きく動いたりするなよ。」
「わかりました。」
茉莉香がそう言ったのを聞くとアレキサンダーは満足げにうなずいて、茉莉香に少し近づいた。
【傷を癒せ。】
アレキサンダーはそう言った。
けれど茉莉香には分からなかった。
何を言っているか。
混乱しているうちに魔術具が暖かくなってきた。
それと同時に怪我をしていたところがだんだんと暖かくなってくる。
暫くすると茉莉香の体からすべての身体的な傷が消えた。
元々の綺麗ですべすべな白い肌が表れた。
「凄い・・・・痛くなくなった・・・・。」
「そうかそれはよかった。」
アレキサンダーがホッと息をついて言った。
治癒魔法に成功させる自信があるといってもアレキサンダーの得意魔法は攻撃魔法と防御魔法。
やっぱり少し心配であったようだ。
「少し、寝ると良い。小娘は気付いてないだろうが小娘の魔力を多少なりとも使っている。疲れているだろうから少し、休むと良い。起きたら話をしよう。」
「 ・ ・ ・ ・ わかりました。私が起きたらちゃんと話してくださいね。」
不満げだったが茉莉香はそういうと軽くなった体をもう一度横に倒し目を閉じた。
茉莉香が安らかな寝息が聞こえ始めたことを確認するとアレキサンダーは
「よかった。」
と呟き、部屋から出ていった。