第二話*
3人ほどの大人、しかも男が大の字で余裕で寝転ぶことができるほどの寝台に、一人の小柄な少女が寝ている。
少女の名は茉莉香。
幼い頃から義父に暴力をふるわれて、生傷が絶えることはなかった。
現に今も、二の腕には切り傷、腹には赤黒い痣、手足にはおびただしいほどの切り傷、火傷、痣がある。
唯一綺麗なのはそのきれいに整った"顔"のみであった。
そして彼女は二日前にその義父から解放されたところである。
茉莉香自身その事は知らないが。
何故ならば保護された際に、気を失ってから今までずっとーうなされることはあってもー起きることは無かったからである。
茉莉香が起きない理由。
それは無意識に起きたくないと思っているからではないか、とそう魔術医(魔法草の知識を持ち、治癒魔法を駆使して、治療する医者のこと。)は言う。
その事を聞いた茉莉香を保護し、茉莉香の義父を捕らえた張本人が、(名はアレキサンダー・マドレスト)納得しなかった。
アレキサンダーにとって、茉莉香は重要な人物である以前に、大切な人の忘れ形見でもあるからだ。
そして、茉莉香の身体的な傷を癒すためには茉莉香の魔力を使う。
しかし、昏睡状態に陥っていると、自然と魔力の放出にロックがかかる。
これは寝てる間に魔力が放出されて魔力の枯渇で死なないようにするためだが、それのせいで難しい治癒魔法をかけることが出来ない。
だからアレキサンダーは茉莉香に起きて欲しいのだ。
それからはアレキサンダーは茉莉香の側で自身の魔力を送りつつ、声をかけ続けた。
ご飯やお風呂を忘れてしまうほどの熱心ぶりだった。
その甲斐あってか、茉莉香は保護されて一週間と二日後、目を覚ました。