第一話*
茉莉香の母であるユーリは、茉莉香が7歳の時に死んだ。茉莉香を庇っての交通事故だ。
それから孤独になってしまった茉莉香はある人に引き取られた。
優しそうな人だったが、茉莉香を部屋に閉じ込め、ほぼ外に出さず、殴り続ける。
お陰で体中赤黒い痣ばっかりだ。
茉莉香はずっと耐えた。
茉莉香はあのとき飛び出さなければ・・・・・そう思っていたこともあって、ずっと我慢し続けていた。
それが正しいと思っていたから。
こうして10年経った。
現在は茉莉香は17歳。
普通だったらもう上級学校年生だ。(上級学校とはおもに魔法を使える才能があるもののみが10歳から通うことができる学校のこと。)
と言っても学校に一年間しか通ったことのない茉莉香には今さら関係ない事ではあるのだが。
でも義父は極稀に茉莉香を外に出してくれる。
と言っても"庭に"だが。
それでもよかった。だって家から、部屋から一歩も出られないより少しでも出れた方がいいから。
ある日寝ていると突然騒がしくなった。
茉莉香はなんだろうと思っていると義父が飛び込んできた。
「お、とうさま?いかがなさいましたの・・・・?」
「こっちにこい!!はやく!!」
義父が切羽詰まった表情で叫ぶので恐怖で近づいていく。
ここで近づかなければ後で痛い思いをしなくて済んだのだろうがまぁ、恐怖が先立ってしまうのだから仕方がない。
義父が手を伸ばせば茉莉香に触れるところまで来ると義父は突然茉莉香を殴った。
茉莉香は当然身構えることを怠っていたから壁まで吹き飛ばされる。
その距離約二メートル。
茉莉香は立ち上がることが出来なかった。
すると義父は茉莉香に近づいてきてお腹を力一杯蹴った。
茉莉香はガハッと血を吐きながら体をくの字に曲げる。
すると義父は突然茉莉香の首に手をかけ立ち上がらせた。
涙のにじむ目で見ると視界にこの前あった男の人がいた。
なんで?
「こいつがどうなってもいいか?ってもさっき散々蹴ったからもうしばらく立てないだろうがな。・・・家から出ろ。殺すぞ。」
義父は茉莉香にナイフを当てた。
茉莉香はもうなんとも思わないが、男の人は目を見開いた。
あぁこのあとどうなるんだろう?
死ぬのかな。
まぁ、それでもいいかな。お母さんに会えるってことだもんね。
だんだん茉莉香の意識が朦朧としてくる。
そして茉莉香が最後に見たのは男がなにやらぶつぶつと呟く姿だった。
あぁお母さんに会いたいな・・・・・・。