表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第12章 錯覚の巨人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

336/373

買い物下手のアザナ


 タルピーの服を直して、満足したオレは少し遅れて散歩に出た。タルピーはなぜか拗ねてお留守番だ。

 オレが追い出される形で散歩に出ている。うーん、前の作りの方が良かったのか、オレが勝手に手を加えたのが悪かったのか。

 まあ後でアイツの服でも作ってやるか。

 

 さて、ベクターフィールド内でも十分、散歩は楽しめる。


 ハイトクライマーの発着所に流用している眺望のよい迫り出した広場は、植え込みをあって散歩の定番だ。


 アザナとその取り巻き四人がいた。


「よう、オマエらも散歩か? というか降りてなかったのか?」


 政務のないアザナたちなので、観光に降りていると思ったらそうでもなかったようだ。


「いえ、帰ってきたところなんですよ。センパイ」


 見れば近くに手荷物がいっぱい置いてあった。

 何か買い込んで、こちらに運び込んだようだ。取り巻き三人のところの使用人と、フモセのモノゴーレムが手荷物を運んでいる。

 

「あー。珊瑚の椅子。欲しかったなぁ」


 使用人たちに荷物を運ばせながら、アリアンマリがなんか言った。


「そんな大物を買うつもりだったのか。倉庫賃貸料取るぞ」

「アザナくんの小豆入れた倉庫に入れるから」


 オレがちょっと突くと、アリアンマリはオレから目を背けてアザナに頼った。

 

「言っとくけど、アザナのヤツ、結局小豆を買い逃したから、オレが念のため買ったヤツを融通してやっただけだからな」


「え? そうなの! アザナくん!」


 頼られたアザナは目を逸らした。


「あのーそれにつきましては、大変そのあのセンパイには感謝しておりますですはい」


 アザナの態度が小さい。アリアンマリは知らなかったようだが、フモセとユスティティアは知っていた。誰にも目を合わせられないアザナは、とても哀れだった。


「アザナくん、なんのために東方諸国に……」


 さすが辛辣なヴァリエ! 呆れたように口を押え、小さくなっているアザナを冷たい目で見ている。


「そう、アザナは安く買おうとして、ギリギリまで選んでいて買い逃しやがったんだよ。無駄にはならないからと、オレも買っておいたから──」


「そ、そういえばー、大公国は珊瑚の加工品が有名でしたねー。アリアンマリもそういうのが欲しかったの?」


 露骨に話題を変えてきた。話を振られたアリアンマリはちょっと反応が遅れる。


「え? あ、うん。いや、違うよ。珊瑚を切り出した椅子」


 南方や足跡諸島では、玉座として使用されているような代物である。そんなの売ってたのか。

 オレとアザナが呆れる横で、取り巻き組は戦利品(買い物)の話題で持ち切りである。

 さすがのアザナも、女性陣の買い物に付き合うのは大変なようだ。


「それにしても、アザナ様が控えてくれれば……」

「半分だもんねぇ」

「もう少し買えたのに」


「オマエが大半かよ」


 少しは反省して、懲りろよ。

 商才ない上に、お金の使い方下手すぎるだろ、お前。


「き、金額的にはと、五等分くらいですよ……あー、そうだセンパイ。アレなんですかなんですか?」


 またも露骨に話題を変えてきた。

 とてとてと広場の端まで言って、ヴァルカンの街を指し示す。

 アザナって立場悪くなると、こういう話の逸らし方するよな。とてもうまいとはいえない。ちょっとこう、なんというか、うーん、あざといなぁコイツ。


「なに、アザナくんを見てニヤニヤしてんの!」


「し、してねぇよ!」


 アリアンマリが蹴りいれてこようとしたので避けた。

 コイツ、アザナに似て足癖が悪くなってきてるぞ。

 勇者という一種の呪いのせいで、オレに攻撃的になるアザナと違って、アリアンマリは素で凶暴なのか?

 ……凶暴だったな。

 蹴りを避けたまま、ととと、と進んでアザナの隣まで行く。


「で、なんだ。アザナ。ああ、あれな。都市防衛用のゴーレムのことね。買うのか?」


「買いません! ……売り物なんですか、アレ?」


「そこ! アザナ様に変な方向性を与えないでください!」


 ユスティティアが本気のツッコミを入れてきた。

 欲しいとなると、金に糸目を付けぬ恋人がいてたいへんだな、ユスティティア。


「それにしても大きいゴーレムですね」


 アザナが指さしたゴーレムは、街の城壁外に建設? 設置した巨大なゴーレムだ。

 東門の外にあるため、街に遊びに行った時は気が付かなかったのだろう。

 

「完成したとは聞いたが、デカいなぁ」


 巨大ゴーレムをつくることそのものは難しくない。資産と資源、維持費と要相談というだけだ。

 一番の問題は運用である。

 大きさに比例して魔力がいるため、一人で扱えるものではない。自然と大量の魔石か魔力プールへの接続が必要となる。

 アレが運用できるということは、国力……魔力プールに余裕があるということを誇示している。

 緊急時に、短時間だけ可動するという代物かもしれないが、それでも対応できる魔力プールがこの街にあるということだ。

 示威効果も高いだろう。

 

「巨人に対抗して作ったんだろうが。あ、そういえば……」


 ここで日程表を思いだす。


「アレの起動式典ってのが、あったな」


「起動! 式典に参加できるんですか?」


 アザナの目が輝く。またかと取り巻き四人が呆れてため息をつく。

 だが、オレもアザナが興味あるなら、参加していいかなと思った。


「貴賓席とかは無理でも、来客席くらい用意してもらえるかな? ジーナスロータスに相談してみるよ」

 

「やったー! 約束ですよ、センパイ!」


 アザナは喜び、モノゴーレムを出して、大荷物を大急ぎでベクターフィールド内へ運び込む。

 そんな5人を見送ると、入れ違うようにハイトクライマーがベクターフィールドに向かって昇ってきた。

 気になったので待っていると、到着したハイトクライマーから、ジーナスロータスが降りてくる。


「ああ、ちょうどよかったサード卿」


 顔を見せるなり、ジーナスロータスはオレがいてよかったと言う。

 テロップを降りてくると、珍しいことに形式的だが頭を下げてきた。なにか問題があって、オレに用があるのか?

 身構えると、意外なことを言われた。


「急なことでもうしわけないのですが、サード卿。私がなんとか調整をしますので、大公殿下にお会いになっていただけませんか?」


「なんで?」


 なんでとしかいえない。

 大公がオレと時間を割いて合う理由など……あ、アレか。


 ディータの婚約者候補。

 大公もオレを気にしているということか。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アザナって天才肌だから、計画性とかまったくないのでしょうね。 やりたいことだけをやって破産する未来が見えますw 誰かがストッパーにならないとダメでしょうが、その人材が居ないんですよね……。 …
[気になる点] ゴーレム好きの奴、というかマネキン好きの奴?は前出てきたけど大公もなんかそれ系統何だろうか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ