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悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第12章 錯覚の巨人

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コレクター・ハリー

調整が上手くいかず、短いです。少し刻みます。


 リバーフロー国は連合各国の中で、もっとも東に位置する国だ。


 中央から遠いにも関わらず、連合の中でも発展している小国である。

 

 古来種の開発が遅れ気味で、遺跡の少ない大陸の東側で発展できた理由は二つある。


 まず一つ目は僻地ということもあり、そこに住む人たちが勤勉な気質も持っていて、必死に発掘と開発しなければ、生死に関わったという切実な理由だ。


 そしてもう一つは、古来種が隣の大陸を調査するため、多くの施設を東端に多く建てたためである。

 このため東方にしては遺跡が多く、いささかバランスが悪いが、古来種が権勢を誇る当時でも特に新しい技術が投入された魔具が残されていた。


 これらの恩恵と真面目さと必死さによって、今日こんにちの繁栄と連合における優位性がある。


 しかし発掘にいそしんだため、未発見の遺跡や未開発の遺跡がなくなってしまった。


 大陸全土で唯一、緩やかに衰退する危機が迫る国であった。


 そんな彼らは未来から目を背けず、いくつもの思索と対策と実験を行い、そしてザルガラを狙っている。


「ええっと、この、なんだ? なんと呼ぶべきか? ディータ殿下が厳密にいうところ、全権大使ではないのはわかる。特命で外遊の責任者というか、代表というか。あの空飛ぶ城の管理者? なんとも微妙な立ち位置と使節団副使代行という役職のザルガラ・ポリヘドラとかいう者だが……。トリディラック市内では、パーティー会場へも連れだしていない少女たちと、それはそれはデートを楽しんでいたようだ」


 リバーフロー国の高級役人が集まるサロンで、古臭く重厚な礼服を着る恰幅のいい役人が、調査員の報告書を嬉しそうに叩きながら言った。


「ほほう。王国の怪物くんは、なかなかモテるようだね。だがパーティにその彼女たちを連れていたという報告は、どういうわけか……ないな?」 


 顔が非常に長く、目が限界まで弛んだ中年の男が、ザルガラのことを男性として評価した。

 リバーフロー国首脳陣は、アザナとその取り巻きをザルガラの恋人か愛人と見ていた。


 ザルガラがこの場にいれば、「アレはデートじゃない! 4人はアザナの取り巻きで無関係!」と激しいツッコミがきたことだろう。一人、誰かを無関係と言っていないが、気のせいである。

 

 王国からもっとも遠いという立地であるため、ディータではなく空飛ぶ城の実質的な持ち主であり管理者であるザルガラを、リバーフロー国は注視していた。


「会場には同年代の幇間めいた秘書官を、伴っていることが多いようだねぇ」


 恰幅のよい役人が紫煙をくねらせながら、ザルガラの補佐をするヨーファイネを幇間……酒の席にどうしても起こる「間」を、賑わいで助ける者と称した。


「普通ならばアピールをかねて本命をエスコートするはずだが、メインであるディータ殿下をおもんぱかって参加させていないのか?」


「しかしアイデアル公のご息女はすでにデビュタントを済ませているようだし、形だけのエスコートがいれば出れるはずだ」


「ほかの少女たちの動向は詳しくわからないが……彼女たちを政治や外交に使わない理由があるとか?」


 アザナたちをザルガラの恋人と決めつけ、推論を並べるサロンの高級役人たち。


「実は彼の恋人などではないのでは?」


 この場で、事実を言い当てる人間がいた。

 大柄な女性で美人といえば美人だが、真正面から美人だと褒められる男がいないようなハリエット・ネルソンという女傑だ。

 多くの魔物を使役する一族ネルソン家の現当主である。

 

「きっと彼にとって彼女たちは本命ではありません。いえ、コレクションではないでしょう」


「ネルソン君。それはどういうことかね?」


 妙なことを言い出したな。という空気がサロンを覆った。

 恰幅のいい役人が確認のため、女傑に発言の意味を確認する。 


「少し情報を精査してみればわかること。彼は私と同じです」


「キミと同じ……」

 

 まさかそんな、という役人たちの反応。

 それらを見回し、当然ではないですか、と胸を張る女傑。

 彼女もまた決めつけていた。


 各々が一つの情報から思い込みすることで、多くの意見が飛び出すことは良いことだろう。

 だが、ザルガラに関係するもの。関係してしまう人は、それぞれが意見に限らずかなり問題があった。


「コレクターと呼ばれる私と並び立てるほど。私はそうもくしています」


 断言する。

 他の役人は報告書を見比べながら、うむうむと頷く。


「ふうむ。そうか。そういう可能性もあるな」


 内心ではそれほど思い込んでおらず、簡単に意見を変える役人もいる中、女傑はさらに持論を並べ立てる。


「あのサード領の奇祭と代官の性質。どう思いますか」


「ふむ。彼の拝領以前からでは?」

「容認しているのも、また彼の気質なのか同類なのか」


 ハリエットの言葉と情報員の報告を比べ、各々が推論をする。


「驚くことに、全裸をあの城の防衛に当ててるんですよ」


「ふむ。あの国らしいというか……」

「全裸で防衛? 男か女か!」

「そこが重要ですな!」

「男です」

「はい、次」


 名簿と報告を照らし合わせ、一時白熱したが最後は全員が見なかったことにする。


「そしてあの秘書官。怪しい気配を感じるとの報告」


「ふむ。そう聞くな」

「近くに置くのだ。優秀なのだろう」

「たんに人がいないのでは?」


 闊達な意見が出るため、当たっているところもあれば外れているところもある。

 思い込みを補強してしまうこともあるが、否定することもある。


「交流のためとはいえ、まさかの竜との婚約話!」


「はー、これは理解できん」

「国益のため押し付けられたか」

「相手は幼い少女の姿らしいですぞ」

「うらやまけしからんな!」


 エト・インが古竜とは知らないが、竜との婚約には誰もが驚いた。 

 なぜか一人、鱗じゃないのか。と残念がっている。


「なにより学園の男子後輩に女装をさせているという噂」


「ありじゃな」

「ん?」


 一人、つい反応してしまった。

 触れないように、視線を逸らせて聞かなかったことにする。


 女官の言葉にいちいち反応する高級役人たちだったが、恰幅のいい役人だけは辟易としていた。


「さらには……」

「ああ、わかった。キミにそっくりだ」


 もうわかった、というふうに役人がタバコを持った手を翳して女官の声を遮る。


「本当にそっくりだよ。変態コレクションをしているキミに」



幇間は男性ばかりですが、ヨーヨーの立場の表現に使わせてもらいました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 変態には変態を知る。 ザルガラの理解者がようやく現れましたね。 ザルガラが喜ぶかは不明ですがw
[良い点] 毎度 第三者視点とか推論とか憶測とか推測とか好きです
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