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【完結】悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第9章

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怪しいがいっぱい


 イシャンが役人と共にマナーハウスを出た後、暴走ゴーレムが一体、盗まれたとドーケイから聞いていたので確認するため倉庫に足を向けた。

アザナは寝坊しているが、たぶん暴走ゴーレムが不気味だから来たくないのだろう。

マナーハウスを出るとき、フモセにたたき起こされているような声が聞こえた。


『あんなの盗んでどうするんだろう』

 珍しくティエの肩の上に乗るタルピーが、不思議だね~、と首を捻る。


「なんでだろうなぁ。もしかして犯人が……いや、チューンドされた重要な個体ならともかく、特になんでもない一体だけをリスクを犯して盗みはしないか」

『ヨシッ! わかった!』

 タルピーが妙なポーズで、オレの肩へ飛び移る。


『お嫁さんが欲しかったんだよ!』

「そうかー、名推理だな。じゃあ犯人はセロファンだ」

『ザルガラさま、それステファノ』

「そう、それ。タルピーは物覚えいいな」

『とうぜーん』

 タルピーが誇らしげに胸を張る。

 だが、ティエが恐れながらと口を挟んできた。


「ステファン・ハウスドルフ様でしょうか?」

「…………あー」

『…………そ、そうともいう』


 気まずい。ティエも申し訳なかったという顔だ。

 しかし告知係が重要であるように、人の名前を間違えるのは貴族として致命的だ。

 ティエの訂正は褒められるべきである。


 ていうか、人の名前覚えられないとか全然、頭良くないな。

 わーい、オレ、大したことなーい。 


「さーて、どうやって盗んだのかなぁ」

 見張りの兵に倉庫を開けてもらう。


 暴走ゴーレムを放り込んであった倉庫の中には、ヨーヨーがいた。


「お待ちしておりました、ザルガラ様。本当に、ほんと待ってました」


 なんで?


「閉めないで閉めないで! むぎゅ……」

 見なかったことにしてガラガラと扉を閉めようとしたら、ヨーヨーが身体を捻じ込んできて、胸が引っかかる形で挟まる。


「なんでオマエも来てるんだよ。婚約を進めてる間柄ですからって話なら、オレが爵位貰った時点で、まっさら更地のリセットだからな」

 ヨーヨーが何か言おうとしたが、先んじて潰しておく。

 許嫁とか婚約交渉中などが通じないと知ると、ヨーヨーはかちゃかちゃうごめきながらも拘束されている暴走ゴーレムに囲まれた状態で、ヨヨヨと泣き崩れた。


「ひどい……。わたし、倉庫で一晩も怖いゴーレムに囲まれて……」

「それは素直にすげー大変だったな」

「ちょっと興奮したけど」

「それはそれですげー変態だな」

 嫌な理由で鼻息の荒いヨーヨーから、オレとティエが一歩下がる。


「はいはい、追いかけてきたのは分かった……なんか、この領地出入りガバガバだなぁ。で、なんで倉庫にいるの?」

「はい、それ重要!」

 よくぞ聞いてくれました、とヨーヨーが居住まいを正して話だす。


「美人の暴走ゴーレムが格納されていると聞いて、紛れていれば間違って、ザルガラ様が私を見初めてくれるかと」

「ゴーレムと間違って解体する可能性が格段に高いな」

「つまり、あなたがわたしの新しい素材ですかー?」


 論理がノックダウンされて、過程が爆破されたようなヨーヨーの話に、反応する声があった。

 リマクーインだ。

 ぞろぞろやってきた棟梁とドワーフたちとともに、リマクーインも倉庫に暴走ゴーレムを取りに来たようだ。

 ドワーフたちは不謹慎にも酒瓶片手だが、彼らにとって通常行動なのでそれはいい。


 異様なのはリマクーインだ。

 糸鋸いとのこと金づちを手に、ヨーヨーに陽気な笑顔で迫る。


「おいおい、変態がうつるぞ」

 ひどい、とヨーヨーが擦り寄ってくるが突き放す。その変態に、道具を持って近づくリマクーイン。

 冗談……には見えない。


「その程度を恐れていたら、研究はできませんよー」

 からかう様子とは違う。楽しみでしかたない、そんな様子で扉に挟まれて動けないヨーヨーに迫る。 

 とっさに何かを感じたオレは、分離する右手を飛ばしてリマクーインの襟首をつかんだ。


 リマクーインの糸鋸の先が、ヨーヨーの鼻先をかすめた。

 ぎりぎりだ……。

 襟首を掴むのが遅れたら、あまり大切ではないヨーヨーの大切な頬に傷がついていた。いや、別にヨーヨーを心配しているわけではないが……。


「……え、マジ?」

「…………え、冗談じゃないの?」

 ヨーヨーはさすがに危険を感じたのか、遅ればせながらと防御立方体陣を張った。

 常時、防御胞体陣を使っているオレやアザナと違い、ヨーヨーくらいの腕前と魔力量だと、着衣の防御陣に頼り切りだ。

 その剥き出しの顔に、糸鋸とか怖すぎる。


 さすがに事が事なので、見張りの兵にリマクーインを抑えてもらった。

 拘束というほどではないが、一応、金づちなどは没収させる。

 

「サード卿ー、それは材料じゃないんですか?」

「な、なんの材料だよ」

 少し……コイツが何を考えているかを理解できた。

 だが否定してもらいたい。だから確認のため尋ねる。


「ゴーレムのですよー。前はよく使ってました」

「人をゴーレムの材料? おい、棟梁さん。どういうことだ?」

 もしや、と想像できるが理解したくない。思わず、逃げるように会話を棟梁へ振ってしまった。


「いや、すまん。助けた手前、保護者のつもりではあるが、さすがに合流する前……彼女の以前の研究体制までは知らんので、どういったつもりなのか推し量ることもできん」

 棟梁もリマクーインに対し、何を言いだしているんだという態度だ。 


「暴走ゴーレム、なんだかわたしが研究してたのと似てるんです」

 コイツ、勝手に語り始めた。


「似てる?」

「はいー。人の魂を圧縮して、胞体石に収める研究ですー」


 笑顔。

 けっして飛びぬけた美少女ではないが、見た人に好印象を与える飛びっきりの笑顔。

 発言と外見が一致しない。


「古来種様再来に際し、最適な肉体が足りない~。とのことなので、ブラ―エ様から仮初の肉体の開発を任されてました」

「人間を材料にした


「うーん、どちらかといえば実験の材料? 使うのは魂なので」

「まさか……。人間の魂が胞体石に宿れる実験か?」

「そう、それです」


 当たってしまった。

 全同一の琥珀ゴーレムという解を得るまで、最初から出来ぬと決めつけ、オレがまったくやろうとも思わなかったことを、鼻長候ブラーエはこのリマクーインにやらせた。

 

 どれほどの人間を使って実験し、そして失敗し続けたのか?

 それを尋ねようとして飲み込む。

 だいたいわかる。

 

 失敗し続けたからこそ、コイツはここにいるに違いない。

 

 調べて確証を得た方がいいが、それでもオレはコイツの口から聞きたくなかった。


「……あー、コイツは……ヨーヨーはオレの友人だ。材料なんかじゃない」

「なんだ、御友人ですかー」

 笑いながら答えるドワーフの少女……いや、いい歳かも。それはどうでもいい。

 ……正気か、コイツ。

 その正気にではなく、リマクーインの知性と理性に釘を刺す。 


「ああ、そしてこの国には、オマエが材料にしていい人間も亜人も獣人も魔物も獣もいない」

「そーですかー。それじゃー仕方ないですね」

 なにが仕方ないんだよ。と言いたがったが、オレの釘差しにわりと素直だったので、余計な言葉は飲み込んだ。

 兵士に目配せし、リマクーインを解放させる。


「あの、ザルガラ様? わたしへのこの無礼とか、かなーり罪になると思うんですけど?」

 扉に挟まったままのヨーヨーが頬を指差し、困惑しながらもリマクーインの解放に異を唱える。

 もっともだ。こんなヤツでも伯爵の令嬢なので、ないがしろにはできない。


「領民ではなく預かり身なヤツだが……不手際として、領主のオレが謝罪する」

 領主の謝罪はあまりしたくないが、ヨーヨーならいいだろう。

 ただの謝罪じゃなく立場を述べた謝罪なら、無茶を言いだし難いだろう。


「慰謝料は結婚で」

「無茶言ってきやがったコイツ」

「あぐぅ、扉を閉めないで閉めないで! あはん!」

「てめ、また、あの魔法使ってやがるな!」

 閉めるなというので開け放つと、ヨーヨーはバランスを崩して地面に倒れた。


 ドワーフたちはゴーレムの解析のため、どやどやと倉庫へ入っていく。

 ついでにヨーヨーは除けられた。


 扉から解放されたヨーヨーは、衣服を整えながらオレに詰め寄る。


「はあ、危なかった。ザルガラ様、あの子、マジじゃないですか? 本気じゃなかった? 私は死ぬところだったのでは?」


 作業に戻ったリマクーインを指差し、あのヨーヨーが少し青ざめた様子で訴える。


「まあ、もとから怪しいとは思っていたからな。……おい」

 オレは何もないところへ声をかける。

 一瞬、ヨーヨーが訝しがるが、すぐにスゥッと人影が現れると、その表情が驚きに変わった。

 

「ここに。おります。控えて」

 現れた人影は一つ目のアイマスクを付けている。

 サイクルオプスことイマリーが、ひょんと現れた。

 短いセンテンスで、言葉が入れ替わっているが、ちょっと今のカッコ良かったな、悪役みたいで。


「出番、やったー」

 もろ手をあげるイマリー。

 ぶち壊しだ、イマリひょん。


「誰かに貼りついて、ひそかに監視。それをしてないと気が済まない。そういう風にできている。のです。ほ、ほら、禁断症状が……」

「こんなところにも古来種支配の犠牲者が……」

 カッコワルいなぁ、コイツ。


 スキップでドワーフの中に紛れていくイマリー。身長に差があるため、妙に違和感がある。


「あらぁん、サード卿、おはようございます」

 遅ればせながら、代官が気持ち悪い動きでやってきた。ティエが怯えるから、その動き止めろ。真似するな、タルピー。

 遅いちゃー遅いが、ドーケイ代官も普段の業務がある。こちらはある程度、オレが請け負うべきだろう。

 ……という名目。


「ああ、おはよう。こっちは先に始めてるぜ」

「そんな飲み会みたいなぁ~。…………で、あの娘。やっぱり気になりますぅ?」


 黙っておくつもりだったが、ドーケイ代官はオレの視線から察したのだろう。

 警戒しているとかではなく、気になるという言葉に言い換えて、懐に入り込んできた。やだなぁ、懐に入り込まれるの。


「気になるね。オレの友達ともお友達もなれたようで」

 オレも言葉を言い換える。どうとでも受け取れ、解釈できる言葉だ。 

 イマリーの能力で、すっかりリマクーインとも仲良し……でもないか。

 荷物持ちのように、イマリーが扱われている。

 また能力が効いてないのかもな。 


「気になるお相手が一人だけというのは危険ですわよぉ」

「いや、別に浮名を流すつもりはないんだな。それはあんたの方が得意だろう?」

 つまり、ドーケイ代官は一人だけを警戒するのはよくないということだ。 


「やだぁ、アタシがモテモテだなんて」

「言ってねぇよ」

「まさかぁサード卿もアタシに興味が?」

「ねぇよ」


 役人と貴族らしく言葉を言い換えてたのに、露骨に真正面から受け止めやがったこの代官。

 ま、そういった意味も含めて――。


 ――オマエも怪しいんだけどな。


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[一言] >暴走ゴーレムを放り込んであった倉庫の中には、ヨーヨーがいた。 「暴走ゴーレムの中には、ヨーヨーがいた」の間違いでは?
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