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【完結】悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第9章

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頼もしい?協力者たち


「捕まってしまった」


 目隠しされ鎖で縛られ転がる見た目少女のリマクーインは、他人事のように現状を呟いた。

 

 見た目だけは少女というドワーフを縛り上げ、目隠しをして転がす俺は火事の見物人である領民にどう思われているのか非常に心配だ。


「ここまでする必要、ねえ……あるのかしらぁ?」

 オレの評判を気にしてか、それともリマクーインを不憫に思ってか。ドーケイ代官が可哀想だと声を上げた。


「ドワーフでありながら、立方体陣を投影して新式魔法を扱えるほどの実力者だ。目隠しはいるだろう」

 リマクーインはまあまあの実力者だ。オレやアザナはともかく、新式魔法でも隙を突かれれば、周囲の人間たちに害が及ぶ可能性がある。

 それにがっちり縛らないと、目隠しされていても手探りで地面に平面陣を描きかねない。小石でも持っていたら、地面で削って立方体の一つも造り上げる恐れもある。ドワーフとはそういうものだ。


「あ、最近できるようになったんですよ、立方体陣の投影。すごーい、天才? 天才ですねー、わたし」

「自慢するな、このアマ」

 思ったことをすぐ口に出すタイプだろうか?

 能力は高くも、ちょっと頭が残念そうだ。


「それで、雑用のメイドゴーレムを暴走させたのはオマエか?」


「…………?」


 簡潔な尋問に対し、わからない。という首を傾げて見せるリマクーイン。

 

「おい、これなんかの罠じゃないか? 時間稼ぎとかの」

「つまり……犯人捕まえたと思わせ安心させて、実働する本命の工作員がいるとか」

「本命がこっちで別動隊、もしくはバックアップがいて、別の作戦に移っている? そうも思える」

「暴走ゴーレムが囮の作戦という可能性もありますね」

「作戦の全容を聞かされず、暴走だけさせているのかもな」

「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に、対応してくるかもしれません」

「その通り聞けば理想的だが、絶対それうまくいきそうに感じないんだが……なんでだ?」


 リマクーイン恐るべし。いや、送り込んできた共和国か、それともティコ・ブラーエか?

 オレとアザナが惑わされている。

 一体、奴らの目的はなんなんだ。


 相談中、リマクーインに反応があるか、チラリと伺ってみる。

 すると見張りであるティエに転がり擦り寄って、何か話しかけていた。


「あの方たち、いつもああなんですか?」

「ええ……とても仲良しでしょう」

 リマクーインと仲良さそうだな、ティエ。質問に即答してやがる。

 あと、なぜか困った様子だ。


「いえ、そうではなくー、あんなふうに勘繰ってばかりいるんですか? はい、そっちのおじさん」

「あたしもあったばかりだしぃ。おじさん言うんじゃないわよ、プチるわよ」

 質問先を変え、ドーケイは答えを濁す。プチるってなんだ、ドーケイ。


「そうなんですかー。なんか、むずかしく考えすぎですね」

「頭がいいと、余計なことまで考えちゃうのねぇ~」

 ドーケイもすぐにリマクーインに打ち解けていた。

 分かってる? 容疑者だぞ、リマクーイン。


「そっちのドワーフはともかく、おい代官。オマエはこういうことに頭使えよ」

「内務はまあできるけど、陰謀とかわかんないわ。いやん、インボーだなんてぇっ!」

「【やっつけるぞ(ライトイットアップ)】」


 防御陣を突き抜けやすい光と魔力弾を合わせた新式魔法。これを、くだらないことをいうドーケイに叩きつけた。


「で、ドーケイ。このリマクーインはどういう経緯で、ここの工房に雇われたんだ?」

 防御陣を抜けることに特化した威力の低い新式の魔力弾だが、その一撃を喰らっても仰け反っただけだった。その見た目通り、体力的に優れているようである。


「え、ええ。工房のドワーフたちがいたでしょう? あれらはみな同じ氏族なんだけど、共和国で迫害されてて、それについてきた娘なのよ」

「それでか……」


「どういうことですか?」

 納得するオレに対して聞いてくるアザナ。魔法の才に秀でているとはいえ、政治的なことはいまいちだ。


「王国は人材育成を国是としている。……エルフやドワーフなど亜人も立派な人材だ。そこに差別があるわけじゃないが、共和国と比べたら天と地の差だ。積極的に共和国で虐げられている人材を受けていれている。大げさにいえば結果的に相手国の国力が下がるし、こっちは人材増えて国が富めるという政治的な判断もあるんだろうが、まあ……けっこう頻繁に向こうの国から流れてくる人材を受け入れているんだよ」


「それでリマクーインさんと一緒に、ドワーフたちをノーチェックで受け入れてしまったと?」

「あら、ノーチェックではないわよ」

「そこら辺は後で聞くとして」


 ドーケイも代官として言い訳したかったのだろう。事実だろうが、そこは後回しにした。

 ただの貧民や流民は受け入れていないし、不法入国してもしくじった冒険者や開拓者と同じで流民の扱うが悪いのだが、そこまでアザナに言う必要はない。


「じゃあ、それを利用してリマクーインさんは潜入してきたと?」


「まままってください!」

 アザナに指差されたリマクーインは、床の上で魚のようにびちびちと跳ねながら訴え出る。


「わたしはブラーエ様のところで、望まれた結果を出せずに処分されるところだったんです!」

「そうじゃ、娘っこの言う通りじゃ。ブラーエ侯爵のところで、何やら新しい人材が雇われたようでの。その者から疎まれて、何かと難儀しており、そこでわしらの氏族が助けたのだが……」

 花火で工房を燃やしてしまったドワーフの棟梁が、親身になってリマクーインに助け舟を出した。

 ここで工作員を助ける意味はない。義理堅いドワーフだとしても、そこまではしないだろう。

 

 と、なると表面上は事実か、もしくはドワーフの棟梁はリマクーインの話を本当だと思っている、ということか。リマクーインの仲間で工作員という可能性もあるが、そんな奴らが花火で火事を起こすなんていう不始末を起こすとも思えない。いや、オレたちが調査にきたから、慌てて証拠隠滅の可能性も……。


 ――証拠もないのに疑い続けてもしかたない。まずドワーフたちの覚悟のほどを調べる。


 ドワーフたちを睨め付け、努めて低い声で問いかける。


「しかし、そういう体裁でオマエたちが利用されている可能性もあるぞ。事実、あの共和国製ゴーレムはリマクーインが自分の物だと白状した」


「ち、違うんです!」

 今度はリマクーインが、ドワーフたちを庇うように口を挟んできた。


「ここに逃げてきたことが、ジュールっていうもじゃもじゃにバレて、本国に知らされたくなかったら協力しろって! あのあの……!」


 つかえながら事情を説明するリマクーイン。

 話をまとめるとこうだ。


 ジュールという共和国の密偵は、排斥された12貴族の一門であり、東の連合諸国にも通じている二重スパイだという。

 今回、連合諸国にも情報を流すため、オレのパーティ会場にも潜入していたという。


 空中遺跡の調査に邪魔なオレを誘い出すため、リマクーインに陽動を頼んだらしい。

 

「もじゃもじゃ?……。客船の時、オレたちを案内してた……。昨日もパーティで変装してウサギ耳給仕してた、あのもじゃもじゃ頭か」

「気がついてたんですか?」


 アザナも気がついていたようだ。変装はしてたが、あのもじゃもじゃ頭はそのままだったので、人の顔と名前を覚えるのが苦手なオレでも気が付いた。


「もちろん。だからウラムを張り付けておいた」

 認識をすり替えるイマリーほどではないが、ウラムも潜入や工作に向いている。まず小さい身体は隠れやすい。精神操作や変身能力もその助けになるだろう。

 正体のわからない密偵より、知れている密偵を泳がせておいたほうが都合がいい。

 

 うまくすれば、弱みを掴むなり、利益をちらつかせるなりして、三重スパイにも仕立て上げられるしな。


「あの……ウラムさんって……アレですよね」


 ウラムの名前を聞いて、アザナの顔に不満の色が浮かぶ。

 確かにサキュバスを使役してるなんて、あまり体裁が良くない。

 現在の外見はイフリータと同じなので、ウラムの正体を知っている人物は少ない。アザナはごく自然に見抜いたのだろう。

 さすがのアザナもサキュバスには眉を顰める……か。


「アレとイフリータ、そして古竜にデュラハン、サイクロプス。まるでハーレ…………家臣に四聖獣が揃いましたね! 先輩!」


「俺の知ってる四聖獣じゃねぇ。あと五人いないか?」

 不機嫌なアザナが、口を尖らせて何か変なことを言いだした。

 だがオレは踊るタルピーをちらりと見て、アザナの冗談に対して律儀に応える。


「タルピーは家臣じゃねぇよ」

「ザルガラさまとあたいは相棒なんだよね!」

「おお、そうだ」

 

 飛びついてきたタルピーを肩に乗せると、アザナが驚く顔を見せた。

 そう、タルピーとオレは法的にも魔法的にも縛りあう関係はない。タルピーはオレの高次元物質を頼りにしているが、ディータの高次元体と違ってオレがいなくなっても代用がきく。 

 

 それからウラムはタルピーの部下で直接の家臣じゃない。トゥリフォイルは正式に家臣となっている。イマリひょんは……あれだ。ぬらりとやってきて、紛れて腹を満たしてどこかの部屋で寝て…………なんだアイツ?

 たまに頼みごとを受けてくれる食客……かな?


 古竜であるエト・インは、家臣でも客でもない。婚約者……というのもあちらの勝手な風習で、今じゃ王都ライフを楽しんでいるだけである。たまに遊んでいるだけで、オレと深い関係はない。


 古竜であることをここで言うわけにいかないので、エト・インのことを省いてそれらを説明すると、アザナは複雑な表情を見せた。


「上位種が友人! すごいですねー!」

 縛られたまま、リマクーインがビチビチと飛び跳ねる。これに驚いて、アザナの表情が元に戻った。


「で、リマクーイン。あの共和国のゴーレムはオマエを狙った追っ手か」

「違いますよー」

 器用に飛び跳ねながら、リマクーインは首を振る。首を振った反動でブレて勢いが増し、いよいよ陸に上がった生きのいい魚のようだ。


「あのゴーレムたちは、地下で勝手に造っておいた私物です」

「どんだけフリーダムな亡命者だよ」

 ゲンコツでも落としてやろうとしたら、アザナがオレの肩を掴んで止める。


「待ってください、先輩。アレが彼女の造ったもので、隠していただけだとしたら……」

「なんだ……っ! そうか、リマクーインの亡命は偽装で、工作の準備をしていたということか?」


「いえ、そんなことではなく。アレがリマクーインの物なら、解体したあれらの所有権をボクは主張できないのでは? ということがとてもとても気になるんです」

「真面目な顔でセコいこと言うな」

 最近、アザナがお金のことで矮小化していてとても辛い。

 無駄遣いしすぎなんだよなぁ。


「ジュールに頼まれた陽動用なんですよー、アレ」

「お、びっくりした。また急に自白かよ」

 アザナが動揺して詰め寄る中、リマクーインはマイペースに証言を述べる。


「急造したあの共和国ゴーレムを暴れさせるつもりだったのでーす。さきほどの火事の時はー、ゴーレムが燃えては大変だーって、はあ……はあ……地下の隠し部屋から出した……だけでーす……ふぅふぅ」

 いよいよ疲れたのか、リマクーインの陸に釣り上げられた魚の動きは止まった。

 そして彼女の証言を信じるならば、暴走ゴーレムの調査は進展しなかったことになる。


「なんだよ……、手間かかっただけで手がかりなしで最初に戻っちまったか……」

「ボクのゴーレム……」

 同時に落胆するオレとアザナだが、残念なことに心は全く一致していなかった…………。


「あのぉ……ゴーレムの調査なら、お手伝いしますよ」

 ここでリマクーインが協力を申し出た。

 なるほど取引か。


 火事で工房を燃やしたドワーフたちも、その失態を帳消しにする条件で協力させてもいいだろう。

 リマクーインの仲間で工作員であるならば、捕らえて謎のままにしておくより、監視して作業をさせたほうが馬脚を現すかもしれない。


 そんなことを考えるオレの視線を受け、意図を察したドワーフの棟梁が、力の籠った目でうなづいてみせた。


「よし、オマエら! オレとアザナに協力させてやる! 光栄に思えよ!」



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― 新着の感想 ―
[一言] ザルガラやアザナを捕らえる場合は、ドラム缶に肩までコンクリ風呂に入れなきゃダメですよね?
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