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悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第2章 不和と重奏

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男のロマンは秘密にある  (挿絵アリ)

第2章 不和と重奏

開始します。


感動巨編です(大げさ)

「よぅっ、ペランドー! 秘密基地アジトを作ろうぜっ!」

 明日は休日。

 ――という、浮ついた雰囲気に包まれる学園の放課後。

 オレは親友をスポーツに誘うように、ペランドーをアジト作りに誘った。


 陽気なオレの一声で、騒々しかった放課後の教室が静まり返った。


「――ん? なんだ?」

 教室内を睥睨へいげいする。

 目を逸らす生徒たち。


「ち、なんだよ」

 オマエらの態度が気に入らないと、オレは吐き捨てる。


 オレの視線がペランドーに向くと、コイツらはひそひそと小声で話し始めた。


「つ、ついに世界征服の準備を?」

「いや、そんなことするわけないだろ。 まずは王国から……」

「もしもし、セバス? いきなり念話してごめん。すぐに王都に拠点を持つ商会の債券を処分して……」


 好き勝手な事を言いやがる。まったくひでぇヤツラだ。オレをなんだと思ってる?

 もう、頼まれたってオマエらを友達名簿にも入れねぇからな。

 ……いやまあ、どうしてもってなら考えるが。


 一方、ペランドーは――。


「う、ひぐ……ううう、ぐずん」

 泣いていた!


 え、なんで? 

 オレの今の自然な遊びの誘い方、なんか間違った? 

 言い方が怖かった?

 ペランドーが友達、止めちゃう?


「どど、どうしたんだよ、ペランドー! は、腹か? 腹が痛いのか?」

「ち、ちがうんだ。ぼ、ぼく……初めて男の子に、男の子らしい遊びに誘われて嬉しいんだ……」

「そ、そうか。驚かすなよ」

 よかった。ペランドーは正しく理解してくれている。


「いつも……、ぼ、ぼくはお人形遊びとか、グス……刺繍の会とか、そんなのにソフィに付き合わされてて……うう、やっとぼくにも男の友達が……そう実感できて……つい、ごめん」

「お、おう……」

 ペランドーはオレとは違う孤独を味わってきたようだ。

 女の中で、男が1人~とかそういう気まずい系の孤独か。

 人によっては羨ましいとか言うだろうが、なんとなくオレには苦痛であろうと理解できた。


 ペランドーは涙を拭い、男の笑顔でオレを見上げた。


「いいよね、秘密基地アジト作り。男のロマンだよね!」

「分かってるじゃねーか。さすがだぜ、ペランドー!」

 友と気が合ったいう証拠に、ゴッ……と拳を合わせる。


 ――痛ぇ。

 

 世間の男たちがやってるの見てマネしたが、加減とタイミングが難しい。何事も初めては上手くいかないな。

 ペランドーも痛がっている。


「……っぅ。よ、よし、一緒に帰ろうぜ、ペランドー」

「ぃ……、う、うん」

 お互い拳を擦りながら、教室を後にした。

 エンディアンネス魔法学園の生徒たちが、帰路を急いでいる。明日が休日とあって、みんな足取りが軽い。


 校舎外に出ると、その足取りが一瞬止まる。


 原因は王国騎士団。


 校舎外で、歩哨にあたる勇壮な王国騎士団の姿があった。

 彼らはある事情で、この学園の警備にあたっていた。

 凛々しく輝かしい存在。それを見た時の歓喜と緊張感が、生徒たちの足を止めさせる。


「わぁ……騎士団だぁ」

 悠然と歩哨を続ける騎士を見送った後に、ペランドーは驚きとも、憧憬とも取れる声を上げた。

 騎士団の姿が校舎の影に隠れ、生徒たちは動きを取り戻す。


「学園内に騎士団だなんて……。やっぱり、アレのせいかな?」

 ペランドーが裏庭を指差す。


「そりゃあ、学園にも警備の兵はいるけど、アレがあっちゃなぁ」

 本来、学園は自治が認められている。警備などもそうだ。独自の警察機構まである。


転移門ゲートなんてあったら、王国が乗り込んでくるよねぇ」

 ペランドーが呆れて肩を落とす。


「あのバカ、片道とはいえなんてものを。王宮だけじゃなくて、隣国まで騒ぎだしてるって話じゃねーか」

 事態が事態だけに、教頭会も王国の介入を許してしまった。

 もしあのバカ……アザナが他国の要所に転移門をつなげられるとしたら? 

 どこの国だってビビる。オレが国の運営に携わってたらビビる。


 現存する遺跡を流用した転移門は、行先が固定。どこにでるか分かっているから、出入り口の軍備は万全だ。

 だが、自由に転移門が開けられる存在がいたら、それは戦略兵器そのものだ。


 その戦略兵器候補とは、アザナのことだ。


「ところで、アレを作った新入生はどうしたの?」

「ああ……。アザナのヤツぁ、謹慎くらって王宮に呼ばれたりしてるらしいぜ。今頃、所有権を王国に渡すか、学園に渡すか、迫られてるだろうな。まあ、敷地は学園だが、こりゃ王国管理になるだろう」

「ふぅん」

 あまり興味がないのか、ペランドーの反応が鈍い。


「でもアレがあれば、これからランズマへ療養に行く人が増えるよね」

「ああ、まったくだな。カタランのおっさんも大儲けだな」

 そういえば、ヨーヨーのヤツはいつ帰ってくるんだ?

 ランズマの整理が終わったらだろうが、それまでにどうにか、「お゛め゛え゛の゛せ゛き゛ね゛え゛か゛ら゛」状態にしておきたい。

 あの女は危険だ。


 しかし休日に学園で工作はできない。

 気を取り直し、計画を実行に移そう。


 オレには「二週間後までに、秘密の隠れ家」を作っておかなくてはならない理由がある。


「よし、とにかく明日の朝、『葡萄噴水広場グライフスフエンテ』に集合だ」

「わかったよ!」

「なるべく、平素な服な。具体的には汚れてもいい服だ」

「そうだね。秘密のアジトだもんね」

「おう! 場所には目星がついてるからな。道具はいらねぇぞ。オレたちは魔法使いだしな」

「……なんで?」

 ペランドーのノリが悪い。

 というか、コレは本当に分かってないのか?


「鉄の加工も木材の加工も、新式魔法で出来るだろうが?」

「え? できるの?」

「オマエなぁ……。いや、確かに専門じゃないと知らないことか。仕方ねぇ、実演してみせるか」

 オレは近くの植木から、枝を一本選んで圧し折った。

 良い子はマネしちゃいけねぇぞ。オレは悪い子だからな。

 新式の魔法陣を一つ作り出し、その中に稼働する六芒星を幾枚か重ね並べる。

 

「『頑固職人なら朝飯前のクラッカー』」

 魔法陣に枝を投げ入れ、呪文を唱えると、六芒星たちがかんしゃくでも起こしたように激しく回転と縮小を開始した。

 枝はその動きに巻き込まれ、がりがりと姿を変えていく。


「ほら、あっという間に完成」

 魔法陣から吐き出された枝は、スプーンの形に加工されていた。


「おー、すごーい。これなら、なんでもできちゃうね」

 生木のスプーンを拾い上げ、ペランドーは感動している。


「さすがにオレも本職じゃないから、タンスとか複雑な建具とかは無理だ。簡単な椅子とか床板くらいなら作れるけどな」

 

「すごいなぁ。ねえ、これ貰っていい?」

「生木だから後で曲がるぞ」

 乾燥しきった木なら良かったな。それに確か、その木は――。


「いいよ、それでも貰っとく!」

「毒あるぜ、その木」

「……」

 ペランドーは無言で生木のスプーンを投げ捨てた。

 

「よし、じゃあ、明日は弁当も用意しておけよ。近くに食い物屋とかあるとは限らんからな」

「うん、わかった。レモネードもいっぱい持ってくよ!」

「そうか! そういやオマエん家は鍛冶屋だもんな!」

 鍛冶屋やガラス職人などの家には、必ず水分補給のレモネードがある。

 職人が安価に買えるようにと、組合が大量に買い付けて身内価格で売っている。鍛冶屋の家にお邪魔すると、大抵レモネードが出る。


「よっしゃ、オレは家のとっておきのお茶と焼き菓子を持ってくぞ!」

「わぁ、楽しみだなぁ!」

 ペランドーは嬉しそうだ。

 オレも嬉しい。

 顔には出さんがな。

 

 ああ、なんか友達と一緒って感じするぜ。


 ――これは嬉しい誤算・・だ。


 オレが秘密のアジトを計画したのは、単に少年のロマンを満たすためではない。

 もっと打算的な計画のためである。

 図書室の蔵書の一部を持ちだし、一時的に隠しておく場所がいるからだ。

 なぜオレがそんな計画を立てているのか。

 それはオレが未来を知っているからだ。



 二週間後――。




 この学園は南校舎を残し、完全に消滅する。

 

感動巨編と言いながらいきなりネタセリフです。


3/2 アザナ・ソーハ アザトインのラフ絵を


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] アザナ君、あー、うー、うん、コレは.... どっちとも言えないねぇ。 個人的には女になっていてもらいたいっ!
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