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悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第1章 天才と怪物

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大敵の天敵 (挿絵アリ)

全裸絵があるので背後に注意してください。

不快に思わる方は【表示調整】で挿絵表示をクリックしてオフにしてください。


「まいったぞ」

 大敵者を倒し、夕食はちょっとご馳走を食べた翌日。

 学園に登校したオレは、自席で腕を組み考え込んでいた。よほど難しい顔をしているのだろう。生徒たちが近寄ってこない。

 いつもだが――。


「しかし、まいったぞ」

 両親は遠く離れた自領だ。 


 アザナに相談するのはもちろん論外だ。

 ユールテルとだって親しいわけじゃないし、彼自身も役に立つわけじゃない。うまくすればエッジファセット公は強力な後ろ盾になるだろうが、したくない。それをやったら自動的にユスティティアと将来の夫であるアザナが出てくる。


 一度目の人生で、利害関係から手を結んだ人物に頼るのは無理な話だ。


 オマエだれ? 


 という扱いをされるに違いない。


 両親の関係者とも、オレは没交渉なのでツテがない。

 ペランドーも論外だ。実力的に。


「ん? ペランドーのヤツ、まだ学校にきてないのか?」

 そろそろ授業が始まる。それなのに教室の前のほうにあるペランドーの席は空いていた。

 オレはペランドーの席までいって、カバンが無いかを探した。


「ないな。……おい! ペランドーのヤツ。学園にきてないのか?」

 オレはペランドーの隣りの席に座る女子生徒に尋ねた。


「きゃぁっ! はい。ペランドーくんはまだ、ひぃっ! きてません!」

「そうか」

 会話の途中に悲鳴が混じる変な子だ。そろそろ怪物扱いが無くなっていいはずなんだが――。


「ペランドーくん。……狙われたのかしら」

「あいつ、普通の市民だもんな」

「可哀想に……」


 オレは誤解されているようだ――。ペランドーは友達だよ、と声を大にしていいたい。昨日からだけど。


 立っていると視線が痛いので、自分の席に大人しく座った。

 と、同時に担任が入室してきた。

 マトロ・ブルバキィドという丸メガネをかけた女性で、そろそろ結婚の話も出てきている担任教師だ。

 

 魔法の実力は普通だが、教育者としては優れている。初心者を伸ばすことには長けている。新式魔法ばかり教える教師が多い中で、彼女は古式魔法陣の原理を説明に織り交ぜて、生徒たちに古式を強く認識させる教育手法をしていた。

 もっとも、専門が通信通話関係の魔法なので、あまり生徒たちの受けはよくない。

 通信関係も重要なんだけどな。天才アザナがイジって改善すれば、転送、転移魔法などになるし。


「えー。ペランドーは昨日、王都内であった事件の参考人として巡回局に呼ばれて欠席です」

「参考人? せんせー。ペランドーがなにかやったんですかー」

 男子生徒が質問をすると、教師は首を振って否定した。


「彼は被害者です」


 バッ!


 なぜ、一斉にオレを見る……。


「お、おちついてください! みなさん!」

 マトロ女史が慌てて生徒たちをなだめた。クラスメイトの視線がオレから逸れた。


「は、犯人は人間ではありませんっ!」


 バッ!

 

 だからなぜ、そこでオレを見る。


「ち、ちがいます! 人間じゃないからって、ザルガラくんではありません!」

「おいこら、否定の仕方がひでぇだろ! 言葉選べよ!」

 堪らず席を立ち、担任を問い詰める。


「ザルガラくんは、同じ……わたしたちと同じ人間です!」

「フォローの仕方が辛ぇっ! おい、おまえらどう思う?」

 確認のために、クラスメイトに問いかける。

 互いに目配せしながら、気後れがちにクラスメイトたちが頷いた。


「ザ、ザルガラ・ポリヘドラくんは、お、同じ、人間です」

「え、なに? この脅して無理矢理言わせたような雰囲気?」


   *   *   *


「さぁて、気分を一新してアザナにケンカを売りにいきますか」

 昼休み。オレは腹を満たしてから、アザナの勘違いを正すケンカを売りに、下級生たちが集まる校舎へと向かった。

 その途中、渡り廊下で一人の男子生徒がオレを待ち構えていた。

 柱によりかかり、制服を着崩して胸元を露わにした奴だ。


「てめぇ……、なんのようだ?」

「おおっと、ケンカしにきたわけじゃないよ。ザルガラくん。もちろん、アザナくんに声をかけるとかそういうつもりも毛頭ない」

 キモイパワードファイブのリーダー、イシャンは優雅にくるりと回って見せた。

 

「こうして敵意がないことを示すため、服を着ているだろう?」

「全裸が交戦意志表示かよ、オマエ」

 いやまあ、確かに全裸の男ってのは、一種の攻撃していいのサインに見えるが。

 オレが戸惑っていると、イシャンは驚くべきことを口にした。


「ザルガラくんには、ぜひ礼を言いたくてね」

「礼だと? お礼参りってやつか」

「いやいや、本当に感謝の意だよ」

 温和な瞳には敵意は感じられない。オレは礼を言われるような事をしただろうか?

 仮に、昨日の大敵者騒動がバレていたとしても、感謝するのはペランドーやソフィだ。イシャンではない。


「だが、普通に礼を言ってもつまらない。昨日、まる一日かかって体得した魔法を見せてやろう。先日の『極彩色の織姫』という魔法をこのわたしにかけてみるがいい」

「ほう。いうからには、対策を練ってきたというわけか」

 多少は"お礼参り"の意味があるのだろう。お望み通りにしてやる。


「『やっぱり極彩色がいいねって織姫が言ってるぜ!』」

 オレの着衣魔法を、イシャンは真正面から受け止める。おい、シャワー浴びるようなポーズとって、恍惚とした顔するな、変態。

 イシャンの身体が極彩色の魔力に包まれ、たちまち動きにくい古風な服装へと変わった。

 一瞬、息苦しそうな顔を見せたイシャンだったが、その表情が笑みに変わる。


「見るがいい! ザルガラくん! はぁーーー、『美、すなわち素肌!』」

 イシャンが独式と思われる魔法を唱えつつ、高くジャンプした!

 放物線を描くその軌跡には、主人に取り残されるように服が並んでいく。

 下から靴、靴下、ズボン、パンツ、シャツ、上着、マント。それらを一線上の空中に残し、頂点には羽ばたくようなイシャンの姿があった。


挿絵(By みてみん)


 

 くそ……思わず、視線で追ってしまった――。


「しっかり防御したまえ! ザルガラくん!」

 すべてを脱ぎ去ったイシャンが魔力を放ち、股間がパッと輝いた。


 なぜ股間!

 いや、そこが見えなくなるからいいことか――いや、でも、それは――。うん、まあいいや見えなくなったから。

 

「『美の一撃!』」

 全裸のイシャンの胸から、強い魔力弾を放出された。

 股間から発射されなくてよかった。ほんと、良かった。


 純粋な魔力で出来た魔力弾は、4属魔法の攻撃魔法より、防御魔法への貫通力が高い。魔法防御のない相手には4属魔法で攻撃、魔法使いなど魔法で防御してくる相手には魔力弾を使うのが基本だ。

 基本であって例外もあるが、魔法使い同士の戦いでは無属性の魔力弾が飛びあうのが常である。


 常時展開している防御魔法では心もとないので、オレは新式魔法陣を投影して防護壁とした。

 あの魔法だけは喰らいたくない。


 イシャンの放った魔力弾は強力だった。

 術式と扱い方からして新式だが、威力はちょっとした古式魔法に匹敵する。いや、世間一般からすれば上回っているといっていい。

 オレの通常防御魔法と、緊急投影した防護魔法陣を13枚も吹き飛ばし、なおかつ威力を保って14枚目にぶち当たった。


「……マジかよ」

 オレやアザナが通常時に撃ち合う魔力弾と同威力。と、いって過言ではない。

 はっきり言って、イシャンの魔力弾は学生のレベルを超えていた。


「ふふふ、驚いたかね」

 全裸のイシャンが着地して、わざわざポーズを取ってから言った。

「ああ、驚いたぜ。股間が光ったときのほうが驚いたがな」

「君が驚いてくれたなら満足だ。お礼代わりとしては過激だったが、気に入ってもらえたかね?」

「股間が光ったのが一番過激だったし、気に入ってもいないが、オマエが礼をいいたくなった気持ちはわかった」

 イシャンは、純粋に魔法の力が上がって嬉しかったのだろう。喜んでいるのが、ひしひしと感じられる。


「しかし、どうしていきなりこんなに魔力が上がったんだ?」

 当然の疑問。魔力弾は術者の影響を受けやすい素直な魔法だ。簡単にいえば術者が弱っているときは相対的に弱くなるし、元気なときは強力になる。

 他の魔法が魔法陣や術式さえ整っていれば、それほど大きな差はでない。

 また、魔力弾の威力上限も、当人の魔力次第で決まる。

 つまり、イシャンはよほど絶好調だったか、基礎魔力が上がったかのどちらかだ。


「今まで、全裸になってもなーんかあんまり魔力が上がったような実感がなかったのだが――」

「なかったのに脱いでたのかよ」

「しかし、気が付いたのだ。この『美、すなわち素肌』によってすべての服を脱ぎ去った、その瞬間! 全裸になった瞬間こそがもっとも魔力が向上するのだと」

「すげぇっ!」

 すげぇバカだ。

 驚くべきバカだ。


「きっと単なる束縛からの解放感だけでなく、非日常的な瞬間脱衣がより原初の美に近づける行為だったのだろう。なるほど、衣服を脱ぐという行為は、着るという行為の積み重ねをさかのぼる行いだ。服を着るとは人類の歴史の積み重ねであり、脱ぐというのは、それらを紐解く行為。だが、人類の歴史を紐解くとは大きな所業だ。これには多大な労力を要する。しかし一気呵成に脱ぎ去る! これによって人類の進化を遡る労力を、一足飛びすることを可能にしたのだ。人類の進化を紐解く労力が軽減され、その余剰が魔力として具現したのだ! うむ、あとで卒論に纏めよう」


「ああ悪ぃ、聞かなかった」

「それは聞いてなかった――ではないのか」

 イシャンがオレにツッコミ入れやがった。


「ん? 待てよ? 全裸になる?」

 ある考えが浮かぶ。浮かんでしまった。なんで考えてしまったんだ、オレ。

 いやな考えだが、実に効果的な考えだ。

 

 敵対者の武器や防具を逆に利用してくる雑音魔法。それに対して全裸で挑む魔法使い。

 素衣原初魔法研究会――。


「もしかして――」

 こいつら、大敵者の天敵じゃねーか?



次回は、また明日更新します。

見苦しいので挿絵の解像度は低いです。

別に高画質要りませんよね?


次は出来るだけ女の子絵でいきますのでご容赦願います。予定は未定


当作品を面白い!と思われた方は、よろしかったらページ上のブックマークとページ下から評価などよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 嘘だろおいっ! こんな、こんなネタ枠がなんかすごそうな敵の天敵なんて... あんまりすぎるし、そんなんにやられるやっこさんがカワイソスwww そんで面白いですわ。執筆頑張ってくださいね。応援…
[良い点] 「は、犯人は人間ではありませんっ!」  バッ!  だからなぜ、そこでオレを見る。 これはひどいwww [一言] この小説はバスや電車の中で読むのは危険ですねw
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