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悪役は二度目も悪名を轟かせろ!  作者: 大恵
第5章 It if and only if you.
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公開評価会

「えーと、オレの評価は昼休み後に一番最初か」

「一番目なんだ! あー……でも、ぼくたち何気なく、低学年で評価トップだもんね」

「ふっ……、まあ暫定評価トップだけどな」

 長期休み開けの5日目朝、オレとペランドーはエンディアンネス魔法学園の校舎脇で今日の予定を確認していた。

 うっとうしい雨の時期も終わり、うっぷんを晴らすようにやたら天気の良い今日、これから始まる学園行事は長期休み明け恒例、課題の公開評価会である。

 教師と全校生徒と来客の前で、課題の発表をするわけだ。

 ある意味、学園のためのさらしもんだな。


 課題評価は、まずオレやアザナのような目玉生徒から行われる。これは行政へのお偉いさんのお披露目もあるんだが……、いくら歴史ある魔法学園でも王国の息がかかっている以上は、そういう人たちを招き入れて金の動きから内部の状況、生徒の出来を見せなくてはならない。

 今頃、国の偉い人などが学園に集まっている頃だろう。

 オレたちの課題を見るために、わざわざご苦労なこった。


 さて、もちろんアザナの課題も低学年組として提出されたはずだが、なぜか机上で評価が一番ではない。

 オレの課題が一番ってことは客観的に……、教師の評価基準としてはコッチの勝ちってわけだが、書類審査の上なので、ココでいい気になったらぬか喜びとなる。


 オレが一番目でアザナが二番目であることからわかるように、公開は事前の評価順なのだが、言っちゃ悪い表現で言うと、成績の悪い学生の評価は後回しというわけだ。

 出来のいい生徒の課題を上から順に公開、いまいちなのは後回しにして、お見せできないものは低評価。

 稀に事前評価は低くても、実は素晴らしい課題だったということもあるが、そんな不確定なモノをお偉いさんへ、うかつにお見せするわけにはいかない。

 オレとペランドー、そしてワイルデューと一応テュキテュキ―で作ったゴーレムの資料は、すでに提出済みである。

 教師陣はこれを書類の上で暫定評価して、改めて公開評価会を行い最終評価を下す。

 それが今日というわけだ。


 昼前は3回生から5回生までの高学年成績優秀組がお披露目し、昼過ぎはオレたち低学年の出番だ。

 しかし、なんだ。できればこの順番を逆にしたほーがいいんじゃねーかという気もする。

 オレやアザナがいるからいいが、腹一杯で眠たい時間に昼食前の見た高学年より劣る低学年の課題発表など見ても睡魔が襲うだけだ。しかも段々と課題の出来が悪くなるという苦行だ。

 毎年毎年、いままで大変だったろうな、お偉いさん。

 今はオレやアザナという目玉生徒がいるから、そうでもないだろうが。


 それに発表する生徒のほうだって、前が高評価だとやり難いだろうに。


「おはよう、ザルガラくん!」

 余計な心配をしていたら、テュキテュキことエルフのテューキーが現れた。

 朝から元気だな、さすがエルフだ。日光が出ると無駄に元気だ。

 彼女とワイルデューは4回生なので高学年だが、今回はオレ主体の課題に協力しているので低学年組として課題の公開評価会に出て……ん?


「あれ? テューキーさんよ。ワイルデューは同級生との課題で昼前も出るんだよな」

 ワイルデューは魔具製作科まっさかの仲間と作った魔具を公開するため、今はここにいない。

 テューキーも課題を公開するならば、ここには来られないじゃねーか?

 いくらちょっとおつむに足りないところがあるとはいえ、彼女は奨学金を貰って学園に招かれてる学生である。

 優秀な生徒なら、高い評価を受けるであろう課題を提出してしかるべきであるはずだ。


「うん、そうだね」

 なんか軽ぅく頷く優秀なはずのエルフさん。


「テューキーさん、あんたの課題は?」

「みんなと共同のこれ(・・)だけ」

「アンタ、仮にも4回生では指折りトップ組だろ。独自の課題くらいだせよ……。落第してもしらんぞ?」

 別に低学年の課題で評価を受けても問題ないが、奨学金を貰って孤児から出てるんだから。


「生徒会のお仕事である程度、そのへんは免除されてるしー」

「へえ、そうですかい」

 まあテューキーは、アザナほどでないにしろ天才気質だ。なんでもなにをやってもなにかと高い成績を出せる。もしかしたら頑張りすぎてトップを取ると、妬みの対象になるから加減しているんかもしれないな。

 あんまりソコをツツく気もしないので流すことにしよう。


「で、結局それ・・・・なわけね」

 テューキーが指差す先には、オレたちが作り上げた見上げるほど大きなゴーレムがあった。


 鋼色の物々しい巨体。

 鎧を着こんだ無機質な静かなる巨人。


 高さは一般家屋の屋根から頭が出るくらい。

 お屋敷ならともかく、庶民のお宅には訪問できない程度の高さだ。


 肩幅は四頭立ての馬車ほど。

 主要な区画の通りは歩けるが、幅員の狭い裏路地は歩けない程度の幅だ。


 重さはそのー……、なんていうか結構なかなか。

 補強していない床板は踏み抜いてしまう程度。だが、これはある仕掛けで改善されている。


 ゴーレムの頭の上で、タルピーが踊りを披露しているが、これを見れる存在はこの周辺にはオレとディータ以外いない。なおタルピーはまったくゴーレムに興味はないようで、踊りの台程度にしか思ってないようだ。


 一般的な魔法使い……主に街士が使役する作業用ゴーレムとは違い、形状は戦闘を行う魔法使いが使役する軍用ゴーレムに似ており、鎧でガチガチに固めたゴーレムである。

 街士が使うゴーレムは、作業能率を上げるため軽装である。鎧なんか付けてたら、ただでさえ遅いゴーレムがより鈍重となるからな。

 一方、軍用とか戦闘用となると、単に殴りに行くだけでなく、魔法使いや兵士を守って攻撃を受ける魔具ということもあり、素体も頑丈に作り、装甲に当たる外装もつけ、さらに後付で鎧を装備させることなる。


 各所に埋め込む制御用の魔胞体陣はオレが主に製作。素体はオレとワイルデューの合作。関節部はアザナのゴーレムから着想を得て、俺が製作。外装はオレとペランドーが作った。

 鎧はペランドーとワイルデューがオレの要望に応え、念入りに製作してくれた特別製だ。これはオレが作ったある仕掛けに対応している。


「うわー、強そうー」

 テューキーは小さい手で、ぺたぺたとゴーレムを触りつつ、そんな誰でもいいそうな感想を述べる。


 …………あれ?

 そういえばテューキーは何してたんだ?

 孤児院の子供たちに交じって、素材の荒加工と組み立てくらい程度の手伝いしかしていないような?

 魔法を使った素材の荒加工はまだしも、組み立てなんてネジやらリベットやら止める作業だけで、とてもじゃないが課題に協力したといえるレベルじゃないはずだ。


 うーん、でもテューキーが魔胞体石に魔胞体陣を刻み込んだところもいくつかある。……けど言われた通りにやってただけだしなぁ……。

 まあいいか。ちょっと貸しってことにしておこう。

 なんだかんだで、コイツは生徒会の副会長だし、いろいろこれから役に立つに違いない。


『……思ってたのと違う』

 オレ以外には誰にも聞こえない、何度目か分からない不満の声をディータが上げた。

 分かっているしすまないが、これはスルー。オマエのお望みになる柔らかボディは、カルフリガウに任せてある。

 

 あの天才カルフリガウなら、ディータが満足できるボディが得られるだろう。

 完璧主義すぎて、製作は遅いようだが……。


 そんな事を考えつつ、オレは公開評価会の前に、ゴーレムの頭脳に当たる胞体陣の動作チェックを繰り返す。

 ペランドーはその手伝いだ。テューキーは何もしていない……。なんかしろ、エルフ。


「やあ、ザルガラ君。これは凄いゴーレムだね」

 チェックを終えたころ、ふらりとイシャンが校舎脇にやってきた。


「あん? あー、イシャン先輩か。ちゃんと服を着てるんで誰か分からなかった。うちのゴーレムでも見に来たのか?」

「それもあるが、実は頼み事があってね。良かったら発表の手伝いをしてほしいんだ」

 魔具製作時に着る作業着姿のイシャンが、妙な事に手伝いをオレに要求してきた。


「うん? 5回生の上に就職先決まってるイシャン先輩は、ほとんど課題無しのはずじゃ?」

「今回のは素衣原初研究会の課題だよ。会員たちが新しい魔法を作ってね」

「ああ、なるほどね」

 会長を務めるイシャンだ。後輩や会員の課題を手伝ったのだろう。


「ザルガラくん。あとはぼくでもチェックできるところだから、手伝いにいっても平気だよ」

 ペランドーが気を効かせてくれた。

 ふとテューキーを見てみたが、特に反応はない。形でもいいから手伝うとか言えよ、ちびエルフ。


「よし、じゃあペランドー任せたぞ。テューキー先輩もな!」

「えーっ」

 口を尖らせ不満の声をあげるテューキー。コイツなんで生徒会副会長なんて出来てるんだ?


 2人にその場は任せ、オレはイシャンと共に公開評価会が行われてる第一実習場へと向かう。


「で、イシャン先輩。なんでまたオレに手伝いを頼むわけ?」

「それがね、この私が頼める相手で器用でありながら魔力も高いという友人が、君しかいないという状況でね。すまないな」

 道すがら訊ねて見ると、イシャンは嬉しい事を言ってくれた。

 イシャンがオレを友人として頼ってくれているとは……だが、そんな喜びを顔に出すわけにはいかない!


「ひょ……ほう。オレじゃないとダメってわけか」

「うむ。あとはアザナくんしかいないのだが……」

 ……なん……だと……?


「彼とはそこまで親しくないし……」

 う、うん、そうだった。ああ、そうだったな。


「ザルガラ君なら友人でもあるし、素衣原初研究会の課題とも無関係ではないしな」

 ……なん……だと……?


「ちょっと、待ってくれよイシャン先輩。まさかと思うが、研究会の名簿にオレの名前とか書いてないよな?」

「会員名簿かい? それは本人が書く必要があるものだから、何も書かれてないよ。なにかな? 入会するかね? 脱ぐかね?」

「い、いや、遠慮しておくぜ」

「そうか。では今まで通り特別相談役の緊急連絡先としてだけ、会報に掲載しておこう」

「会報にオレの名前載せちゃってるのかよ! ていうか、会報だしてるのかよ! ダレがみるんだよ!」

 勝手に名前載せられてることも驚きだが、会報を発行していたことにも驚きだ。

 

「誰が……か。残念ながら、会員以外は受け取ってくれないんだよ」

「……よかった」

 大げさに肩を落とし見せ、ため息をつくイシャン。その気落ちする横顔に、オレはホッと胸を撫で下ろ……。

 

「一部、君の屋敷には送ったがね」

「おいアナタなんつーことしてくれんだよっ!」

 おいおい、マジかッ!

 今頃、ティエが取ってみて卒倒してるんじゃないだろうか?

 て、待てよ?


「先輩、その会報はいつ送ったの?」

「長期休みに入る前だが?」

 おかしいな。そんなものが送られてきたとかいう話は聞かない。

 ティエが不審物として処分したかな?

 そういう処理は、あのもあって得意だからな、ティエ。




 ……処分してくれてるよね?


ティエ「なんでしょう、この封書は……素衣? の研究ですか。白い衣でも研究……(パラパラ)違うようですね、なんでしょうか、これ」

写真のない世界なので結構セーフ。


素衣原初研究会の素晴らしい課題魔法は次回!


ん?課題で評価っておかしくないか?

更新直後になんですがあとで変更します



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