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………
えー、嘘ー。
光介はただその場に立ち尽くす。
………………
………………
「えーっと、帰るか…」
一通り放心した後、帰宅の結論が出た。
もう何がなんだか分からないが、とりあえず荊さんを案内した事には変わりないのだ
「なんだか一気に疲れたなぁ」
そう呟いて、歩く。
傾斜を少し降りてから、不意にもう一度、あの立派な家を見て行こうと戻り、光介は驚愕した。
…………え?
「なんでっ!?」
その目線の先には荊さんはいない。
あるのは、変わらずこの立派な家。
そして、さっきまでなかった筈の、
荊さんの持っていた風呂敷の包みが、扉の前に置いてあった。
「荊さーん!?」
もう一度呼んでみるも、やはり返答はない。
一瞬にして不気味な空気が光介を包む。
「い、意味がわからな……」
口にしかけた言葉を遮って、頭の中にある仮説が成り立つ。
「もしかして、中?」
そうだ、もし最初の時点でいなくても、一度一周した時にすれ違いになったのだ!
呼んでも返事がなかったのは、最初は俺と同じ様に周りを見てたんじゃないか?
光介の頭の中で理屈がパズルのように組み合わさっていく。
そうだよ、荊さん疲れてたし、返事はしてても俺が聞こえてなかっただけ。
その後入れ違いになってたら、家の中なら声も聞こえてないのかも。
んで、諦めた俺を呼ぼうとしたらいないから、思わず届け物がそのまんま!
おぉー!
「俺凄い。智也並みに頭冴えてる!」
光介はなんともガサツな自分の推理を褒め、自他共に天才と認める幼馴染に自分を比喩する。
「なら話しは早い!荊さん、大事な物を置き去りに…させたのは…俺か…」
浮かれてから、落ち込んだ。
何やってんだ、俺…、謝ろう…。
光介は風呂敷まで歩いて行くと、それを拾い、玄関のインターホンを押す。
ピンポーン……あれ?
「荊さーん!」
ピンポーン……ピンポーン。
……へ?
「あれ、また入れ違い?」