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仲間


 ルービスは左で剣を抜いた。月明かりに刃が光る。すぐに周囲から剣を抜く音が聞こえてくる。男たちも剣を抜いて構えたのだろう、音の位置からすでに背後にも回られていることがわかる。

「女ひとりに7人がかり?」

 ルービスは大男を睨んだ。唯一刀を抜かない大男が制するように大きな手のひらをルービスに向けた。

「剣を納めろ、こちらは戦いたいわけではない。そっちが納めればこっちも納める」

 言いながら大男は持っていたルービスの剣を投げて寄越した。

 投げられた剣はルービスのものに間違いがないようだ。しかし、前回の痛みを体が覚えている。ルービスは恐怖で剣を納めることができなかった。

「こんなに囲まれては無理だ、そっちが先にしまって」

 ルービスの声が震えていることに気づいて、大男は周りの男たちに合図を送った。剣のしまわれる音が聞こえる。ルービスもそれを聞き届け、ゆっくりと剣をおさめる。

「荷物を調べた。あんたが言っていたことは嘘ではなかった」

 ルービスはゆっくりと投げられた剣を拾った。男たちに動きはない。

「なら荷物も返して」

「その剣はすばらしいな」

 荷物を返す気はないらしく、大男はそのまま続けた。

「あの時の身のこなしは見事だった。あそこから逃げるなんてオレでも無理だったろう。・・・きっと剣の腕も相当なんだろう?」

 ルービスはまわりの男たちの動きにも注意しながら、大男の話の意図を考えた。いったい何が望みなのか。

「それだけの美貌で腕のある剣士であれば、オレの耳に届かないわけがない。・・・一体どこからやってきたんだ?」

「あなたこそ何者なの? なぜ私を引き留めるの? 私は用はない。あなた達の事にも興味はない。誰にも言わないから、荷物を返して」

 これ以上引き延ばされるのなら、荷物にはこだわらず逃げた方がいいだろうかとルービスは考えた。しかし周りの男たちも動いている気配はない。完全に囲まれているだろうから、ここから逃げるのは難しいかもしれない。ルービスはそれでもゆっくりと後退した。

「待ってくれ。荷物は返す」

 大男はルービスが動くのを見て荷物を投げて寄越す。

 荷物の重さもあってか、剣を投げた場所よりもずっと大男に近い。ルービスは取りに行くのをためらった。

「オレはケディだ」

 大男は突然名乗った。

「赤毛のケディだ」

 どうしていいか分からずルービスは棒立ちになっていた。

 ケディは失笑したようだった。

「オレの名前を聞いても無反応か。ここいらでは有名なんだが。・・・オレたちはあんたの腕を見込んで頼みたいことがある。それであんたを捜していた」

「捜していた?」

「一文無しの女が身を隠せる場所は多くない」

 そう言ってケディは自分の剣を下に落とした。

「どうしたら信用してくれる? おい、お前らもこっちに来い」

 ケディが言うと、男たちはケディのもとに集まってくる。みんな同じように剣をおろした。

「あんたが必要なんだ。先日の非礼は詫びる。本当にすまなかった」

「私に何をさせたいの?」 

「話を聞くならやってもらう」

「ならこの話はなかったことに」

 ルービスが再び後退した。

「待て! 待ってくれ! あんたは、あんたの旅の目的は? どこに行くつもりなんだ」

「・・・白い塔を」

 ルービスは思わず口にしてしまっていた。あわてて口をつぐむ。

「白い塔? どこの?」

「関係ない」

 ルービスは今度こそこの場を立ち去ろうと後ずさった。

「必ずオレが送り届けよう。どこの白い塔でも、必ずあんたを無事に白い塔まで。約束する。オレたちはこの国のために動いている! どうしても今、力が必要なんだ。今、たった今必要なんだ! オレたちだけでは足りない! もう行き詰っている!」

 ケディの迫力に圧され、ルービスは動きを止めた。

「時間もない。どうしていいか分からなくなっていた時に、あんたが現れた! 頼む! この国のためにオレを信じてくれ!」

「この国に問題が? 聞いたことがない」

 ルービスはそう言いながらも、男たちに近づいて行った。一歩一歩、ゆっくり近づいた。

 近づくにつれ、男たちの顔が、姿が良く見えてきた。薄汚れた服、ぼろぼろの靴、皆一様に泣き出しそうな顔をしてルービスを見つめている。

 関わっていいのか悪いのか、良い人間なのか悪人なのか、ルービスには判断のしようがなかった。しかし、この男たちの信念は伝わってくる。この表情に偽りはないように思われる。問題は彼らの正義がルービスにとっての正義かどうかだ。 

(殺されそうになった相手だというのに、私は手を取ろうとしている)

 ルービスは自分の気持ちが信じられなかった。男たちに近づいた時に、もう信じようとしていたことに気づいた。

(私はバカか)

 だが、この男たちを置き去りにすることはもうできそうもなかった。


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