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支配下で支配人がダンジョンを支配する  作者: 雪ノ音
初めてのダンジョン攻略
7/46

リミット

 ハイネにレベルアップについて確認をする。

 互いにレベルが上がっていており、自分の方については1つ多く上がった事。

 それに伴い、ハイネが『レベル12』俺が『レベル3』+上乗せ分を合わせれば『15』である事。

 これについてはハイネの話によると、この『アビスの館』だけでなく、他の『支配人』も複製上乗せであるスキル、通常は『ブースト』言うらしいのだが、『支配人』であれば当たり前に使えるスキルらしい。


 またレベルの上昇については俺の予想はあたっていた。

 やはり強敵との戦いが経験値に反映される。

 支配人については基本レベルから見た差が反映される為、ブーストの上昇分は無視されると言う。

 つまりは――

 

「支配人はレベルが上がりやすいという事になるのか?」

「そういう事になるかと思います。と言っても私も話に聞いただけで、ここが初めての雇い先になるので、実際に確認するのもクロスさんが初めてになります」


 十分だった。

 2人だけとはいえ、戦い続けていれば当然レベルは上がる。

 尚且つ、支配人スキルのブーストがあれば思った以上に楽な方向に動き出すだろう。


「ここで魔神を倒せるようになるまでレベルを上げれば大丈夫という事か?」

「それは難しいかと思います」

「えっ? どういうことだ?」


 ハイネから告げられた事は、生まれ始めた希望をあっという間に無に帰す内容であり、更に追い詰められた現状である事を思い知らされた。


 その問題は食糧。

 現在、非常食として所持している量では2日分しかない事。

 もちろん「狩り」は提案した。しかしそれが不可能であることを聞かされる。

 外界と違い、ダンジョン内にいる魔物は、魔神達の魔力によって生み出されたものだと言う。

 倒したところで残るのは魔物の元である魔石のみ。肉体が残る事は基本的にないらしい。

 もちろん、ダンジョン内にも果実等があるにはある。

 ただし、それらは市場で高値で取引されるほどにレアアイテムらしく、安易に見つかる物ではないらしい。


 説明からすれば2日、上手く行っても3日が限界だという事。


「もちろん、昨日の様にぎりぎりの戦いを続ければ、それだけ早い上昇が見込めますが……」

「常に命をベットした戦いは無理があるか」


 といっても、何をするにしてもレベル不足である事は間違いがない。レベルアップが選択肢を増やすのであれば無駄な事ではない。


「とにかく、今日はレベルアップを目指して行動を起こす事にしよう。もちろん、その過程で食料が手に入るなら其方を優先する。今後の作戦については今日の結果次第。明日の事は明日考える方向でな」

「分かりました。雇い主であるクロスさんに従います」

「あ、ところで……雇い主である俺が言うのも何だけど、ハイネの報酬ってどうすればいいんだ?」

「えっ?」

「へっ?」


 そんな事は確認もせずに、呼び出された当日に様子見もかねてダンジョンに突入したのだ。

 もちろん、館の主である『異神アビス』に聞くべきだったかもしれない。

 しかし、自分を身勝手に召喚しておいて、こちらの命を盾に戦いを強要するような奴の言葉など信じられるだろうか?

 信じる方がどうかしている。


 第一に神ってなんだ?

 これまでの人生で神なんて俺は見た事がない。存在すらも感じた事がない。神の名を使って争いをする馬鹿は何万人何十万もいる。でも神の加護で助かった人間なんて聞いたことがない。


 それが突然現れて神だの館だのダンジョンだの言われれば猜疑心が生まれるだけだ。

 どこまで信用していいのか判断するよりも、同じ人間から情報を得るなり、自身の目で確認する事の方がよほど信用が出来る。


「えっと、ご存じないのですか?」

「す、すいません」


 ここは素直に謝るべきだ。


「私よりも知識が少ない支配人の方がいるとは思いませんでした」

「もうしわけありません……」


 やっぱり謝るしかない。


「普通は準備をしっかりしてから行動するものではないのですか?」

「ごめんなさい……」


 謝る。


 ハイネからの追い込みはしばらく続いた。

 言葉を変えながらも謝り続ける俺の姿は、女上司に叱られる若手部下の状態だ。

 確認しておくが、俺が支配人で雇い主だった気がするのだが、もしかすると勘違いだったのだろうか? 


「とにかくです。ここを出たら勉強会を開きましょう!!」

「はっ、はいっっ!!」


 昨日の出来事から、心の中では彼女を「お漏らしノーパン女」もしくは「格闘魔女」などの2つ名を思い浮かべていたが、どうやら「スパルタ女上司」もしくは「鉄拳ママ」の方が似合いそうだ。もちろん、これを口にするつもりなどない。彼女の拳は痛いのだ。


「後、報酬は魔物から取れる魔石で支払って頂ければ結構です」

「魔石か……ゴブリン達からも回収出来たのか?」

「はい。もちろん回収してあります。脱出後にお渡しします」

「分かった。じゃあ、出来る限りレベルアップを目指そう!」


 ワザとらしくも強めに決意を言葉にする。でないと立場が逆転されかねない。

 返ってきた頷きを見る限り、目的へ向かう意思は共通である事は間違いない。

 2つ名も勉強会も帰ってからだ。

 

 とにかく、今日の結果次第で明日の行動が決まる。

 出来る限りレベルを上げなければいけない。

 例え、現在は脱出成功率が1%程度であっても、その確率を上げる為の行動に意味はあるはずだから。

 そう、ここからが本当のダンジョン攻略の開始だ。

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