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支配下で支配人がダンジョンを支配する  作者: 雪ノ音
支配人達の宴
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心なき暴力

 あの竜が指示していた場所には確かに魔物達の巣があった。

 ただ予想とした事と違う状況に陥っていた。


「なんだよっ、これは!?」

「口を動かさないで体を動かしてください!」

「でも、これだぜ!」

「それで状況が変わるならっ、いくらでもどうぞっ!」


 そこまで言われては口を結ぶしかない。


 今の状況を説明するなら「嵌められた」というべきだろう。

 目的の場所に辿り着いた2人は軽い気持ちで巣穴へと足を進めた。

 訓練というからには適切な相手がいるものだと思っていたからである。

 だが、10歩も中に進まないうちに、それが大きな間違いだったと理解させられた。

 確かに魔物と言える敵が居るには居たのだが、相手が悪かったからだ。


 その彼等、いや、この場合はこいつ等? 違う、これと呼ぶのが正解な気がする。なぜなら、相手が生き物と呼べるモノではないだから仕方がない。


 ここへ最初に突入した時に周囲には武器や防具などの装備品だけが転がるように散らばっていただけだった。

 恐らくはここで死んでいった冒険者達の残留物だったのだろう。

 よく見てみれば、衣類の切れ端らしき物もチラホラ見えている。


 ただ、その時まではクリカラの奴が言っていたようなモンスターらしき気配も感じなかった為、油断していたというのも確かにあった。

 しかし、それが間違いである事が判明したのは数秒後。


 突然、肌を舐められるような気持ちの悪いものを感じた時だった。

 自分達が歩いてきた背後の通路に何か、乾いた物が重なり合うような音がいくつも聞こえたと思ったら、相手は現れていた。


 彼らを簡潔に言葉にするなら「骨」――動く骨。

 一般的にはアンデットと言われる部類のモンスターにはいるだろう。

 所々に土が付いている様子が見て取れる事から、地面の中に隠れていたのだろう事は予想できる。


 そして当初は5体程度だった彼らは、その予想を証明するように更に地面から湧き出るように増殖していく。

 遠慮もなく徐々に数を増やし続ける彼らは最終的には、こちらの10倍近くの戦力を形成した。


 膨れ上がった骨どもは、元々、自分たちの体の一部であったかのように周辺にある武器を手に取ると「生ある者が憎い」とばかりに遠慮なく敵意を向けてきたのだ。

 


 ――そして、この状況というわけである。

 もちろん、サードアイでの確認は終わっている。

 あまり良い結果ではないが、絶望的とは言えない。

 ただ、あくまでも「これまでの状況」と比較すればいう言葉を付け加える必要はある。


 種族  『スケルトン』

 レベル 『15~18』

 戦闘力 『高い』

 使用魔法『なし』

 スキル 『武器装備』

 その他 『アンデット』


 レベルも数も有利なのは相手の方。

 近い状況は経験しているが武器を取り上げられている無手の俺と相棒が元魔女となると話は別だ。

 恐らく、未知の戦いへと足を踏み入れることになる。


 修行とはいえ、クリカラはやりすぎではないだろうか?

 これでは修行どころか生死を賭けた戦いである。

 しかし背後の退路は絶たれており、やるしかない状況に追い詰められている。


「レベル的にはどうなんですか!?」

「多少、相手の方が高いくらいだ。でも……何とかするするしかないよな」

「ちょっと厳しくないですか! せめて、クロスさんも転がっている武器を手に取って!」

「その役割はハイネに任せるよ。俺は出来るところまで無手で頑張ってみる」


 彼女は少々こちらの言葉に呆れながらも、遺品として転がる片手剣を拾い上げる。

 構えるその姿が素人に近い俺から見ても違和感があるが指摘している余裕はない。


 骨たちもこちらの戦闘意思が強くなったのを確認したかのように襲い掛かってくる。

 その動きには無秩序で連携が見られず動きにも洗練さがない。

 ただ武器を振り下ろすだけの単調な攻撃。

 初期の頃に戦ったゴブリン達と違い、集団の意味を理解する脳みそがないからだろうか?

 おかげで一つ一つの動きに隙があり、回避に徹すれば何とかなりそうではある。


 ハイネの方も同じ事が頭を廻ったのだろう。

 武器を振りかぶる様子もなく、視線は相手の動きに集中しているようだ。


 とりあえず俺も避ける、交わす、後退を優先する。


 こちらとしては、たったこれだけの行動を繰り返していただけ。

 通常であればジリ貧の状況ではあるが、何かが起こりそうな予感がする。


 そしてそれは間違いでない事が数分後に証明される。

 無秩序な動きを繰り返していた彼らは時間の経過と共に仲間同士の間に大きな乱れを生み出していた。


 考えてみれば当然かもしれない。

 例えば、縦への攻撃であれば問題がないが、横へ攻撃の場合に周りとの連携がないのだ。それは仲間を巻き込む行為に繋がった。


 もしこれが、広い場所なら起きなかった現象かもしれないが、スペースの限定されている巣穴、いや、この場合は彼らの眠っていた墓場というべきか、この場所は20体が無秩序に動くには狭すぎたのである。


「これは思っていた以上に不利ではないようですね」

「確かに動きも単調で全くとは言わないが怖さがないな」


 もちろん相手は武器を持っているのだから、当たればタダでは済まない。

 だが、次の攻撃が分かるような予備動作と仲間同士で邪魔しあっている状況では”怖さ”がなくても仕方がない。

 どちらかといえば、こちらの攻撃が相手に通じるかの方が今は大きな問題かもしれない。


「とりあえず、回避前提で攻撃を仕掛けてみようか」


 俺の提案に問題はないという意思を、一つの頷きのよって彼女は了承してきたのだった。

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