妹と甥
国王陛下に承認を受けレディ・ロベルティーネが結婚した。年齢が年齢なので、とひっそりと結婚式は行われ、レディ・ロベルティーネの花婿が周囲に知れ渡る事になったのは1ヶ月も経ってからだった。レディ・ロベルティーネのただ一人の妹ですら知らず、息子と共に館へやってきたのだ。
「騒がしい事、何の用です?」
すらりとした年月が経とうとも社交界の花と謳われた姿態を保ったままのレディ・ロベルティーネがシンプルでありながらも気品のあるドレスを身に纏い、ふくよかな女性の前に現われる。昔は愛らしかった少女も年月と共に姿を変えてしまった。レディ・ロベルティーネには劣っていたが、それでも愛らしさがあった美貌も衰え、今では見る影もない。
「…何の用です、ではありませんわ、お姉さま!!」
きーんと響くような金切り声にレディ・ロベルティーネはやや眉を顰める。溜息を一つ吐くと館の中へと身振りで誘う。
「ここは貴女の育った館ではあるけれど、もう嫁いだ身なのですから、突然の訪問は非礼に当たってよ?」
聞く筈もないが、言っておかねばと一言だけそう釘を刺す。母親の後からついてくる甥の姿をちらりと視界に止めつつ、応接間へ案内すると、そこには既にティーセットの用意がなされていた。
「お姉さま!結婚なさったってどういう事なんですの!?」
応接間に入った瞬間詰め寄ってきた妹の姿に溜息を吐く。視線を妹と甥へ流し、椅子へ座るとあっさりとした口調で話す。
「どういう事もないでしょう、そのままですよ」
ティーポットから直接自分で紅茶を注ぎ、ゆったりと味わう。そんなレディ・ロベルティーネの様子に妹は目を吊り上げる。
「そのままって!!爵位はどうなるんです!?このアルトゥールがいるって言うのに!!」
自分の息子をずいっと前に押し出しそう叫ぶ妹をじっと見つめる。甥も困ったような表情を浮かべているが否定はしない。レディ・ロベルティーネはカップをテーブルに戻し、静かな口調で答える。
「伯爵家の事は嫁いだ貴女には関係ありません。それにアルトゥールは貴女の息子で子爵家の跡取りでしょう?」
のんびりのんびり過ぎてすみません。
次回は花婿さま登場予定です。