帰宅後のDM
家に着くと、玄関で靴を脱ぐ手が少し震えている。
手に握ったスマホの画面を何度も確認するけど、あかりからの返信はまだ来ていなかった。
「……なんでこんなにドキドキするんだろ」
小さく呟く。胸の奥のざわつきが、まるで鳴り止まない波のように押し寄せる。
同担拒否のルールを守ろうと必死なのに、心は正直で、嬉しかった感情がそのまま残っていた。
リビングを通り抜け、自室へ向かう。
部屋のドアを閉めると、周りの音はすべて消え、ボクとスマホだけの世界になった。
深呼吸をひとつ。
そして、あかりにDMを送る。
「今日は、本当にありがとう。楽しかった……」
送信ボタンを押す手が、少し震えた。
すぐに返事が来る。
『ボクさんも!今日は隣で見れて嬉しかった♡』
画面越しでも、あかりの笑顔が浮かぶ気がする。
ボクはスマホを握りしめながら、少しだけ笑った。
でも、心の中のもう一人の自分がささやく。
――同担なんだから、これ以上近づいちゃダメだ。
けど……楽しいんだよ。楽しくて、嬉しくて、もっと知りたい。
ボクは、あかりのことを考えながら机に座り、ペンライトを握ったまま手のひらを見つめる。
昨日までの自分なら、絶対にこんな感情を認めなかった。
でも今は……少しだけ、特別なものとして受け入れていた。
しばらくして、あかりが送ったスタンプが画面に現れる。
笑顔の顔文字と、キラキラしたハート。
その小さな表現に、ボクは思わず胸が熱くなる。
「……なんで、こんなに嬉しいんだろ」
呟く声は小さいけれど、確かに自分の胸に響いた。
ボクはそのままスマホを置き、窓の外を見上げる。
春の夜風がカーテンを揺らし、遠くの街灯が柔らかく光っている。
あかりも同じ空を見上げているのかな、とぼんやり考えるだけで、胸の奥が温かくなる。
その夜、ボクは少しだけ自分に正直になった。
「……あかり、特別なんだ」
まだ距離はあるけれど、心は確実にこの子に向かっている。
同担拒否のボクが、初めて“この子と特別に繋がっていたい”と思った夜だった。
スマホの画面を閉じ、ベッドに沈み込む。
今日の余韻が、胸の中で静かに温かく広がる。
――この気持ちをどう表現すればいいか、ボクにはまだわからない。
でも、確かなのはひとつ。
あかりと過ごす時間は、楽しくて、特別で、心が震える。
夜の静けさの中、ボクの胸の奥は、少しずつ揺れ続けていた。




