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同担拒否は、ホントは拒否したくない!  作者: 櫻木サヱ
彼女は私の敵

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6/13

イベントの後で

週末の朝。カーテン越しの光は柔らかく、春の匂いを運んでくる。

 ボクは制服の上に軽くカーディガンを羽織り、手元にチケットとスマホを握りしめていた。


 「……今日か」

 小さく息を吐く。心臓が、胸の奥で早鐘を打つ。

 同担拒否のボクが、同じ推しを愛するあかりと会う日。

 頭では「落ち着け」と言い聞かせるが、胸の奥のざわつきは止まらない。


 


 会場に足を踏み入れると、熱気が体中を包み込んだ。

 歓声、光の波、ペンライトの揺れる光――まるで空気そのものが震えている。

 ボクは深呼吸をひとつして、手のひらの汗を拭った。


 スマホを開くと、案の定あかりからDMが届いていた。


 『ボクさん、見つけたかも!同じブロックだね!』


 ――えっ、隣!?

 指先が自然と震える。送信ボタンを押すべきか、悩んでいる間にも心臓は暴れまくっていた。


 結局、ボクは小さくスタンプを送った。

 “リアルに近いけど、距離感は守る”

 自分なりのルールを思い出しながら、深呼吸。


 


 ライブが始まる。蒼真くんの声が会場中に響き渡り、胸の奥をくすぐる。


 「皆さん、準備はいいですか?今日は一緒に楽しみましょう!」


 歓声が波のように押し寄せ、ボクも思わずペンライトを振る。

 隣で揺れるあかりのペンライトも見えた。声は聞こえないけど、DMで『きゃー!楽しすぎる!』と送られてくる。


 ボクは思わず笑みがこぼれる。

 “同担”のこの子と、同じ空間で同じ推しを応援している――ただそれだけで、胸がじんわり温かくなる。


 


 曲の合間、蒼真くんのトーク。


 「皆さん、最近ハマっていることはありますか?」


 周囲が歓声で答える中、ボクはスマホを開き、あかりに返信する。


 「ボクは……やっぱり、ラジオかな」


 すぐに返事が来る。

 『やっぱり!ボクさんらしい〜』


 画面越しでも、あかりの笑顔が浮かぶ気がする。


 


 次の曲は、蒼真くんの代表曲のひとつ。会場の熱気はさらに高まる。

 ペンライトの光の海に、ボクもあかりも完全に包まれていた。

 その瞬間、ボクはふと心の中で考える。


 ――この子と一緒にいる時間、なんでこんなに楽しいんだろう。

 でも、同担だから……ドキドキするのはまずいはずなのに、体が勝手に反応する。


 


 ライブ終了のアナウンスが流れる。

 蒼真くんの声は最後のあいさつ。


 「また次回も、一緒に楽しい時間を過ごしましょう!」


 会場の熱気はまだ消えない。ボクはスマホを握り、あかりにDMを送った。


 「今日は、楽しかった……ありがとう」


 すぐに返事が届く。

 『ボクさんも!隣で見れて嬉しかった♡』


 胸の奥がじんわり熱くなる。

 “同担拒否”のボクなのに、この子と過ごした時間は自然に嬉しくて、特別で、たまらない。


 


 帰宅途中、夕陽が街をオレンジ色に染める。

 ボクはふと呟く。


 「……あかり、特別かも」


 まだ距離は遠い。

 でも、心は確かにこの子に向かっている。


 春の風が、少し冷たくカーテンを揺らす。

 ボクの胸も、少しずつ揺れていた。


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