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同担拒否は、ホントは拒否したくない!  作者: 櫻木サヱ
彼女は私の敵

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夜のTalkroom

放課後の自室。窓から差し込む夕陽が、オレンジ色に机を染めていた。

 ボクは机の上にスマホを置き、画面を開くかどうか迷っていた。


 ――あかりからDMが届いている。


 指先が震える。

 “同担拒否”のルールを守りたい自分と、好奇心でいっぱいの自分が、頭の中でぶつかっていた。


 「……見ちゃおうかな」

 小さく呟き、ついに画面を開く。


 


 『今日のラジオ、一緒に聴きませんか?』


 文字は短いのに、胸に刺さる。

 同じ時間を共有する、たったそれだけで心臓が速くなる。


 ボクは深呼吸をしてイヤホンを耳に差し込み、アプリを起動した。

 ふと、机の上の蒼真くんのグッズに目をやる。

 ――ああ、こんなに近くで同じ空間を感じられるのって、推し活だけなんだよな。


 


 ラジオの声が、耳の奥に柔らかく届く。


 「こんばんは、日向蒼真です!今日も楽しいラジオの時間、始めていきましょう!」


 画面をチラッと見ると、あかりからすぐコメントが届いていた。


 『ボクさん、こんばんは!今日も楽しみ〜』


 ――元気だな、この子。

 思わず口角が上がる。

 でも、同担なんだから……心を乱されてはいけない。


 


 ラジオの最初のテーマは、「春の推し活エピソード」。

 蒼真くんの質問が画面越しに流れる。


 「皆さん、推しの一番可愛い瞬間ってどんな時ですか?」


 ボクは手元でスマホを握りしめる。

 あかりはどんなコメントを送るんだろう……。

 想像しただけで、胸がじんわりと熱くなる。


 しばらくして、あかりのコメントが流れた。


 『絶対、「照れ隠しの声」ですよね!』


 ――やっぱり同じ感覚だ。

 ボクも迷いながら、画面に指を伸ばす。


 「……ボクも、そう思う」

 送信ボタンを押す手が少し震えた。


 


 ラジオが進むにつれて、二人のコメントは少しずつ絡み合う。

 小さなやり取りだけど、同じタイミングで反応している瞬間に、心がざわつく。


 「送ろうか、やめようか……」

 ボクの頭の中で何度も葛藤が起きる。


 でも、送らずに見ているだけの自分も、どこか寂しい気がした。


 


 やがて、ラジオが終了の時間を迎える。

 蒼真くんの声が最後のあいさつを告げる。


 「また次回も、皆さんと一緒に楽しい時間を過ごしましょう!」


 画面を見ると、あかりのコメントが最後に残っていた。


 「またラジオ聴こうね、ボクさん!」


 ボクはスマホを握りしめ、思わず笑みがこぼれる。

 同担なのに、こんなに嬉しい気持ちになってもいいのだろうか。


 


 窓の外で、春風がカーテンをそっと揺らす。

 ボクの心も、知らぬ間に揺れていた。

 “同担拒否”のルールが、少しずつ壊れていく――そんな感覚が、胸の奥に広がる。


 「……あかりのこと、もっと知りたい」


 小さく呟いたその言葉に、自分でも驚く。

 まだ距離は遠いけれど、ボクの心は、少しずつ彼女に近づきつつあった。


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