DMの“はじめまして”
放課後、帰宅してスマホを手に取ると、あかりからDMが届いていた。
通知音が鳴るたびに、胸の奥がきゅっとなる。
「昨日は隣で楽しかったです!ボクさんの推し知識、すごくて……またお話したいです」
――“ボクさん”って。
自分の名前をこう呼ばれると、妙に照れてしまう。
しかも“推し知識、すごい”って……ボクのこと、ちゃんと見てたんだ。
思わず、画面をじっと見つめる。
返信する手は震えて、なかなか文字が打てない。
ボクは深呼吸してから、ようやくタイプした。
「こちらこそ。楽しかったです。ボク、まだあまり話したことないから……」
送信ボタンを押すと、すぐにあかりから返事が来た。
「じゃあ、よかったら今日のラジオ、一緒に聴きませんか?」
――一緒に、って……?
思わず心臓が跳ねた。
拒否したいのに、同時に“行きたい”って思う。
ボクのルールは、少しずつ、確実に揺らいでいく。
ボクは窓の外を見た。
春風がカーテンを揺らす。
なんでもない日常が、昨日のイベントと、あかりの存在によって色づいて見える。
「……わかった。聴こう」
タイプして送信した瞬間、胸の奥がじんわり温かくなった。
返事がすぐ返ってきた。
「やった!楽しみ〜」
その軽やかな文字を見て、ボクは笑った。
“同担拒否”のはずなのに、あかりと過ごす時間を、心のどこかで楽しみにしている自分がいた。
夜、ラジオを聴きながら二人でコメントを送る。
同じ番組を同じタイミングで聴いて、同じ感想を言う。
それだけで、ボクの心は少しずつほどけていく。
“同担”という壁は、まだそこにある。
でも、昨日より今日、ボクは気づいていた。
――ボクは、この子と話すのが、嫌じゃない。
むしろ、少し嬉しい。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
“同担拒否”のボクが、初めてその気持ちに気づいた瞬間だった。
そして、ボクは心の中で小さく呟いた。
「……ボク、あかりのこと、もっと知りたいかも」




