初めての推しイベント、ふたりの距離
土曜日の朝、ボクは緊張で目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込む光も、部屋の空気も、なんだか今日だけ特別に感じる。
“今日、夏海さんに会える――!”
布団の中で飛び跳ねそうになる心臓を押さえながら、急いで準備する。
制服じゃなく、推し活用のイベント服。
鏡の前で髪を整え、手首のブレスレットを確認する。
小さなアイテム一つでも、夏海さんに見せるための準備になる気がする。
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集合場所に着くと、すでに人がたくさん集まっていた。
でもボクの目は自然と夏海さんを探す。
人混みの中で、あの子を見つけた瞬間、息が止まった。
「……夏海さん!」
手を振ると、夏海さんもすぐに気づいて笑った。
笑顔が太陽みたいで、胸がぎゅうっと締め付けられる。
「みおちゃん、来てくれたんだね」
その声、耳に残るだけで、身体中の血が一気に沸騰する。
「うん!今日、楽しもう!」
思わず、声が弾んでしまった。
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イベント会場に入ると、推しの声優さんたちが登場している。
周りの歓声もすごいけど、ボクの視界は夏海さんに集中していた。
距離が近いだけで、手が触れそうで、心臓の鼓動が暴れる。
夏海さんも、ボクの手を握ってくれる。
手の温度が伝わるだけで、緊張と幸福感が入り混じって、全身がじんじんする。
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ステージが始まると、推し声優のトークに笑いながらも、ボクは時々夏海さんの顔をチラ見する。
楽しそうに笑うあの表情を見ているだけで、胸が熱くなる。
そして、ボクの手をギュッと握り返してくれる。
言葉はいらない。
ただ手を握り合うだけで、会話のすべてになる。
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途中の休憩時間。
ふたりで並んで座り、缶ジュースを手に取る。
ボクは小さく呟く。
「……夏海さん、今日、来てよかった」
「あ、ボクちゃん……」
夏海さんの声が少し照れて震える。
耳まで赤くなっていて、ボクの胸は破裂しそうになる。
「ボクも、来てよかった」
思わず笑顔になる。
心臓の高鳴りが、手と手を通じて伝わる。
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イベントが終わりに近づくと、ボクは少し寂しくなる。
でも、夏海さんが隣にいてくれるだけで、安心感が湧く。
「……ねぇ、次のイベントも、一緒に行く?」
勇気を出して聞く。
夏海さんは小さく頷いて、目を輝かせた。
「もちろん。ボクちゃんとなら、ずっと一緒に楽しみたい」
その一言で、ボクは全身の力が抜けるようにリラックスした。
胸いっぱいに、幸せが広がる。
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帰り道、手をつないで歩きながら、ボクはそっと心の中で誓った。
“これからも、ずっと一緒にいたい”
手のぬくもり、笑顔、声、そして小さな秘密――
全部が、ボクにとっての宝物になる。
初めての推しイベントで、
恋も友情も、そして推し活も、
全部が詰まった特別な一日だった。




