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同担拒否は、ホントは拒否したくない!  作者: 櫻木サヱ
彼女は私の敵

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14/19

初めての推しイベント、ふたりの距離

 土曜日の朝、ボクは緊張で目が覚めた。

 カーテンの隙間から差し込む光も、部屋の空気も、なんだか今日だけ特別に感じる。


 “今日、夏海さんに会える――!”


 布団の中で飛び跳ねそうになる心臓を押さえながら、急いで準備する。

 制服じゃなく、推し活用のイベント服。

 鏡の前で髪を整え、手首のブレスレットを確認する。

 小さなアイテム一つでも、夏海さんに見せるための準備になる気がする。



 集合場所に着くと、すでに人がたくさん集まっていた。

 でもボクの目は自然と夏海さんを探す。

 人混みの中で、あの子を見つけた瞬間、息が止まった。


 「……夏海さん!」


 手を振ると、夏海さんもすぐに気づいて笑った。

 笑顔が太陽みたいで、胸がぎゅうっと締め付けられる。


 「みおちゃん、来てくれたんだね」

 その声、耳に残るだけで、身体中の血が一気に沸騰する。

 「うん!今日、楽しもう!」

 思わず、声が弾んでしまった。



 イベント会場に入ると、推しの声優さんたちが登場している。

 周りの歓声もすごいけど、ボクの視界は夏海さんに集中していた。

 距離が近いだけで、手が触れそうで、心臓の鼓動が暴れる。


 夏海さんも、ボクの手を握ってくれる。

 手の温度が伝わるだけで、緊張と幸福感が入り混じって、全身がじんじんする。



 ステージが始まると、推し声優のトークに笑いながらも、ボクは時々夏海さんの顔をチラ見する。

 楽しそうに笑うあの表情を見ているだけで、胸が熱くなる。

 そして、ボクの手をギュッと握り返してくれる。

 言葉はいらない。

 ただ手を握り合うだけで、会話のすべてになる。



 途中の休憩時間。

 ふたりで並んで座り、缶ジュースを手に取る。

 ボクは小さく呟く。


 「……夏海さん、今日、来てよかった」


 「あ、ボクちゃん……」

 夏海さんの声が少し照れて震える。

 耳まで赤くなっていて、ボクの胸は破裂しそうになる。


 「ボクも、来てよかった」

 思わず笑顔になる。

 心臓の高鳴りが、手と手を通じて伝わる。



 イベントが終わりに近づくと、ボクは少し寂しくなる。

 でも、夏海さんが隣にいてくれるだけで、安心感が湧く。


 「……ねぇ、次のイベントも、一緒に行く?」

 勇気を出して聞く。


 夏海さんは小さく頷いて、目を輝かせた。

 「もちろん。ボクちゃんとなら、ずっと一緒に楽しみたい」


 その一言で、ボクは全身の力が抜けるようにリラックスした。

 胸いっぱいに、幸せが広がる。



 帰り道、手をつないで歩きながら、ボクはそっと心の中で誓った。


 “これからも、ずっと一緒にいたい”


 手のぬくもり、笑顔、声、そして小さな秘密――

 全部が、ボクにとっての宝物になる。


 初めての推しイベントで、

 恋も友情も、そして推し活も、

 全部が詰まった特別な一日だった。


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