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同担拒否は、ホントは拒否したくない!  作者: 櫻木サヱ
彼女は私の敵

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13/13

恋と推しと、初めての“秘密”

カフェを出た後、街は夕暮れ色に染まっていた。

 ボクと夏海さんは、手をつないだまま歩いている。

 歩幅を合わせているわけじゃないのに、不思議と呼吸が合っているような気がした。


 「……みおちゃん、今日のこと、誰にも言わないでね」

 夏海さんの声は、耳元で柔らかく震えた。


 「……うん」

 思わず頷く。胸が高鳴って、言葉が震える。


 “秘密”

 その言葉だけで、世界が一気に特別になる。

 ボクたちは、同じ気持ちを抱えている。

 でも、それはまだ、誰にも見せてはいけない、秘密の温度。



 帰り道、信号で立ち止まる。

 ボクはふと、夏海さんの手を握り返した。

 手のひらの温かさが、冬の風を遮る小さなシェルターみたいに感じる。


 「……ねぇ、夏海さん」

 声が小さくなった。

 でも、言わずにはいられない。


 「……ボク、あの……同担拒否、やっぱり嘘だったのかな」

 心臓が痛いくらいドキドキする。

 まさか、こうやって直球で聞く日が来るなんて、思ってもみなかった。


 夏海さんは少し顔を赤らめて、目を逸らす。

 それでも手をぎゅっと握ったまま、少し笑った。


 「……ボクちゃんには、もう拒否する理由なんてないよ」


 その言葉だけで、胸の中の壁が少しずつ崩れる。

 ボクはただ、そっと笑うしかできなかった。



 街灯の下、ふたりの影がぴったりと重なる。

 手を握るだけで、心拍が早くなる。

 まるで、世界のすべてがこの瞬間のために準備されていたみたいに。


 「……ねぇ、土曜日のイベント、もうすぐだね」

 ボクは小さく話題を変える。

 まだ、あの空間の魔法に酔いしれたままだから、直接は言えない。


 「うん。楽しみだね」

 夏海さんも微笑む。

 その笑顔に、ボクはますます胸が熱くなる。



 帰宅したボクは、部屋でスマホを開く。

 ラジオやDMのやり取りもいいけど、やっぱり、今日の“生の夏海さん”が一番だ。

 触れた手の温度、囁いた声の震え、笑った目元。

 全部、記憶の中に焼き付けるしかない。


 そして、画面に向かってそっとつぶやく。


 「……ボク、絶対、また会いたい」


 秘密の共有、手の温度、初めて感じた恋心――

 全部が、胸をぎゅっと締め付ける。

 でも、こんな感覚、きっと嫌じゃない。

 むしろ、もっと感じていたい。



 夜が深くなる。

 布団に入っても、手のひらの感触がまだ残っている。

 まるで夏海さんがそばにいるみたいで、眠れないくらいに、心臓が早くなる。


 「……あぁ、土曜日まで待てるかな、ボク……」


 小さな声でつぶやき、ボクはそっと目を閉じる。

 夜の闇に、胸の奥の温度だけが、静かに揺れていた。


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