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同担拒否は、ホントは拒否したくない!  作者: 櫻木サヱ
彼女は私の敵

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10/13

朝の通知と、止まらない心拍

目覚ましより早く目が覚めた。

 理由なんて考えるまでもない。

 脳がずっと “SN” の投稿を反芻しているせいだ。


 昨日の夜、あのラジオで読まれた文章。

 “ボクって一人称の子”

 “胸の奥が熱くなった”


 思い出すだけで、布団の中でひとりジタバタ転がりたくなる。

 変な声を出しそうになって、枕に顔を押しつける。


 「うあああぁぁぁぁ……っ。落ち着け、ボク……ッ」


 布団の中で悶えていたら、スマホが震えた。

 寝ぼけまなこで画面を見る。


 ──【SNS:新しいDMが届いています】


 心臓が跳ねた。

 もう名前を見る前からわかる。

 あの人だ。

 夏海なつみさん。


 喉がキュッと締まる感覚のまま、通知をスライドする。



【夏海】

《おはよう。昨日の帰り、すごく疲れてたみたいだったけど、大丈夫?

 無理してない?》



 優しい。

 なんでこんなに優しいの。


 たった一行ずつ丁寧に気を遣った文章。

 やわらかい声で話しかけられたみたいに胸がじんじんする。


 ボクは枕を抱きしめたまま、返信画面を開く。



【ボク】

《だ、だいじょうぶです!昨日はちょっと緊張してただけで……!

 夏海さんこそ、昨日遅くまでラジオ聴いてましたよね?眠れてますか?》



 ほんとは “緊張してた” だけじゃない。

 “あなたが投稿読まれるかどうか気になって一晩中ひっくり返ってました” の間違い。


 送ってしまったあとで、変に丁寧に書きすぎたことに気づいて、布団の中でまた悶えた。


「やだぁぁぁ!もっと自然に書けばよかったぁぁ!」


 いつもはもう少しライトに“ボク”を演出できるのに……

 相手が夏海さんだと、全部狂う。

 心拍数まで勝手に上がる。



 すぐに返信がきた。

 この“すぐ”が異常にうれしい。



【夏海】

《ラジオ……聴いてたんだ?

 ……昨日の投稿、どうだったかな。感想、聞きたい》



 ボクは一気に体温が上がるのを感じた。


 “昨日の投稿”

 わざわざ言うってことは……

 やっぱり、あれはボクのことなんだ。


 慎重に、慎重に言葉を選ぶ。

 でも指が震える。

 画面に映る自分の入力文字が揺れて見える。



【ボク】

《すっごく……ドキッとしました。

 あの……“ボク”のとこ。

 誰のことかなって、ずっと考えてました》



 ここまで送って、手が止まった。

 “ボクのことですよね?” って聞けば早いけど、それは違う。

 そんな直球を投げられるほど強くない。

 臆病で、臆病で、でも少し踏み込みたい。

 そういう距離感にいたい。


 送信ボタンを押す指が汗ばんだ。



 返事は……こなかった。


 3分。

 5分。

 8分。

 いつもより遅い。


 “あ、困らせた……?”

 胸がざわざわし始めたとき、ようやく通知が鳴る。



【夏海】

《……続きは、会って話したい。

 今日、時間ある?》



 “会って話したい”

 “続きは”

 “今日”


 脳が一瞬でショートした。


 会う……?

 今日……?

 え、待って、心の準備っ……!


 布団の上で跳ねるみたいに起き上がった。


 「な、な、な、なんで今日……!?いや、うれしいけど!」


 スマホを胸に抱えたまま、ボクはしばらく固まった。

 でも返信はすぐ返さなきゃ、変に思われる。


 震える指で打つ。



【ボク】

《あ、会えます……!どこで?》



 送信してしまった瞬間、部屋に沈黙が落ちた。


 やばい。

 今日だよ?

 心臓がもたない。

 でも……断れるわけがない。


 好きな人に呼ばれたんだから。


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