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悪役一家の末っ子に転生した俺、家族を守る為に破滅フラグをぶっ壊す  作者: おとら@9シリーズ商業化


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9/20

夢の中の出来事

これは……昔の夢?


前世の兄と姉がいる。


どうやら姉がやってるゲームを二人で見ているようだ。


「何が楽しいんだ? なあ、和也?」


「うーん、僕もよくわからない」


「この面白さがわからないなんてまだまだ子供ね」


どうやら、姉がやっているのは昔ながらのノベルゲームみたいだ。

そういえば、姉は初期の頃からノベルゲームをやっていたっけ。

まだ流行ってもなく、様々なジャンルが出てた九十年代だ。


「俺たちはレーシングゲームとかしたいし」


「もしくは格ゲーもいいよね!」


「そうそう! なあ、早く終わらせてくれよ」


「うるさいわね、今この選択肢で悩んでるから待ってなさい」


ノベルゲームは選択肢を選んで進んでいくゲームだったか。

これは戦記物かな? 朧気だけど、姉さんがハマっていたのは覚えている。

……これってもしや。


「これ、なんてゲームだっけ?」


「アスガルド戦記よ。悪政をひいてるトライデント家を倒して、そこから成り上がっていくの」


「あぁー、そういう感じならやってみたいかも。ただ、文章しかないしなぁ」


「それがいいんじゃない。自分の選択が、未来を決めるみたいで」


……思い出した。

マリアール、トライデント、アスガルド……どれも、俺が転生した世界の言葉だ。

そして悪政をひいてる家は俺の家族? しかし、そんな感じはしない。

まあ、所詮はゲームや夢の話だし。

そんなことを思っていると、姉と兄の視線が上に向く。

それは近くにいる和也ではなく、上から見ているセリスを見ていた。


「和也、私達は平気よ」


「そうだぜ。だから、今の家族を大事にしな」


「アンタしか、彼らを救えないんだからしっかりやんなさい。大丈夫、アンタには特別な力があるわ」


「少なくとも、末っ子が先に行くんじゃねえぞ……お兄ちゃんとの約束だ」


……どういうことだ?

問いかけようとするも、俺の言葉は出ない。

そして徐々に二人が霞んで消え、うっすらと両親の姿が浮かぶ。

遠のく意識の中、最後に聞こえたのは……『幸せに』という言葉だった。



……うぅ。


苦しい……なんだろ?


「セリス! しっかりして!」


「おい! そんなに抱きしめたら死んじまうよ!」


「んぎゅ……」


目を開けると、そこには涙を流したナンナ姉さんがいた。

その隣には、オロオロしているキュアン兄さんもいる。

どうやら、いつも通りに抱きしめられていたらしい。


「……よ、よかった」


「ねえさん? どうして泣いてるの?」


「だってお昼寝の様子を見にきたら、セリスがうなされていたから……」


「俺は平気だって言ったんだけどな」


「何よ、アンタだって慌ててたじゃない」


「そ、そりゃ……まあ、何にせよ起きて良かったぜ。父上や母上は不在だし、何かあったらオレらじゃ対応できない」


そっか、そういえば父上と母上は二人で出かけるとか言ってたっけ……デートだ。

その間、俺達三人はお留守番を命じられた。

ホルンは確か、買い出しに行くとか言ってたっけ。


「それで、何かあったの? 空に手を伸ばして苦しそうにしてたわ」


「えっと……夢を見てたんだ」


そうだ! あの夢は何だったんだろ?

あのゲームに出てくる設定と、うちの家は似てたけど。


「怖い夢?」


「うんと……よく覚えてないや」


前世の姉と兄は、何か語りかけるようだった。

故人が夢に出てくるのは良いことでもあり、同時に何かを警告するものとか聞いたことがある。

あれは前世の家族が、俺に何かを知らせるために来たのでは?

あのゲームの内容がそれに当たるとしたら?


「セリス? 汗がすごいわ」


「風邪だったんかな?」


「どうしよう、セリスに何かあったら……」


「だ、大丈夫だよ」


落ち着け、思い出せ……あの時、姉がやっていたゲームの内容を。

確か主人公は辺境に住む青年で、悪政に苦しめられていた。

そして家族の死をきっかけに、仲間達と立ち上がることを決意する。

そして領主であるトライデント家を討ち滅ぼすのがゲームの始まりだ。

そこから戦乱の世になり、成り上がっていくストーリーだったはず。


「つまり、うちの家はチュートリアルで滅ぼされる悪役?」


「セリス? 本当に大丈夫?」


「やっぱり、オレ医者を呼んでくる!」


「そうね、お願い」


うちは領民思いの家で、そんなことするとは思えない。

ゲームではどんな設定だった? 早く思い出さないとまずい気がする。

確か……母親が早くに亡くなり、父親は呑んだくれの領主。

子供は二人で姉は禁呪に手を出した魔法使い、兄は戦闘狂の暴君。

あれ? 俺は何処? 末っ子がいた設定あったかな?

いや、そもそも……うちの家族とはかけ離れた設定だ。


「うん、気のせい気のせい」


「セリス、しっかり。大丈夫、お姉ちゃんがついてるからね」


「オレもいるから心配すんな! んじゃ、行ってくる!」


待て、今はそこじゃない。

このタイミングで、あんな夢を見たことが何かありそう。

俺だけが救える? そういえば母上は死ぬ?

まさか……いや、杞憂ならそれでいい。


「にいさん待って!」


「どうした?」


「今すぐ、僕達でちちうえとははうえのところに!」


「セリス、どうしたのよ?」


「お願い! ははうえが危ないかもしれない!」


理由を言っても通じないだろう。

俺自身、ただの勘違いだと思っている。

ただ何かあってからじゃ遅い……それは前世の経験で身にしみていた。


「……キュアン」


「わかってる」


「珍しく意見が一致したわね」


「んじゃ、オレが抱えて行くか」


「はぇ? 信じてくれるの?」


「「当たり前よ(だ)」」


そう言い、二人が同時に俺の頭に手を置く。


前世の兄さんと姉さん……二人と同じように、今世の兄さんと姉さんも優しい人達だよ。


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