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悪役一家の末っ子に転生した俺、家族を守る為に破滅フラグをぶっ壊す  作者: おとら@9シリーズ商業化


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8/20

自分の出生

 適性がない?


 魔法が使えて、家族の力になれるって思ってたのに。


「司祭様、そんなことがあるのでしょうか?」


「……ごく稀に。私も初めてのことですが」


「そうですか……セリス」


「……はい」


「そうがっかりするな。大丈夫だ、魔法が使えなくてもセリスはセリスだ」


 そう言い、俺の頭に優しく手を置いた。

 俺は頷き、父上の手に引かれとぼとぼと教会から出ていく。


「うぅー……」


「セリス、そんなに魔法が使いたかったのか?」


「だ、だって……僕だって領地の役に立ちたい」


 転生から三年経ち、初めて外に出たから何となくわかる。

 どう考えてもうちの領地は貧しく、それこそ兄さんや姉さんが働いてるくらいだ。

 母上もうちにいながら家事や編み物などもしている。

 流石に戦いはできないけど、魔法なら三歳でも役に立てるかと思ってた。


「……俺は馬鹿だな」


「ちちうえ?」


 すると、父上が俺の前で膝をつく。

 そして目線を合わせ、じっと見つめる。


「俺はてっきり、単純に魔法が使いたいのかと思っていた。しかし、それが領地のためだとは……やれやれ、父親失格だ」


「それもあるけど……僕、みんなにしてもらってばかり」


 前世でもそうだった。

 両親や兄や姉は、末っ子の俺を可愛がってくれた。

 なのに、俺は何も返すことができずに……永遠に会えなくなった。


「そんなことを気にしていたのか……だったら心配はいらない。お前がうちにいるだけで、俺達家族を幸せにしているからだ」


「……どういうこと?」


「そうだな……とりあえず、うちに帰ろう」


 そして再び抱っこをされて、家路に着く。

 すると、外で待っていた三人が駆けてくる。


「父上!」


「お父様!」


「貴方……セリスはきちんと洗礼を受けられましたか?」


「ああ、きちんと受けられた……これで一安心といって良い」


「よ、よかった……本当に」


 なんか、またみんなしてウルウルしてる。

 いい加減、訳が知りたい……怖いけど。


「みなさん、セリス様が戸惑っております。そんな風にしては気にするなという方が無理かと」


「そうそう! なんかみんなして変だし!」


「悪かった。では、皆でリビングに行こう」


 そうしてリビングのテーブル席に着く。

 ちなみに母上は俺を膝に乗せ、落ち着かなくほっぺをムニムニしている……気持ちいい。

 兄さんと姉さんは珍しく静かに座っている。

 そしてホルンがお茶を用意したら、父上が口を開いた。


「まずはセリスだが……適性なしということだった」


「そ、そんな……私のせい?」


「そんな訳があるか。もしそうであったとしても、誰も責めはしない。きっと、セリスもな」


「だって、この子は魔法が使いたくて……」


「話を聞いたら、どうやら領地の役に立ちたいからだと。そのために魔法が使いたかったそうだ」


「そんな……セリスゥゥ」


「んぎゅ……」


 そうして豊満な胸に押し潰される。

でも、嫌いじゃないのだ。


「よくわからないけど、ははうえのせいって?」


「まだ小さいお前には説明が難しいが、ひとまず聞いてくれ。母さんはな、お前を産む時に色々あってな。結果として、お医者様には無事に生まれるかわからないと言われたんだ。そして母体にも負担がかかり、生まれたとしても何かしらの障害が残るかもしれないと」


「………そうなんだ」


「どうにか無事に生まれ、想定よりは全然良かったのだ。しかし、生まれたての頃は身体が弱くてな……三歳まで生きられるか心配だった」


 なるほど、いわゆる難産ってやつかな。

 だから母上は俺に適性がないのが自分のせいだって……なんだ、大したことないや。


「セリス、ごめんなさい……」


「どうして謝るの?」


「へっ?」


「僕、ははうえの子供で幸せ!」


 生まれてからこれまで、不幸せだと思ったことなどない。

 前世は不幸なこともあったけど、こうして優しい家族の元に生まれた。

 何より自分が転生したことで、前世の家族も何処かで幸せに暮らしているかもしれないって思えた。


「で、でも、適性なしって……」


「ははうえは僕が適正なしだったら嫌い?」


「そんな訳ない! 貴方は私の大事な子!」


「んぎゅ……だったら別に良いもん!」


 母上が目を見聞き、さらに強く抱きしめられる。

 ふと見ると、父上や兄さんや姉さんが泣いていた。


「おぉ……俺はいい息子を持った」


「うぅー……良かったよぉ〜」


「んだよ、みんなして……グスッ」


 そっか、だからやけに過保護だったのか。

 いつも俺には、誰かしらが側にいた。

 だから寂しいとか辛いとか思ったことない。


「セリス、貴方が元気に生まれたから私達は幸せになれたわ」


「さっき、ちちうえも同じこと言ってました……どういうこと?」


「別に元々幸せじゃなかったわけじゃないのよ? ただ貴方が生まれる際にアランとは言い合いになったり、ナンナとキュアンは喧嘩ばかりしていたわ。でも、貴方が生まれてから減ったのよ」


 その言葉に、三人が視線を逸らす。

 そりゃ、父上としては妻の身体が心配だよね。

 姉さんと兄さんは……うん、想像がつく。


「ま、まあ、そんなこともあったな」


「それはこいつが生意気だから……」


「はっ、姉貴がうるせえからだし」


 そして、ばちばちと火花を散らす。

 すると、母上がウインクをした。


「ほら、セリスの出番よ」


「二人とも喧嘩はダメッ!」


「仕方ないわね」


「セリスが言うんじゃ仕方ねえ」


「あのね……僕、この家に生まれて幸せだよ!」


 すると、みんなが笑顔になるのだった。


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