悪役一家の末っ子に転生したけど破滅フラグを壊してみせる
それからすぐに、治療が行われることに。
家族で見守る中、マーリンさんが呪文を唱える。
「聖なる光よ、かの者を巣食う悪しきモノを取り除け——アンチトード」
「うっ……」
「原因はわからないけど、魔力を最大限に高めたからこれで平気なはず」
「……苦しいのがなくなったわ」
なるほど、この世界は医学が進歩してないから割と力づくって感じか。
解毒魔法だけど、要は身体の悪いところを取り除いたってことだ。
何にせよ、母上が助かったならいい。
それを理解するのが少し遅れ……俺達は顔を見合わせて喜びを爆発させる。
「やったぁ!」
「ははっ! やったな!」
「やったぜ!」
「やったわ!」
みんなで抱き合って母上の無事を祝う。
「心配かけてごめんなさい。それとマーリン様、ありがとうございます」
「気にしなくていいわ。対価はきちんともらってるし……お礼なら、その子に言うといいかと。まさか、私が驚くことがあるなんて」
「セリス……ありがとう。それに、みんなもありがとう」
「えへへ……母上が元気になったら良いんだ」
俺の言葉に皆が頷く。
やっぱり、俺達には母上が必要だ。
すると、父上が恐る恐るマーリンさんに問いかける。
「あの、マーリン様……それで、妻は……」
「ええ、もう大丈夫です。かなりの魔力を持っていかれましたが、その甲斐もあって完全に治したと言っていいでしょう」
「っ……! 改めまして、ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!!!」」」
……良かった……これで母上の《《病気は》》平気だ。
正直言って、これで破滅を防げたかはわからない。
病気以外のことや、他の家族に何か災いが降りかかるかもしれない。
だけど……俺が必ず防いでみせる。
いるはずのない俺というイレギュラーで、大事な家族の破滅フラグをぶっ壊してやるんだ。
◇
……目を覚ますと、外はすっかり暗くなっていた。
すると、横の椅子に座るアレクが起き上がる。
「むっ、目が覚めたか」
「アラン、残ってくれてたの?」
「ああ、もちろんさ」
私は大事をとって、今日は教会に寝泊まりすることになった。
万が一何かあっても、マーリン様が対処してくれるように。
アフターケアの一環で、その場合は無料でいいとか。
「私は帰ってもいいって言ったのに」
「そんなことしたら子供達に怒られてしまう。この看病だって取り合いだったんだぞ?」
「ふふ、そうだったのね」
「全く、皆が母親好きで大変だ」
皆に心配かけてしまったけど、不謹慎だけど少し嬉しい。
皆は優しく育ってくれて、私は幸せ者だわ。
そういえば……夢を見た。
今になって、その夢が鮮明に浮かぶ。。
「……怖い夢を見たわ」
「ん? どんな夢だ?」
「そこにはセリスがいなくて、私は今と似たような状況になるの。それで、死んじゃって……アランは酒に溺れたり、キュアンとナンナは喧嘩別れしたり。最後には、みんなが死んでしまうの」
それは何だか、とてもリアルな夢だった。
まるで、現実に起こったかと錯覚するほどに。
「それは……もしセリスがいなく、君までいなかったら……可能性は否定できない」
「もう、しっかりして」
「すまない……だが、それはもしかしたら現実に起こり得た未来なのしれないな。前も少し話したが、セリスは不思議な子だ」
「ええ、そうね。氷魔法もそうだけど、私達が知らないような知識を沢山知ってるわ」
無論、それを突っ込むようなことはしなかった。
そもそも、無事に生まれるはずのないと言われた子。
ただ元気に育ってくれて、それだけで嬉しかったから。
「うむ……やはり、神様が寄越した子なのかもしれない。なにか、特別な使命や力を授かっているか」
「そうね。でも、関係ないわ。あの子は、私達の可愛い子でしょ?」
「違いない。もしあの子に何かあるというなら、どんな相手だろうが俺が守り抜く」
「ふふ、それでこそ私が惚れた殿方。もちろん、私も手伝うわ」
あの子は私……いえ、私達家族を救ってくれた。
何より、大事な息子だもの。
何があろうとも、あの子の味方でいること……それが母親ってものよね。




