驚く物
そうとなったら善は急げだ。
母上の容態はいつ悪化するかわからない。
厨房をお借りして、兄さんと姉さんと一緒に早速作業に取り掛かる。
「セリス、私達は何をすれば良い?」
「えっと、ここは兄さんに任せるかな」
「うし、オレの出番か」
準備といっても特に難しいことはない。
まずはイチゴを瞬間冷凍させる。
それをコップに入れたら、後は砂糖を少しと牛乳を入れるだけだ。
「下準備おしまい! 後は3分くらい待ちます」
「えっ? これだけで良いの?」
「うん! 絶対に美味しいから!」
そのまま3分ほど待ったら準備完了である。
「それじゃ兄さんの出番! 中にあるイチゴをスプーンで潰していって!」
「力仕事か……よし」
シャクシャクという音を立てて、冷凍イチゴが潰れていく。
すると次第に色が変わり、牛乳が綺麗なピンク色になっていった。
「もっとか?」
「ううん、これくらいが良い!」
「んじゃ、持ってくか」
「待って、もう一人分用意しよう」
あの小さい女の子のおかげで、お母さんは考えを改めたしお礼しないと。
そして父上達が待つ部屋に持っていきテーブルに置く。
「セリス、これが?」
「うん! あの、これが『驚くもの』になります」
「……確かに見たことないモノですね。何やらドロドロしてますが、ジュースではない?」
「それは我が領地の特産品でもあるイチゴという果実に牛乳を合わせたものです。えっと、毒味は要りますか?」
「いえ、私の体は毒の類は効きませんので。では……これは……」
一瞬、訝しげな表情をしたけど……その後は無表情で飲み干していく。
多分、まずいってことはないと思うんだけど。
「ど、どうでしょうか?」
「……初めての感覚ですね……山の水より冷たい飲み物……そして仄かな酸味と甘みが口に広がりました。何より《《食感に驚きました》》。イチゴの塊ですか? それらが食感として残っていて楽しいですね」
よし! 言質取った!
世界中を旅していると言っていたから、雪や氷なんかは知ってるかもしれなかった。
でも流石に、《《スムージー》》は知らないよね。
今回俺が作ったのは簡易的なスムージーで、敢えてイチゴの食感が残るように兄さんには荒く潰してもらった。
「今、言いましたよね?」
「……確かに言いました。約束通り、貴方の母親を治しましょう」
「あっ……ありがとうございます!」
やった! これで母上を救える!
それはきっと、家族の破滅フラグを救うことにも繋がるはずだ。




