破滅の足音
お出かけから数日経ち、今のところ問題はなさそう。
冷蔵庫の普及も徐々に行き渡ったり、氷の魔石も数が増えてきた。
ちなみに、今は領主からの贈り物として住民に配っている形だ。
値段はつけてないけど、俺の氷魔法にドワーフ製というだけでかなりの値段とか。
裕福ではない人は、とてもじゃないが買えないらしい。
「でも、それだとモーリスさんに負担ばっかりかけちゃうよ? 僕はまだ、魔法を込めるだけで良いし。それに領主一族だけど、モーリスさんは領民でもあるわけだよね」
「むむっ、確かに報酬の話はしてないな。だが、奴は何も言わんし……」
「ちちうえ! 親しき仲にも礼儀ありですよ!」
前世を生きてたからよくわかる。
《《言わないからといって、何も思っていないわけじゃないことを》》。
そういう人は知らず知らずのに不満を溜めたり、ある日突然いなくなったりするんだ。
「貴方、セリスの言う通りだわ。そもそも、モーリスは私達のために領地に来てくれたんだから」
「いや、それはわかってはいる……そうは言ってもなぁ、あいつが欲しがるものなど食い物か酒くらいだ。とりあえず、冷蔵庫で冷やしたエールは気に入っていたが」
そう、ドワーフさんは酒好き。
冷えたエールを大層気に入ってくれた。
俺がもう少し大きくなったら、ラガーとか作ってみても良いかも。
「でも、それはセリスの手柄じゃない。友として領主として、貴方が誠意を見せないとダメだわ。ただ、お礼を言うだけでも良いのよ」
「しかし、それは……照れ臭いのだ」
「まったく、男の人ってこれだから。でもダメ、今すぐに伝えること……いいわね?」
「う、うむ……しかし、仕事が」
「だから、モーリスにお礼を言うのも仕事のうちって言ってるのよ」
……ここにも破滅理由がありそう。
母上が死んだ場合、父上は絶対に礼とかしなさそう。
やっぱり、母上がいないと家族はダメっぽい。
前世でも、やっぱり母の存在は大きいって言われてた。
「それじゃ、早速行こう!」
「仕方ない。さて、キュアンとナンナは兵士達と合同訓練中か」
「私は二人がお昼に帰ってくるから、ご飯を作って待ってるわ」
「では、セリスと二人で行くとするか」
「わぁーい! ちちうえとお出かけ!」
「ふふ、いってらっしゃ……うっ」
俺達が部屋を出て行く直前、突然母上が蹲ってしまう。
「ははうえ!?」
「セシル!?」
「だ、大丈夫よ、少し……ゴホッゴホッ!」
母上の口から血が流れる。
どう見ても、いつもの具合が悪い感じじゃない。
すると、ホルンが慌ててリビングに入ってくる。
「奥様!?」
「ホルン! セシルを今すぐに教会へ!」
「……ええ、お任せください」
「俺もすぐに向かう!」
ホルンが母上を優しく抱き抱え、そのまま玄関へ行く。
「ち、ちちうえ……」
「大丈夫だ、教会に行けば司祭様が多少だが回復魔法を使える。俺もお金を持って教会に行く。お前はここで……」
「僕も行きます!」
「……置いて行く方が心配か。分かった、ついてこい」
自分に何が出来るかはわからない。
でも、ここでじっとしてなんかいられない。
用意ができたら俺は父上と共に馬に乗り、教会へと急ぐのだった。




