名産
父上が見守る中、一列に並んだイチゴを採っていく。
プチッ、プチッ、プチッとなんだか癖になる音がする。
こういう無心な作業って、不思議と楽しいよね。
「セリス、上手いな」
「えへへ、慣れてきました」
すると、反対側のレーンにいる二人が覗きにくる。
今は三人に分かれ、それぞれ収穫していた。
「あら、私よりも上手いわ。よーし、頑張らないと」
「ぐぬぬ……負けられねえ!」
「だから、アンタは力を……言わんこっちゃない」
当然、イチゴが潰れてしまう。
それを見て、父上の顔に……青筋が入った。
あっ、これ怒ってるやつだ。
「キュアン? いくらなんでも潰しすぎじゃないか?」
「ヒィー!?」
「潰したら商品にはならんのだぞ? これを受け継ぐのは嫡男であるお前だというのに……まあ、ジャムにはなるから無駄ではないが」
「わ、分かってるって!」
そっか、ジャムとかはあるんだよね。
……そっか、それならすぐにでも作れる。
「ちちうえ! キュアン兄さんが潰したイチゴ、僕がもらってもいいですか?」
「もちろんだ。そもそも、今日とったのは家族用だしな」
「だったら、僕にいい考えがあります!」
「ほう? では、収穫を終えてから聞くとしよう」
収穫を続け、籠が一杯になったので終わりとなる。
俺は籠を持って、母上に見せに行く。
「ははうえ〜!」
「あらあら、沢山採れたわね」
「僕、一杯採ったよ!」
「ええ、ここからでも見えたわ」
「うん! 知ってた!」
ビニールシートは透明なので、向こうにいる母上はよく見えた。
別に一緒にいるわけじゃないけど、なんか見守られてるだけで嬉しくなったり。
なんだろ? 運動会や授業参観に来たお母さんみたいな感じかも。
照れ臭いけど、ちょっと嬉しいみたいな。
「キュアンもナンナも良く出来ましたね」
「お、おう」
「何照れてんのよ?」
「うるせえし! お前こそニヤニヤしてんじゃんか!」
「はぁ? してないし!」
「ふふ、みんな元気で嬉しいわ」
全員が揃ったので、イチゴの処理を始める。
ふさをとって、綺麗なのと普通の物……兄さんが潰した物など。
綺麗なのは洗い流し、その場で食べることに。
「いただきます——んっ〜!?」
口に入れた瞬間、嫌味のない甘さが広がる。
これ、めちゃくちゃ糖度高そう!
絶対にジュースとかにしたら美味しいよね!
「美味しいです!」
「なら良かった。これは俺と妻が特産品として試行錯誤を繰り返して作ったものだからな。他にも果物はあるが、これが特に力を入れている」
「二人で一から頑張ったものね。これは王都辺りではないもので、元々は辺境の一部でしか栽培してなかったのよ」
「ああ、それをみて『これだ』と思ったのだが。しかし、長持ちしないのが困りどころでな」
「ふふふ、それなら僕にお任せください!」
なるほど、イチゴは日持ちしない。
当然、領内にいる人たちくらいにしか回らない。
だったら、凍らせて違うモノに変えてしまえばいいのだ。




