新しい家族
更に半年が過ぎ、俺は一歳の誕生日を迎える。
「セリス、一歳の誕生日おめでとう」
「「「おめでとう!!!」」」
「あいっ!」
一歳になったからか、ハイハイしたり立ったりすることができるようになった。
それに、少しだけ発音が良くなったり。
ちなみに今回はリビングデビューというやつだ。
今までは母上の部屋から出たことはなかった。
どうやら、うちの家は二階建ての建物らしい。
全部を見てないから何ともいえないが、そこまで豪邸って感じではなさそう。
「おおっ、『あぅ』から進化したな」
「それじゃ、そろそろ言えるかしら……ママですよー」
「まーま!」
「まあ! セリス可愛い!」
「うんぐぅ……」
くるちい……母上に抱きしめられるのは好きだが、中々に豊満なのです。
でも、こんなに嬉しそうなら頑張った甲斐がある。
実は一歳の誕生日に向けて、こっそり練習をしていたのだ。
今のところ特に転生特典などはないので、地道な努力である。
「ま、待て! パパはないのか!?」
「パーパ!」
「おおっ……! うちの子は天才か!?」
「ふふ、あなたったら」
うむ、実に親バカである。
でも、凄く嬉しいや。
しかし、そうなると黙ってないのが……姉さんと兄さんである。
「あー! ずるい!」
「俺も俺も!」
「にーに! ねーね!」
「「はぅ……!」」
すると、二人が胸を抑えて悶えた。
何というか、楽しく愉快な家族である。
そして……もう一人の家族が咳払いをする。
「みなさん、お料理が冷めてしまいますよ」
「そうね、ホルンの言う通りだわ。さあ、食べましょう」
「では、セリスお坊ちゃんはお任せください」
そう言い、ホルンが俺を膝に乗せる。
みんなが食べる仲、俺はメイドであるホルンに食べさせてもらう。
ホルンはうちの唯一のメイドで、俺たち兄弟のお世話係だ。
そして、このホルン……なんとお尻から尻尾と、頭から犬耳が生えている。
コスプレではなく、獣人という種族らしい。
これも、俺が驚いたことの一つだ。
「おなか!」
「はいはい、お腹が空きましたね」
「あい!」
ハムハム……正直言って離乳食はあんまり美味しくない。
ただ前世の赤ん坊の頃の記憶はないので、こんなものなのかなと。
ただ食卓を見てもパンやスープ、それに焼いた肉くらいしかない。
俺の誕生日だからか、少しの果物があるくらいだ。
「あぅ……」
「どうしたんです? まだ普通の食事は早いですよ」
「あい……」
いや、合ってるけどそうじゃない。
とりあえず食事事情は良いとは言えなそう。
これは動けるようになったら、色々と考えないと。
俺は美味しい物を食べたいし、新しくできた家族のために何かしたい。
しかし、この時の俺は知らない。
この家族と、俺に待ち受ける運命を……。




