ナンナ視点
……不思議な子よね。
隣で夢中になって本を読むセリスを眺めて思う。
生まれた時から、私達の言ってる内容を理解してきた感じだし。
三歳になったけど、既に文字の読み書きは完璧に近い。
……まあ、可愛い弟に変わりはないから良いけど。
「んぎゅ……急に何するんですか」
「私には自由にセリスを抱きしめる権利があるのよ」
「そ、そんな権利が……別にいいですけど」
セリスは可愛い。
小さい体にもちもちの肌、そしてサラサラの髪。
物心ついた時には、キュアンは私より大きかったし生意気だ。
だから、私にとってセリスは初めての弟のようなもの。
……別にキュアンが弟じゃないとは思ってないけど。
「素直でよろしい。ふふ、ほっぺももちもちねー」
「あぅぅ……」
こうしていると、ただの三歳児にしか見えない。
だけど、おそらく才能は私達兄弟の中で抜きん出ている。
特別な魔法に知識の吸収力、そして応用力までも。
とっさの判断にも優れており、成長したらどうなるやら。
「セリスはすぐに成長しちゃって寂しいわ。もう少し、可愛いままでいて欲しいかも」
「えっ? で、でも、僕も領地の役に立ちたい」
「そうよね……ごめんなさい」
今のは私の失言だった。
この子が成長したいという気持ちを、私のエゴで止めるところだった。
何より、この子がどんな成長をしようが可愛い弟に変わりはない。
「なんで謝るの? 僕、姉さんに可愛がられるの好きです」
「まぁ! セリスったら!」
「んぎゅ……」
「あら、ごめんなさい」
きっと、私達のことなどあっという間に追い越していくわね。
だからこそ、キュアン辺りは必死に頑張ってるみたいだけど。
多分、同じ男として負けられないって思ってるのかしら?
正直言って、私はセリスに抜かれるのは全然構わないんだけどね。
「それに、僕は姉さんに憧れてるので!」
「……へっ? な、なんでかしら?」
「だって姉さんは賢いですし、既に書類整理や仕分けなどをしてるって。魔法だって凄いですし、すっごくお綺麗だし——んぎゅ……」
嬉しさと同時に恥ずかしくなってきて、セリスをまた抱きしめてしまう。
……さっき言ったのは半分嘘だ。
私は女だからと言われたりするから、そこまでやるつもりはなかった。
だけど……これはやるしかないわね。
「プハッ……苦しいです」
「ふふ、ごめんなさい」
「と、とにかく、姉さんはすごいのです!」
「ありがとう、セリス」
こんな笑顔を向けられちゃ、お姉ちゃんは頑張るしかないじゃない。
この子の目標で居られるように、私も本気を出さないとだわ。




