仮説
その後は、母上達の談笑に参加する。
何せ、気になることが山積みだ。
「ちちうえは昔は冒険者でもあったんですね」
「ああ、次男坊の俺は跡を継げないからな。その時に、モーリスと組んでいたんだ」
「此奴は猪突猛進で困った奴だったわい。怪我をしている冒険者を放っておかんし、仲間に危険が迫ると自ら特攻する」
「まあ、あの頃は若かったしな」
ふんふん、この二人は冒険者という繋がりもある。
となると、ますます変だね。
「あれ? ははうえは? あと、ちちうえは兵士として身を立てたって聞いたような……」
「よく覚えてたな。冒険者をやっていたところ、隣国と戦争が起きてな。次男だったので参加義務があり、一時パーティーを解散して参加したんだ。そこで、救護班にいたお母さんと出会ったんだよ」
「アランってばいつも怪我だらけで大変だったわ」
「想像がつくわい。どうせ、無茶をしたんだろうに」
「わ、悪かったな」
なるほど、今のところ変なところはない。
母上の性格なら、救護班にいてもおかしくないし。
「そうなんだ! あの、モーリスさんに質問しても良いですか?」
「ああ、構わん」
「その、父さんの弱点というか、困ったところは他になかったんです?」
「お、おいおい、セリス……」
父上が、めちゃくちゃ悲しそうな顔をする。
しまった……でも、これは大事なことだ。
これだけ仲のいい二人が敵対するなら、それ相応の理由があるはず。
「ほ、ほら! ちちうえって、いつもキリっとしてかっこいいから!」
「そ、そうか……フフフ」
……チョロい。
いやいや、そんなこと思っちゃダメだよね。
「ははっ! 此奴がキリッとしてカッコいい!? ただの飲んだくれの暴れん坊だった小僧が!」
「お、おい!? そんなことは……ぐぬぬ」
「まあ、否定できないわね……アランってば、昔は酒癖が悪かったもの」
「そうじゃな、このワシと飲み比べができるほどじゃ」
……そういえば、父上の設定は母上が死んで酒に溺れるだったっけ。
この辺りに理由がありそうな気がする。
「今のちちうえから想像できないです! でも、どうしてだろう?」
「此奴はな……惚れた女のために酒をやめたのよ」
「アランは酒癖が悪くて……私がお付き合いしたいならお酒をやめてくださいって言ったの。そしたら、きちんとやめてくれたからお付き合いしたのよ」
……割とよくある話ではある。
でも実際やめられたなら父上は凄いや。
「……そんな昔の話は知らん」
「そんなこと言って良いのか? お主はワシに、もし酒に溺れたなら俺をぶん殴ってくれと頼んだというのに」
「……そのくらいで勘弁してくれ」
「でも、僕はちちうえ凄いと思います! だって自分の好きなことを、ははうえのためにやめたんだもん!」
「ええ、セリスの言う通りよ。アラン、私のわがままを聞いてくれてありがとう」
すると、父上が照れ臭そうに頬をかく。
でも、これで何となく見えたぞ。
母上を失った父上は酒に溺れ、そこをモーリスさんに叱られる。
だけど治ることなく腐り、そんな友を見てられなくて反乱軍に手を貸すのかもしれない。
だったらモーリスさんの信頼を得つつ、母上の病をどうにかしなきゃいけないってことだ。




