魔獣
その後も順調に森を進んでいく。
そんな中、大きな猪が現れた。
おそらく体長は二メートルくらい、口元には大きな牙もある。
「なにあれ!?」
「あれはブルスカよ。良かった、獲物が見つかったみたい」
「……数が少ないんですか?」
「ううん、そんなことはないわ。むしろ、ブルスカは多い方よ。ただ魔物とかが魔獣を殺してしまうから、生きてる状態で会えるのは運がいいの」
ということはどちらしろ魔物は倒すべき相手ってことだ。
だから、こうして定期的に守りに入って討伐してるのか。
「あれ? 魔獣は倒しても強くならない?」
「ええ、そうよ。でも作物を荒らすし、食糧になるから必要ね」
「それじゃ森に入ってるのは魔物を倒して人々や魔獣を守るためと、魔獣そのものを倒す目的があるってこと?」
「あら! 賢いわ!」
「んぎゅ……」
姉さんが成長期に入ったから、少し柔らかいのが気まずいです。
……そうだ、思い出した。
ゲームでは森も放置して、魔物や魔獣による被害が凄かったんだ。
となると、これは破滅回避にも必要ってことだね。
すると、ブルスカが父上に向かって突進する。
「ブルルッ!」
「ガルムでは情けないところを見せてしまったが——せぁ!」
カウンター気味に、父上が背中にある剣を振り下ろす!
すると、ブルスカの額が割れて地に伏せる。
そして父上が得意げに俺たちの方にやってきた。
「わぁ……ちちうえかっこいい!」
「ははっ! そうだろ!」
「わわっ!?」
破顔した父上に、思い切り頭を撫でられる。
この大きな手は、遠い記憶を思い出させた。
それと同時に、今世の自分が大好きな家族を守る手だ。
「もう、お父様ったら。セリスに良いところ見せれたからって子供みたい」
「まあ、そういうな。ますます、セシルに似てきたか」
「ぐぬぬ……オレもやる!」
「アンタはまだ無理よ。そして、こっちはお父様に似ちゃったわ」
みんな良いな、俺も見てるばかりじゃなくて何かやってみたい。
当然、そんなことは許されるわけがなく、そのまま見てるだけで終わっていく。
そしてこの世界にはアイテムボックスはないので、狩られた魔獣は空いてる手の者が村へと引っ張っていった。
数も減っていき、俺達と少数の兵士のみとなる。
「二頭も取れれば上等だな」
「それじゃ、もう帰るの?」
「ああ、量があっても食べきれなくては意味がない……むっ?」
その時、森の奥から何かが出てくる。
それは豚の顔に、けむくじゃらな体毛に包まれた人型の生き物だった。
その生き物は、興奮したようにこっちをみていた。
「ブヒッ!」
「オークか。セリス、覚えておけ。魔物全般に言えるが、特にオークを見つけたら何があっても逃すなと」
「どうしてですか?」
「簡単な話だ、オークとは……」
その時、隣から恐ろしいオーラを感じたる。
ふと横を見ると、微笑んでいるのに怖い顔に見える姉さんがいた。
「ふふ……オーク、燃やし尽くす……女の敵」
「ね、ねえさん?」
「お前には難しくてわからないだろうが、オークは人類の女性を捕まえて辱めるのが好みなのだ。そして魔物では唯一、逃げることを考えるのだ」
そうか……あの視線は、俺ではなくて姉さんを見ていたのか。
うん、如何にもオークっぽい設定だ。
「ブヒッ!」
「き、きたよ!?」
「ふふふ、安心しなさい。放て火の矢——フレイムアロー!」
「ブモォォ!?」
火の矢が放たれ、オークの顔に直撃する。
顔が燃えて、苦しそうに地面を転がっていた。
「トドメだっ!」
「ブガァ……」
父上が剣を振り下ろし、魔石になる。
その時、視界の端にもう一匹がいるのが見えた。
そして、慌てて森の中に逃げ出そうとする。
「あっ! あそこに一体いるよ!」
「くっ、ここからでは間に合わんか!?」
「森が近すぎて、魔法が撃てないわ!」
父上からは距離があり、姉さんは魔法が撃てない。
一番近いのは、俺と兄さんの二人。
「兄さん! 隙を作るよ!」
「……おう!」
イメージはあの時と同じ。
無我夢中だったけど、今度は意識的に。
そして素早く放つため、姉さんのように。
「——アイスバーン」
「ブヒッ!?」
「よくやった——うらぁ!」
俺の氷に滑り、隙だらけの腹を見せる。
そして、兄さんの槍がその腹を貫くのだった。




