一人じゃない
その日の夜、俺は違う作戦を練る。
俺が心配をかけて、母上が倒れちゃうんじゃ意味がない。
でも限界があるしなぁ……そう思っていた矢先、兄さんと姉さんが部屋にやってくる。
「「セリス!」」
「なんだよ! オレが先だ!」
「アンタは引っ込んでなさい!」
相変わらずのこれである。
後ろで溜息をつく母上と目が合い、思わず苦笑してしまう。
「ねえさん、にいさん、静かにしないとダメです」
「……すまん」
「私としたことが……こいつと同レベルに」
「二人とも、尊敬するにいさんとねえさんですよ」
すると、わかりやすくご機嫌になる。
うんうん、なんともチョロい二人だ。
引き続き、破滅を防ぐために中を取り持たないと。
「それで、どうしたの?」
「セリス、水臭えじゃねえか」
「そうよ。私たちだって、母上のために何かしたいわ」
「というわけで、魔物退治に行くぜ!」
「そしたら魔石はセリスにあげるから好きに使いなさい」
……当たり前のことに気づかなかった。
今は、俺一人じゃないんだ。
前世で一人で過ごした時間が長くて忘れてた。
「あ、ありがと!」
「ふっ、いいってことよ。というわけで、姉貴……」
「わかってるわよ。ここは協力といこうかしら」
そう言い、二人が握手をする。
おおっ、珍しいこともあるもんだ。
すると、母上が咳払いをした。
「こらこら、貴方達。アランの許可は取ったの?」
「「もちろん!!」」
「それならいいけど……そうね、二人も十歳を超えてるもの」
……いいなぁ、俺も行きたい。
でも、きっと母上は許可しないよね。
「セリス、行きたいかしら?」
「あ、あれ? 僕、口に出してた?」
「ふふ、顔に書いてあるわ。これでも貴方の母親だもの……いいわ、行ってきなさい」
「えっ!? で、でも、無茶しちゃダメだって」
「それは一人で無茶はダメって意味よ。家族なんだから助け合わないと」
そうか、さっきと同じだ。
だったら、俺のいうべきことは決まってる。
「あの、にいさん、ねえさん……足手まといだけど、僕も連れてって!」
「よし! 一緒に父上に直談判だ!」
「さあ、行くわよ!」
「ありがと!」
母上に見送られ、三人で父上の元に行く。
説明をすると、父上が天を仰いだ。
「全く……うちの子達ときたら。子供には、ただ伸び伸びと育って欲しかったのだが」
「父上、母上が具合が良くならないと無理だぜ」
「それに、もう子供じゃないわ」
「えっと、お願いします!」
「……ただの父親として嬉しく思う。わかった、次の狩りに連れていくと約束しよう」
その言葉に、俺たち三人はハイタッチを交わすのだった。




