お叱り
これで、自分で稼ぐ方法は見つけた。
お金を稼ぎつつも、それを領民に還元できるようにしないと。
トライデント家は、いい領主一族だって思ってもらえるように。
「やっぱり冷蔵庫的なものはないと。あと、お菓子はあってもアイスやケーキとかはないと……当然だね」
氷がないんじゃどうしようもない。
そうなると、冷蔵庫やアイスとかは売れそう。
ただ砂糖や卵は貴重品っぽいから、今すぐには無理そう。
冷蔵庫も、ちゃんとしたのは難しいかな。
「昭和にあったような冷蔵庫なら今でもいけるかな。ほかに今すぐ作れそうなものといえば……アレかな」
材料は、母上が襲われた場所にあるもんね。
後は専用の氷を作れれば良い。
「よし、早速試して……硬い氷じゃなくて、ふわふわしたもの……」
あれ? なんだが、意識が遠くに……。
……あれ? 俺ってばどうしたんだろ?
目を開けると、そこには泣きそうになった母上がいた。
「セリス! しっかり!」
「……ははうえ? 泣きそうだけどどうかしたの?」
「よ、良かった……貴方、魔力枯渇で倒れたのよ」
「えっ? でも、大した事してないよ?」
「魔法の後を見たけど、何やらふわふわした物が積もってたわ。あれは前に見た氷とは違う……少し違うかもしれないけど、土魔法とかで土を岩とかに変化させるには大量の魔力を使うわ。もしかしたら、貴方は性質変化をさせようとしたんじゃない?」
……そっか、普通の氷を性質変化させたのか。
俺が撃てるのは10発だから、大体十倍くらいの負担がかかると。
「よくわからないけど、そうなのかな?」
「あのね、セリスの気持ちはお母さん嬉しいわ。でもね、セリスが無茶をする方が悲しいの」
「で、でも、僕も役に立ちたい。それで、ははうえの病気をよくしたい」
母上はもちろんのこと、他の皆も俺に再び家族の温かみを教えてくれた。
もう二度と感じることがないと思っていた大事なものを。
「ありがとう。でも、それで貴方の身体が壊れちゃったら元も子もないわ。私の体なんかより、貴方の方が大事だもの」
「でも、それじゃダメなんだ!」
「セリス? どういうこと?」
「え、えっと……」
だって、母上は死んでしまうかもしれない。
それによって父上や、兄さん姉さんも主人公に殺されてしまう。
前世の家族が俺を守ってくれたように、俺もみんなを守りたい。
すると、母上に強く抱きしめられる。
「貴方は不思議な子……夢のこともそうだけど、氷魔法のように特別な力がある」
「へ、変かな? 気持ち悪い?」
「そんなことないわ。貴方がどんなでも、元気でさえいてくれたら良い。それが、母親ってものよ。貴方が不幸になったら、私達も不幸になることを忘れないでね」
「……僕がみんなを大事に思うように、みんなも僕が大事」
「ふふ、わかってるじゃない。だから、無茶をしないこと……約束できる?」
「……うん」
そんな泣きそうな顔で言われたらそういうしかない。
でも、なるべく心配はかけないようにしなきゃ。
今の俺で出来ることを一つずつやっていこう。




