表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役一家の末っ子に転生した俺、家族を守る為に破滅フラグをぶっ壊す  作者: おとら@9シリーズ商業化


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/40

アラン視点

いつ以来だろうか。


妻が、こんなに晴れやかな表情になっているのは。


森の中にある果樹園で、鼻歌を歌いながら嬉しそうに採取を行っている。


きっと、セリス達に食べさせるデザートても考えているのだろう。


その姿に、俺も思わず笑みがこぼれてしまう。


「アラン? ちょっと、何を笑っているの?」


「すまんすまん。つい、君が嬉しそうでな」


「ふふ、当たり前じゃない。あのセリスが、元気に育ってくれたもの」


すると、まるで少女のように微笑む。

これは子供達の前では見せない、俺だけが知る顔だ。

そして同時に、最近は見れなかった顔でもある……セリスには感謝せねばな。

俺は妻なしでは生きてはいけないし、妻の笑顔が好きだから。


「本当にな。あの時は、揉めに揉めたなぁ」


「だって貴方ってば、産むのをやめないかとか言うんだもの」


「それは……君の身体が心配だった。まだ子供たちも小さかったし」


「意地の悪い言い方してごめんなさい。でも、どうしても産みたかったの。いや、産まないといけないって」


俺達は結婚して、割とすぐにナンナとキュアンという子宝に恵まれた。

しかしそれ以降妻は体調を崩すことが多く、もう子供は無理と思っていた。

そんな時に七年ぶりに妊娠し、夫婦でよく話し合うことに。

俺は喜びつつも反対し、妻は絶対に産むと言って聞かなかったっけ。


「産みたいはわかるが、産まないといけないとは?」


「あの時、それを強く思ったの。問題は色々あったけど、不幸せと思ったことはないし……どうしてかしら、その方がいい気がしたのよ」


「直感というものか……だが、結果的には合っていたな。セリスが元気に育ってくれたおかげで、我が家は随分と明るくなった」


ナンナとキュアンは喧嘩ばかりで、セリスが生まれるまでは口も聞かなかった。

それが今や、セリスを通してたがきちんと仲良くやっている。

俺も領内の問題やストレスなどにより疲れていたが、帰ってきて楽しそうな家族がいることで耐えられた。

妻の笑顔も増え、平穏な日々を過ごせたのだ。


「きっと、神様が授けてくれたのよ。私達に幸せになって良いんだって」


「……そうかもしれないな」


俺も妻も、生家の家族との関係が良くない。

俺は厳格な家柄とは合わず、妻は大貴族との結婚を強いられそうになったり。

俺が手柄を立てたから結婚を許されたものの、半ば駆け落ちに近い形だ。


「でも、子供を産んでわかったこともあるわ。誰も、子供に茨の道を歩んで欲しくないもの」


「それは言えてるな……俺も戦争に出ると言ったら反対されたっけな。セリスが成長したら、それぞれの実家にご挨拶に伺うか」


「それも良いわね。さて、こんなものかしら。あんまり長いと、あの子達が寂しがるわ」


「俺としては愛しの妻と二人きりで嬉しいのだが」


「そんなこと言って、気になってるくせに」


「……バレたか」


確かに妻との時間は良い。

しかし、子供との時間も掛け替えのない時間だ。

きっと、いられる時間はそんなに長くはないだろう。

キュアンやナンナなどは、あと数年で成人してしまう。


「バレバレよ。セリスにだってデレデレだし」


「ナンナとキュアンにも愛情はあるのだが、あの時は余裕もなかったからな」


「それはそうね。領地のことで大変だったし、あの子達はほとんど年子だったから」


「いやはや、良くここまでこれた。妻のおかげ……いや、セシルのおかげだ。引き続き、よろしく頼む」


「ええ、こちらこそ。それじゃ、戻りましょう」


「ああ、そうするか」


名残惜しいが、これでデートは終わりだ。

村の外れ故に護衛などもいないので、久々にゆっくりできた。

明日からも、引き続き頑張るとしよう。


「ふふ、何を作ろうかしら」


「リンゴか。焼きリンゴとかだろうか?」


「それくらいしかないかな。本当は牛乳とかバターがあったら、お菓子とか作れるんだけど」


「あれらは高級品だしな——危ない!」


考えるより先に、俺はセシルを突き飛ばす。


「きゃっ!? アレン、何を……あっ」


「グルルッ……!」


目の前にいるのは、魔狼ガゼルと呼ばれる魔獣である。

こいつが、突然草むらからセシルに向かって襲いかかったのだ。

咄嗟にセシルを庇ったのは良いが、利き腕に傷を負ってしまったか。


「セシル! 衛兵がいる場所まで逃げるんだ!」


「そんな……利き腕を怪我してる貴方を放ってはいけないわ!」


「グルルッ!」


「ちっ、そもそも逃がさせてくれないか」


ガゼルの視線は俺ではなく、セシルの方を向いてる。

最初からセシルを狙ったことといい、そちらに狙いを定めているようだ。

くそっ、なんでこんなところにガゼルがいる。

領地の外れとは言え、ここは人里だぞ。


「ガルル……!」


「ならば、倒すまで!」


利き腕ではない方で剣を構え、どうにかガゼルと戦う。

セシルに狙いが行かぬように果敢に攻め立てる。


「セァ!」


「グルッ!」


「くそっ、素早いな」


やはり利き腕じゃないのが厳しい。

何より、利き腕からは血が出ている。

長引くたびに、こちらが不利になるだろう。


「わ、私も戦うわ」


「だめだ。無事に産まれたとは言え、君はセリスを産んだ時に体を悪くしている」


彼女は本来なら一流の火魔法使いだ。

それこそ、森の中でも火事を起こさないほどのコントロールを持つ。

しかしセリスを産んだ時に無理をし、戦うことは難しい。


「で、でも、このままじゃ」


「大丈夫だ、君は命に代えても守り抜く」


「そんなの……私だって」


「グルルッ!」


「とにかく君は後ろに!」


様子見していたガゼルが、再び襲いかかってくる。

俺はそれを迎撃しようと剣を構えた時——激痛が走った。


「くぅ……!」


「グルァァァァ!」


腕の痛みにより、一瞬動きが止まってしまう。


「しまっ——」


「アラン——!!」


そして目の前には……俺の前で両手を広げる愛しき妻の姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ