14撃目 「マダム・マダム」
パートナーは用意する、ということだったが、果たして誰が来るのだろう?
表舞台の関係性で言えば、マダムの『グリセリ』、獣人の『マッサ』、あとはお嬢様の『アネモネ』だが……アネモネには、今、出会いたくなかった。
なぜなら、彼女は敵対心が強いキャラである。
そして、自分の『お嬢様力』に絶対的な自信を持っている。
私に会ったらどうなる? もちろん、マダム前に戦闘になる。
「誰が来るのかしら……」
鏡の前でボディチェックを済ませ、ベッドに飛び込む。
掃除をしていないというのに、埃がひとつ立たなかった。
いったいどこまでがシステムなのかわからなくなる。
ベッドの上ですることもなかった。スマートフォンがなくても平気な世界、というのは安心する。無駄な情報は集中力を削ぐ。格ゲーも同じ。
「それに、マダムへの対策も講じなくては」
マダムはスピードタイプだ。
全ての技の発生が早い。単体のダメージは大したことはないが、一度食らってしまうと、コンボまで持っていかれる。これを4回ほど繰り返せば体力は尽きる。
だからガードを徹底したいのだが、彼女には『めくり』が存在する。『わんわんふれあいしすてむ』でやられたステップだ。彼女のステップは独特で、自身の姿が消えるのである。この時は技が外れることはもちろん、相手の身体さえもすり抜けて背後を取ることができる。ガードの方向を見誤れば攻撃を受けてしまうのである。
「熟練者のマダムは戦いづらかったのよね……」
ベッドの上でストレッチをする。
身体が鈍ることはなく、現実世界のような柔軟さはそのままだ。
頭の中でマダムのことを悶々と考え続ける。あ、なんか変な言い方になっちゃった。