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6話:攻撃力0


目を覚めると、知っている天井を目にする。そこは、いつも見ていた天井だった。


「…俺の部屋?なんで…いや、今までのことは、全部俺の夢?」


えっ?あんなに頑張ってたのに全部夢でした~~って?


「…まぁ、だよな~。異世界転生とか夢物語だよな。実際にあるわけないか」


今日は何曜日だろうかとデジタル時計に表示された曜日を見つめる。するとそこには漢字で『水』とだけ書かれていた。


「学校あるじゃん。はぁ…」


現在の時刻が7時を丁度過ぎたところであることは、時計の針が示している。

重たい身体を起こそうとするが、全くもって俺の身体は言う事を聞いてはくれない。すると下から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あくぅ~?朝ごはん食べなさ~い?」


その声に俺は、妙に懐かしさを覚えてしまった。いつも聞いているはずなのに、鬱陶しいとさえ思うこともあったのに。今では、その声が嬉しくてたまらなかった。


「…母さんの声だ。なんか、懐かしいな。毎日聞いてたはずなのに」


転生してから、自分の情けなさや、理不尽さに泣きたいこともあったが決して悲しいことはなかった。

なのに、なぜか今はとても悲しい。胸の中にポッカリと穴があいたような気持ちになる。何か大事なものを壊したり、無くしたりしたような喪失感、ただそれが胸の中に広がっていた。


しばらく、呆然として、立ちすくしていると。階段を登ってくる音が聞こえる。

俺の身体はいつの間にか起き上がっていた。


「阿久?入るわよ?」


ガチャッ


俺の返事も待たずに母さんは扉を開け、俺を仕方が無さそうに見つめる。

すると、不思議そうに俺に言う。


「・・・あんた、なんで泣いてるのよ?」

「え?」


自分の目元を拭い、袖を見ると濡れていた。

俺は涙を流していた。なんの涙だろうか。安心からくる涙なのか、転生が夢だったことの残念からくる涙なのだろうか。今の俺にはわからなかった。


「なんでだろう?…分からない」

「大丈夫?何か悪い夢でも見たのかしら。もう朝ごはん出来てるから、さっさと食べて学校行くのよ?」

「わかってるよ、母さん」

「そう。じゃあ、はやく準備して下に降りてきなさい」

「うん、わかった」


そう言って、母さんが、部屋の扉を閉めると同時に、部屋全体が暗く染まった。

黒く染まった光景に俺は気づく。


「あぁ、そうか。今のが夢だったんだな。俺がまだ人間だった頃の夢だ」


進化を行ったところまでは覚えている。そして、何故か進化先が変化したこともな。

何が起きたのかは全然わからないが、取り敢えず自分のステータスでも確認してみるとしよう。いや、いつの間にか魚状態から細胞に変わっているから、先ずは魚に戻るか。


俺は自分の姿を細胞から変化させる。すると視界は暗闇ではなくなったが、外は真っ暗であった。

僅かに光が水面に照らされているだけで、先程までの明るさが嘘のように暗くなっていた。


夜か。今までずっと目がなくて気づかなかったけど、夜になったんだな。


上を見上げても月のような衛星は見えない。粒のような点々が輝いていることから星はあるのだと推測はできた。その星々は、妙に青や赤といった色で輝いていた。


さて、ステータスの確認をしましょうかね。


=================

名前 :     

種族 :チャヴィフィッシュ (ラウセピトス)

レベル:1/60  

=================

攻撃:D 

防御:D

魔攻:B

魔防:C

俊敏:D

運 :E

=================

『固有スキル』

【分裂】【合成】【貯蓄】【魔力感知】

=================

『通常スキル』

【脱皮】【統率】【魔側線】【悪食】

=================

『秘匿スキル』

【海老】【   】

=================

『称号』

【イレギュラー】

【$1$3B5!1"A#1#2】

【魔の混然】

=================


当然、俺が選んでいた進化先では無くなっている。俺に選択権はどうやらなかったようだ。

…いや、おかしいだろ。誰だよ?あいつか?あの神もどきが邪魔したのか?だとしたら本当に許さないからな?人の人生を何だと思っているんだか。


種族が変化したこと、能力値が上がったこと以外には変化は見られな…うん?なんかスキルの所に妙な空欄があるんだけど。これなんだ?


そこに意識を向けても説明は出てこない。凝視しても駄目か。

ゲームならバグか?と疑うんだけど、これは現実だし…そんな訳がないよな。この世界の仕様なのか?

うん、分からない。今はそう思うことにするしかなさそうか。


そんで、俺がここから出るにはあのイモリ君を倒さないといけないんだよな。

以前の能力値で言えば、あいつは明らかに格上だった。なのでスキル【合成】は使用できないし、俺には攻撃手段が無い。

明らかに詰んでいたが、今の能力値ならワンチャンスあるのではないかと思ってしまう。試してみようかと思ったが、ここではトライアンドエラーは、出来ない。失敗が死に直結する。

当たって砕けろの精神を持つ俺でも慎重にならざる負えない。


レベル上げのお時間がやってきたか。

俺は暗い夜が明るくなるまで岩陰に隠れ、明るくなる頃に合わせてその場を後に泳ぎだした。


レベルを上げると言っても、標的は小魚ではない。もっと別のやつだ。

スキル【合成】の説明を見ていて思ったのだが、合成をするとそいつが持っているスキルが得られる可能性があるらしい。俺の目標は新しいスキルを得ることだ。それが攻撃手段であれ、防御手段であれ嬉しいことに変わりはないからな。今の俺は人畜無害な小魚でしかない。せめて水鉄砲でも打ちたいよ。


なんで水鉄砲なのかって?地球にも水を吐き出す魚がいただろ?

俺もあれやりたい。


俺は底を泳ぎ、周りに何かいないかと探す。すると小さな貝を見つけることが出来た。

タニシのような巻き貝でゆっくりと底を移動していた。

俺が近づくとタニシは、動きを止めて身体を貝殻の中に引っ込めてしまう。


これ…合成できるのか?

結果的に言うと【合成】が成功した。しかもスキル【ベノム】を取得してしまった。

ベノム…つまり毒素だろうか?


【ベノム】

毒素を生成する。毒素は、微毒であるが生命体の一部機能を破壊する可能性を持つ。


まぁ、攻撃手段とも防衛機能とも言えそうな感じだ。なんともどっちにも言えないようなスキルを獲得してしまった。まぁ、新しいスキルを得ることが出来たのは素晴らしいことだ。この調子で頑張ろう。


それからも俺は生き物を見つけ次第に合成していった。

透明な殻を持つ海老?やタニシのような巻き貝ではなく二枚貝がいたり、蟹のようにハサミを持った甲殻類がいたりとここらへんは思っていたよりも生き物が多くいるようだ。

スキルも順当に増えていった。一部の生き物からはスキルは得ることが出来なかった。


【自切】

瞬時に身体を任意の場所から切り離す。


【加速】

自身の移動を徐々に速くする。


この二つが得られた。

攻撃手段は相変わらずないが、逃げるスキルを得ることができたので収穫はあったと言えるだろう。

レベルは2しか上がらなかった。【合成】でしか敵を倒していないため、相手は常に格下である。弱い敵からは、あまり多くの経験値を得ることが出来ないようだ。今までは必要な経験値が少なかったのだろう。しかし、今の俺はそうではないようだ。つまり、【合成】で倒してレベルを上げるのはもう無理だと言うことだ。ここからは別の方法で格上を倒さなければならない。


今の俺に相手を倒せるスキルがあるだろうか。

候補としては【悪食】【ベノム】ぐらいだろうか。碌な攻撃スキルが見当たらない。

もし人間に転生出来ていたら武器とか使えたんだろうな…はぁ、なんで細胞。てか細胞に転生って普通に考えておかしいだろ。聞いたことねぇよ。


俺の転生について文句を言っても仕方がない。俺は敵を倒すための作戦を考えるのであった。

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