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2話:人間は既に辞めていた


意識が段々とはっきりする。自分が今目を開けているのか、息をしているのかさえわからない。

だが、確実に生きている。俺は転生したのだ。


というか…暗いな。真っ暗で何も見えないぞ

取り敢えず、現状を確認してみようか。体は動かせる…というか体あるのか?


俺は自分の体を動かそうとする。すると僅かにモゾモゾと動いている感覚がある。

人間の時にあった足や手を使っている感覚ではなく…体全身で動いているような感覚だ。新鮮な感覚をしばらく体験していると急に声が聞こえた。


『レベルが上がりました』


ん!?レベルが上った?…え?レベル?

意味がわからない。レベルって…ゲームじゃないんだぞ?というか誰の声だよ。

また声が聞こえるかと思い、少しだけ待ってみたがそれ以上は何も聞こえてくることはなかった。


ドッキリとかそういうのではないようだ。そりゃあ、神様みたいな奴に出会って転生とか言われたからな。

だいたい、俺は上手く転生することは出来たのか?あいつ、少し適当そうな感じがしたんだよな。


そんな不安を抱えながら自分のことを確認しようかと思っていると、少し妙な感じがした。

俺はさっきから喋っているよな?だが、自分の耳に音が入ってくることは無い。口を開こうとしても、変な感じがして開くことが出来ない。


は?どういうことだ?俺はさっきから何をしている?


人間であれば誰でも簡単に出来ることが今は何一つ出来ていない。

俺はそこで嫌な予感がした。それをいち早く確認するために体全身を全力で動かしてみる。


   …もぞもぞ!…もぞもぞ!


終わった。これ…人間じゃねぇ!

どう考えても人間が動く感じの動きじゃない。目を開けることも出来ないし、口も開けない。音を聞くことも出来ないとか…え?何か俺は悪いことをしたんだろうか。

現在の状況に絶望しているとまた声が聞こえてくる。


『レベルが上がりました』


だからさ、レベルって何!?ゲームみたいにステータスでもあるってわけ?

俺がそう頭の中で怒鳴ると自分の暗い景色に画面が出現する。それはRPGゲームお馴染みの表であった。


=================

名前 :     

種族 :新原始細胞

レベル:3/5  

=================

*表示不可

=================

『固有スキル』

【分裂】【合成】【貯蓄】

=================


おぉ、マジでゲーム見たいな画面が出来てきた。というか表示不可って何だ?

ゲームの画面を弄るように意識をしてみると【表示不可】の説明が見れた。本当に仕様がゲームだな。


【表示不可】

ステータスが一定の基準に達していないため、数値化することができない。


…ん?これってもしかして俺のステータスがクソ雑魚だから表示できないってこと!?

おいおい冗談きつぜ?転生して人間じゃないだけでなくて、生きる権利が無さそうな生き物に転生するとか罰ゲームか何かだろ。


ステータスで見れる物と言ったら後は固有スキルぐらいしかないので一つ一つ確認していく。


【分裂】

自身の身体を分裂させる。分裂後に生まれる分裂体のステータスは半減する。

ステータスが一定基準よりも下がる分裂行為は出来ない。


【合成】

分裂体と自分を合成する。

ステータスが自身よりも低い生命体を自身に合成する。

一定の確率でその生命体が持つ能力を引き継ぐことが可能。


【貯蓄】

一定の大きさを越える物以外を自身の身体の中に仕舞う。


ふむふむ…俺はあえて言おう!雑魚であると。

なんだよこのスキル、新手の異世界ゲームに出てくるスライムのほうがよっぽど優秀だよ。

スキルもイマイチこうパッとしないし、ステータスに関しては見ることも出来ない。最高だな、この異世界転生は。


はぁ、どうすればいいんだよぉ~。


頭を抱える仕草を頭の中でしながらこれからどうしようかと本気で考える。今の自分に出来ることは本当に頑張って生きることである。目の見えない暗闇の中でどう頑張れという話ではあるのだがな。

取り敢えずは現実逃避を一摘みと………ふぅ。


『レベルが上がりました』


…空気読んでくれない?

どうやら現実は俺のことを逃してはくれないようだ。疑問なのだが、レベルアップは、通常であれば何か敵にあたる何かを倒してしていくものではないのか?だが、俺は何も倒してない。なんだったら初期地からあんまり動いてすらなかった。


俺はステータスを確認するがしっかりとレベルは上がっている。ステータスはあいも変わらず見れないがな。そして、ステータスに種族というものがあることに気がついた。さっきは、ステータスがなかったり、しょぼいスキル達に目を奪われていたから霞んでいたのだ。


俺の種族は細胞らしい。スゲーよな。地球で栄花を極めていた多細胞生物である人間であった俺が、こんな弱々しい細胞に転生しちゃったんだぜ?こんな時、どんな顔をすればいいのか俺にはわからないよ。

少なくとも笑えはしないな?


俺は細胞だ。つまり、細胞が倒せる敵というものは普通であればいないはずだが、俺のレベルは上がっている。…細胞でも倒せるのは同じくか弱き存在である微生物たちだろう。

微生物を倒せているということは、結構俺って大きいのか?まぁ、大きいと言っても目では視認出来ないんだろうな。てか、耳とか目とか見えないのって器官がないからか!

なるほど納得した。今の俺が最初から詰んでいたことに衝撃を覚えるよ。本当になんでこんな転生先なんだろうかね?普通に考えてもそうはならないだろ。


…なっているからこれなのか。


取り敢えずレベルアップを静かに待ちますか。次のレベルアップで何かが変わる気がするんだよな。

ステータスも『レベル:4/5』ってことは次が一応は最大レベルだろ?

ほら、ゲームであれば進化とかあるじゃん?もしかしたら、次のレベルアップで進化出来るかもしれないじゃないか。

ということで暫くじっと待っていると声がした。


『レベルが上がりました。個体の最大レベルに到達したことを確認しました。進化が可能になりました。特殊条件を達成。進化先に幾つかの選択肢が発生』


予想通りにレベルが最大に上がると進化することが出来るようだ。どこまでもゲームのような世界観だと思うが俺にとっては好都合であるため文句はない。

予想外なのは特殊条件というもので、何が一体トリガーになったのかはわからない。考えていると俺の前にステータス表とは違う画面が現れる。


===============

→ 新原始多細胞

→ 新原始単細胞

→ ウームセルラ

→ ミノルイドロヴィア

===============


この進化は、今後の俺に深く関わってくる。慎重に選ばないといけないな。

一つ一つ丁寧に確認していくか。


【新原始多細胞】

新原始細胞が進化した種族。構造が複雑化し様々な機能を有する。


あまり詳しい内容は調べられないようだな。ここらへんもゲームっぽいと思う。進化先の情報は進化してからのお楽しみってことなんだろうが…俺は人生がかかってんの!本物のゲームのように何度もリトライできないんだよ。そこんところ理解してんの?

仕様に怒っても仕方がないが、俺をこんな目に合わせた奴に怒りをぶつけることは許してくれるだろう。

他の進化先を確認していく。


【新原始単細胞】

新原始細胞が進化した種族。構造が単調であるが、少しの欠損であれば治癒することが出来る。


自己治癒力に優れた種族のようだ。だが、俺としてはこの進化先はお断りだった。

構造が単調ということは、つまり目や耳と言った複雑な器官が無いということだ。まぁ、まだ細胞の時点で無いことはわかっては居るのだが、この先進化しても得られない可能性が高い。

つまりNO!圧倒的なNOである。


【ウームセルラ】

遥か昔にいたとされる種族。圧倒的に複雑な魔力器官を有し複雑な思考が可能。


なるほど…これが特殊条件で現れた進化先か?そうとは断言することは出来ないが、そうであるのであればこれを選択したいところだ。

聞き馴染みの無い言葉である魔力器官という言葉は、地球で生きていればそうそう聞かないワードである。だが、非常にロマンがあり、期待値が高い言葉であった。

今の俺の状況を打開できるようなパワーは、ファンタジーよろしくの不思議な魔法ではないだろうか。

一応、もう一つも見てみるか。


【ミノルイドロヴィア】

遥か昔に絶滅したと思われていた古代種。物凄く微弱で、その弱さは神も憐れんだと言われている。


…よし。これは絶対に選んではいけない。これ以上弱くなってしまったら本当にどうしようもない。

というか、俺よりも弱そうな存在に会えて俺は少し安心したよ。いやぁ、下を見て安心するとか思ってはいけないだろうが、今ぐらいは許してくれるさ。


俺は進化先を選ぶ。


『ウームセルラに進化先を固定。進化を開始……』


その言葉が聞こえた途端にはっきりとしていた意識が次第に朦朧としてくる。

目眩や吐き気などはなく、ただ心地よい眠気が俺を誘う。


俺の意識はついに耐えることが出来ず意識を手放し、この手放したくない心地よさに抱かれるのだった。


読んでくださりありがとうございます。

また、明日も読みに来てくださると嬉しい限りです。

次回もお待ち下さい。

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