5.
「クラリスタ嬢? ちょっといいかしら?」
「あなた、大聖女だからって、ミカエル様やハント様、ルノワード様を侍らせているっていうじゃない!」
「調子乗ってるのよ! 私たちは、トドリー様やリン様、シャッティ様の代わりに!」
見ず知らずのおねえさま方にぶん殴られそうになる。これ、よく見るやつ! でも、する相手を間違えてますよ、おねえさま方!
まぁ、お姉様が痛い思いするくらいなら、いっかな。
推したちも私のこと鬱陶しく思っているのかな…。
そんなことを考えていると、私の前に立ちはだかる何かが現れた。
「「「あら? 誰がそんなことをお願いしたかしら?」」」
「「トドリー様! リン様! シャッティ様!」」
「推しの大行列や……眼福」
私が推しの大行列を拝んでいると、トドリー様が麗しい手を差し出してくれた。
「大丈夫? クラリスタ」
「あなたたち、私たちの大切なクラリスタ嬢に何してくれているのよ!」
リン様の言葉に私は思わず叫んでしまう。
「わ、私たちの大切なって言ったぁぁぁ」
「ほら見なさい! あなたたちが怖くて、クラリスタ嬢が鼻血を出しちゃったじゃない!」
あ、鼻血も出た。それを見たシャッティ様が激怒なさっている。
「それは私たちのせいなのでしょうか?」
「ごめんなさい、違うと思」
フォローしようとしたら、推しの攻撃で私も何も言えませんでした。ごめんなさい。私はできる女の名を返上します。
「「「そうに決まってるでしょ!?」」」
「こんなに怯えちゃって……ほら拭いてあげるわ」
「私が拭いてあげるの」
あぁごめん。いじめっ子たち。あなたたちのせいじゃないけど、幸せだからあなたたちのせいってことにしておくね……。
「クラリスタ!? 大丈夫!?」
「お姉様!」
「あなたたち……許さないわ! 聖女の魔法! 浄化!」
「「「なんかあったかくて優しい気持ちになりましたーすみませんでしたー」」」
「もう大丈夫だよ!」
お姉さまに優しく抱きしめられた私。なんか聖女の魔法の方向性が間違ってる気がするけど、どうでもいいやぁ。
「その、クラリスタ嬢! 大丈夫か!?」
「姉上! クラリスタ嬢は無事ですか!?」
「君たちのご実家には戦略的にダメージを与えておこう」
「あ、キラキラ集団。来るの遅い」
私のぽろっと放った台詞を聞いて慌ててお姉様が口を塞ぎ、攻略対象キラキラ集団は落ち込んでしまったのだった。
「あと、お姉様が反省させてくれたから、ご実家へのダメージは不要です。ルノワード様」
「く、クラリスタ嬢に名前を呼ばれた!?」
「ずるいぞ! ルノワード!」
「僕はもう何度も呼ばれているからね!」
よくわからない諍いが起き、お姉様と推したちが鎮めてくれた。
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「クラリスタ嬢。僕と結婚してくれないか?」
「いや、私と!」
「幸せを保証しよう。結婚してください」
「え? 私、推しに挟まれて幸せなので、結構です」
「「「諦めないからな!」」」