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3.

「学園に通うようになったら、お姉様と一緒に寄り道したいです」


 現実逃避をする私に、トドリー様が話しかけてきた。


「あら、私も参加していいかしら?」


「はいもちろん、喜んで! って待って、推しに挟まれてる! 私、両手に花、している! 推しが推しで推し! やば……あと目の前にリン様とシャッティ様が現れたら、私死ねる」


「ごきげんよう。トドリー様」


「あら? リンとシャッティ。あなたたちも今日が聖女判定の儀だったの?」


「はい。風邪で先月受けられなかったシャッティが、私の判定日に合わせてくれて」


 聖女判定の儀は、15歳の誕生月の翌月に行われる。ってこれは天国?



「そうしたら、まさか聖女と大聖女が現れるなんて……って、大丈夫ですか!?」


「私、死んでもいい」


「死なないで、クラリスタ」


「お姉様のためなら、死の淵からでも生き返ります!」


 お姉様の可愛らしい声と、推したちのいい匂いで蘇生しました。変態クラリスタでございますわ。




「ごきげんよう。リン様。シャッティ様。光栄なことに大聖女としてお役目を与えられました、クラリスタ・ジャネットと申しますわ」


「同じく聖女としてお役目を与えられました、マリア・ジャネットと申します」



 推しに囲まれてギリギリの精神状態を維持しながら、きちんと挨拶をした私は、できる子! 奇声を上げて走り回りたい。




「こちらこそ、大聖女様と聖女様にお会いできて光栄ですわ。また、学園でもよろしくお願いしますね」


「先ほど、学園の帰りに寄り道しようとお話ししていたの。あなたたちも一緒に行きましょう?」


「ナイッシュー! トドリー様!」


「ないっしゅ……?」


「クラリスタは一度黙りましょう?」


 お姉様の優しい笑顔に黙らされながら、私は推しに囲まれていたのでした。
















「一緒に寄り道して帰らないか?」


「婚約者のいらっしゃる第一王子とは、同行できません」


「あら? なら、私も一緒ならいいかしら?」


「もちろんです! トドリー様!」


 大聖女という地位に引かれたのか、学園が始まってから、第一王子が近づいてくる。大好きなお姉様を誘えばいいのに。


「お姉様とミカエル様が行くなら、僕もいいですよね?」


 ハント様もついてくる。

 顔面キラキラワールドに迷い込んだ子猫みたいな立ち位置の私は、大聖女という役目がなかったら、ここには参加できなかったのだろう。

 ふぅ。トドリー様は今日も愛らしい。

 仕方ない、第一王子のために一肌脱ぐか。



「お姉様も一緒に行きますよね?」


「え、私も? 今日はお父様のお使いで」


「ね?」


「はい……」



 いい仕事した! 私! 褒めていいんだよ、と得意げな笑顔で第一王子を見ると、顔を真っ赤にしてお姉様の方を向いた。よかったねー。


「報われない……ということで、私も参加していいでしょうか?」


 なぜかルノワード様も参加することになって、キラキラ攻略対象山盛り丼が出来上がった。私を混ぜないでくれ。薬味としてくらいなら、きっといい味出せるけど……。






「では、クラリスタ嬢の好みのタイプはあるの?」


 左側にお姉様、右側にトドリー様。幸せな空間。そんな中、トドリー様に尋問を受けている。


「好みのタイプ……可愛い女の子は大好きです!」


「それは恋愛対象……?」


「あ、いえ。残念ながら違います」


 私がそう答えたら、ちょっとホッとした顔をしたお姉様とトドリー様。失礼な。まぁまぁ可愛い私に好かれて嬉しいでしょ?


「私の理想の男性像は、優しくて紳士的で一途でほどほどに平凡な人ですかね?」


「「「ほどほどに平凡」」」


「地位が高すぎたり、容姿が整いすぎたり、何かに秀でていらっしゃると、平凡な私と釣り合わないじゃないですか? ほどほどに平凡なら、平凡な私でも周囲からやっかまれなくて済みますし」


 何故か可哀想な子を見つめる目で第一王子を見つめる、トドリー様。


「その、クラリスタ嬢は大聖女だから、地位が高い相手でも釣り合わないということはないかと思うんだが……」


 第一王子が勇気を振り絞った様子で聞いてくる。そこに勇気って、必要?


「あ、そうでした。私、大聖女でした。そもそも、王家との婚約からは逃れられないのですね……」


 悲しそうな私の声に、同意を示してくれるトドリー様。トドリー様も王家と縁続きになりたくないタイプ?

 ってなんか第一王子は悲しそうな顔してる!

 もしかして、お姉様だけじゃなくて、トドリー様も狙ってるの?

 それとも、世間一般の評価と勘違いした? どちらかというとそっちな気がする!


「あの、私とトドリー様はそうかもしれませんが、世間一般では王家なんて地位の高いところ、憧れている女の子が多いと思いますよ!」


 できる女は、フォローも忘れない! あれ? なんか残念なものを見る目で、みんなから見られてる?







「……そうか。励もう」


 小さくなった第一王子を横目に、トドリー様の麗しい笑顔と、お姉様の困った顔を堪能する。ふー、たまらん。

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