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あるマンション

作者: 雉白書屋

 空き家問題。

 倒壊。放火。不審者の溜まり場。犯罪の温床。おまけに過疎化の象徴などと近年、空き家というものには嫌な風が吹き込んでいる。

 そしてそれは一軒家に限らずマンション、アパートにも言えることであった。

 人が住まねば建物の劣化は著しいものになる。借り手がつかなければ家賃も入らない。


 そこで、講じられた対策は……安く借すというもの。

 『なんだ、そんなことか』とため息が漏れるような何ともシンプルなものではあるが、これが一番効果的であった。自治体からも地域活性化という事で補助金が出ている。

 そして、安くと言っても期間限定であり、家具は備え付けのもの。勝手に捨てたり壊したりするのも駄目。完全なレンタルというわけだ。

 二年目からは料金は上がるが、物は試しで住んでみたら『あ、これ意外と……』『引っ越しが面倒だなぁ……』と、いった具合に気に入り、そのまま住み着くケースも多数あり、そうでなくとも代わる代わる人が住み、家賃収入が得られる。

 特に、手は出せないが一度は住んでみたいという想いからか高層階のマンションの部屋が低収入の若い夫婦の間で人気だ。

 

 その中でも一室。一際、人気のあるマンションがある。ただ、他と比べ入れ替わりが頻繁だ。その理由は不幸な事に……



「またですって、やあね」

「また若い夫婦の」

「あの部屋ですって」

「呪われてるんじゃないかしら怖いわぁ」

「単に知識不足でしょ」

「どうしてダメってわからないのかしらね」

「嫌だわぁ」

「でも親御さんも気の毒にねぇ」

「どうかしら、ほら保険金とか……なんてね」



 老いた親を捨てるなら山。

 子供は橋の下。

 昔がそうなら現代はどこだろうか。

 親は押し入れ。

 子供は便器の中。

 あるいは夏場の車。

 

 もしくはベランダ。絞首台を添えて。


 一年間の中で複数件、子供の転落事故が起きているそのマンションの存在は、悪魔か死神が囁くようにそっと、噂されている。

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