9 めざせ、自給自足
一番の問題になるものも調達出来るようになった。
食糧だ。
人間、食わねば生きていけない。
なので食い物は何があっても確保せねばならない。
これが一番の問題だった。
なにせ、貴族には領地がある。
大抵の田畑はその領地で栽培されている。
貴族が出荷を拒めばそれで終わりだ。
そして転生者は貴族を敵にまわしている。
組合を手に入れるにあたり、様々な貴族や有力者と対立した。
おかげで普通にやったら食糧が手に入らなくなる。
しかし、蛇の道は蛇である。
魚心あれば水心である。
表のルートが駄目なら裏道から調達するだけ。
だから世の中には闇市というものが存在する。
転生者が行ったのもこれだ。
持って生まれたチート能力をこれでもかと使っていった。
まず、適当な農地に出向く。
そこで一気に農作物を育てる。
生命の根源である霊気をあてる事で一気に成長を促す。
数日で実りをもたらし、収穫が可能になった。
そうして収穫したものから種として使う分を除いた残りを分けてもらった。
そして種を新たに植えて、再び成長させる。
税収としておさめる分を育てるために。
こちらはある程度まで育てて、収穫の時期に実るように調整した。
これを各地の農場で行い、食糧を確保していった。
おかげで、一年分の食糧を手に入れることが出来た。
更に、種籾分も別に用意した。
これを持って人が放棄した地域へと向かう。
迷宮と怪物の登場によって、人は多くの土地を放棄した。
この為、人類の生存圏はかつての半分以下に陥っている。
無人地帯となったこういった場所がそこかしこにある。
そこに転生者は目を付けた。
そういった場所に探索者を送り込む。
土地を確保して、開墾をしていく。
もともと農地だった場所を重点的に狙って。
田畑の整備は必要だが、それも問題は無い。
転生者のチート能力で瞬時に土を開墾していく。
土の魔術を使えば造作もない。
そこに農家出身の探索者達を放り込んでいく。
家と田畑を継げない者達がなるのが探索者だ。
自分の土地を、自分の田畑を持てるとなれば喜んで入植していく。
そうして開墾した場所を生産拠点としていく。
組合直営農場が出来上がる。
これならば、売らないという締め上げに対抗出来る。
この農場は人類の生存圏から離れた場所に作った。
政府や貴族に奪われないようにするためだ。
遠く離れていれば、介入しようがない。
間に迷宮や怪物がいるのだから、手を出せない。
行き来が出来るのはそれなりのレベルになってる探索者くらい。
その探索者は転生者の組合が確保している。
これを見込んで探索者の育成もしている。
転生者が率先して探索者を率いてレベルを上げている。
おかげで転生者の組合にいる者達のレベルは、一般的な水準を大きく上回る。
下手に手出しが出来ないほどだ。
そんな転生者の組合は、独自の生産拠点を手にした事で、更に躍進をしていく。
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