4 ごめん、再建は無理だったよ、だから倒産させるね
「────とまあ、こういう状況なので」
集まった者達に説明をし終えて言葉を結んでいく。
「組合の再建は不可能。
なので、解散させます」
そう言い終えると、すぐにヤジが飛び始めた。
「どういう事だ!」
「ふざけるな!」
解散を決定した組合本部の建物。
その玄関であり受付でもある広間。
組合本部の中で最も大きなこの場に関係者は集まっていた。
いずれもそれなりの規模の商会の代表者。
探索者組合に物品を卸していた工房の代表者。
さらには領主の代理人など貴族も混じってる。
組合の運営に絡んでいた者達ばかりである。
彼らからすれば、出資先であり取引先であったりする関係者だ。
組合が潰れると聞けば黙っていられないのだろう。
転生者からすると、「何を言ってる」というしかない。
組合の内情が最悪なのは彼らも分かっていたはずだ。
それなのに今まで黙っていたのだから救いようがない。
というより、組合を都合の良い金づるとして使っていた。
残された帳簿などからそれが伺える。
彼ら出資者からすれば、便利な財布がなくなるのは困る。
せいぜいその程度の考えでしかない。
貴族などは食いぶちのない、継承権のない者達の仕事場として使っていた。
いわゆる部屋住み達とその家に恩を売るために。
日本風に言うと官僚の天下り先というのが近いかもしれない。
あるいはコネ・人脈や権力を使った押しつけである。
組合の仕事や事業などは全く考えてない。
そんな人間がまともに働くわけもない。
組合の非効率性はこういう所からも発生している。
商人なども似たようなものだ。
質の低いものを高値で売りつける事が出来る。
在庫を処分するために、必要のないものを無理やり買い取らせる。
そうして損失を無くす。
それどころか利益を上げる。
その為に使える便利な道具が探索者組合だ。
いずれも探索者の稼ぎがあてられていた。
無駄に高い組合費はこういう所に用いられている。
働かないボンクラ未満の貴族子弟の職員ども。
粗雑な品を押しつけてくる商人・職人ども。
いずれも組合に必要の無いものだ。
そんな連中だからこそ組合解散という事態に慌てふためいてる。
「勝手な事をするな!」
どの口でそんな事をいうのかと転生者は思う。
だが、怒声やヤジで考えが変わるわけもない。
「組合は解散。
これは決定事項だ」
転生者の意見は全くぶれない。
それどころか、文句を言う者達に気を当てて威圧する。
「文句があるのか?」
つとめて静かに、平坦か声で問い質す。
その静的な圧力に有力者達は思い出す。
目の前にいるのが、最強の探索者である事を。
「落ち着きたまえ……」
「ここで死ぬつもりなら好きにほざけ」
「…………」
「俺は世の中だとか、社会だとか、秩序だとかはどうでもいい。
お前らが俺に損をさせるってんなら、お前ら全員を皆殺しにする。
それだけだ」
「…………」
誰も何も言えなくなった。
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