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2 計画倒産

 組合解散。

 それが告げられ、阿鼻叫喚がひろがっていく。

 所属していた組織がなくなるのだ。

 完全な無職になる。

 騒がないわけがない。



「なんで、どうして?」

「どうすんだよ、これ」

「給料はどうなる?」

 こんな声があちこちで上がっていった。



 無駄な事だ。

 騒いだところで何かが変わるわけではない。

 それなのに声を上げてさわぎ、隣にいる誰かに尋ねていく。

 これからどうなるのか、どうすればいいのかと。

 人間の不思議なところだ。



 分からない事があれば隣にいる誰かに聞いてしまう。

 それが無駄で無意味だと分かってない。

 そばにいる者だって同じ立場にいるものだ。

 貴重な情報など持ってるわけがない。



 それなのに、組合に所属してる者達は右往左往して悩んでいく。

 悩むだけで現状を解決しようとしない。



 一部、やる気だけはある者達が組合長に掛け合おうとする。

 正確に言えば、怒鳴り込んでいった。

「おい!」

 組合長の部屋に入り、転生者に詰め寄る。

「どうなって────」

 最後まで言い終わる事なく、押し入ってきた者達は吹き飛ばされた。



 組合長である転生者のところに押し込んできたのは7人。

 組合幹部と職員がそれぞれ一人。

 5人のそれなりに有力な探索者達。

 これらが組合解散を発表した転生者の所に怒鳴り込んできた。

 それらは例外なく転生者に吹き飛ばされていく。



 転生者は並の人間では無い。

 隔絶した能力を持っている。

 いわゆるチートだ。

 身体能力も魔術能力も並の人間を凌駕する。

 単独で迷宮を攻略出来るほどだ。

 高レベル探索者が数十人の部隊を編成してあたらないと出来ないと言われる事をだ。



 そんな転生者が魔術で押し入ってきた7人を天井に叩きつけた。

 念動力という、物体を動かす魔術を使って。

 更に、天井から床まで叩きつける。

 重力もあわさり、威力は天井にぶつけた時よりも大きくなる。



 更に壁と壁の間を交互に行き来させる。

 右の壁に叩きつけ。

 左の壁に叩きつけ。

 何回か7人を往復させていく。



 途中、死なない程度に身体を回復させていく。

 殺してもいいのだが、まだそこまでやる気はない。

 生かしておく理由も全くないが。



 そうして何回か痛い思いをさせてから動きを止める。

 全身の骨が粉々になるほどの衝撃。

 相手のレベルが高いから死なずに済んでるが、一般人だったらとっくにあの世行きになっている。

 そこまでしてから転生者は押し入ってきた連中と向かい合う。



「良い度胸じゃねえか、押し入ってくるなんてよ」

 最初からケンカ腰だ。

 そうなって当然だ。

 穏便に話し合うわけではなく、怒鳴り込んできたのだから。

 会話をする意思がないと判断して良い。

 7人のやってる事は強迫でしかないのだから。



 そんな奴等と話し合う理由はない。

 相手をなだめる必要もない。

 強迫を強いる悪党としてしっかり迎撃する。

 あるべき正しい対応である。



「で、用件は…………組合解散に反対ってことか」

 まともに喋れない7人の意識を読んでいく。

 相手の意識や意思に介入する事も転生者には出来る。

 望みが何なのかを読み取る事など簡単だ。



「解散するに決まってるだろ。

 やる気のない職員と、無能な探索者ばっかりだ。

 再建なんか出来るか、こんな組合」

 転生者からすれば当たり前としか言いようがない。

 出来ないことをやるほど馬鹿げた事はないのだから。



「それで仕事が無くなろうが、そんなの俺の知ったことか」

 転生者がこうしたわけではない。

 全てはこれまでの組合がやってきた事だ。

 無駄な重荷を背負うつもりはない。

「お前らみたいに強迫するしかないバカばっかだしな。

 潰れてしまえ、こんな組織」

 そう言うしかなかった。



 多少なりともやる気がある、このままではいけないという思いがある。

 その為に、今できる事をやろうという気持ちがある。

 どうにかするために知恵を絞るつもりがある。

 身を粉にして働く意思がある。

 こういう事ならまだ良い。

 それならば転生者も再建のために尽くしただろう。



 だが、そんな考えの者はいない。

 やる事といったら、組合解散を撤回への不平不満を叩きつけにきただけ。

 問題のある現状を解決しようという意思はそこにはなかった。

 かろうじてやる気を示した7人にしてもだ。

 こんな連中の為に組織を再建するつもりは転生者にはなかった。

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